〈経済学部通信〉2022年度 3-4回生プレゼンテーション大会

経済学部では、2022年1月28日に3-4回生プレゼンテーション大会を実施いたしました。

コロナ渦の中、岡山県はまん延防止等重点措置が当日とられておりました。

そのため、学生参加者は午前と午後の2組に分かれ、さらにプレゼン担当者のみが教室にて参加し、その他の学生はZoomより参加する、といった密を防ぐための対応をとりました(もちろんアルコール消毒の徹底や学生間の距離をとって座らせております)。

当日はプレゼンテーションが順次行われ、後日投票の結果、井尻ゼミの髙原・平口ペアのプレゼンテーションが総合1位となりました。

2人はともに今年度で卒業で、卒業論文のテーマである「フリマアプリと消費者教育~アンケートとその分析結果~」についてプレゼンテーションを行いました。

取得したアンケート結果から独立性の検定を行い、その実証結果を踏まえて消費者教育について提言をまとめています。

来年度から社会人となる2人ですが、次のステージでの活躍も楽しみです。

最後に、髙原君と平口さんのコメントを載せて締めたいと思います。

「まずアンケートにご協力いただいた皆さんのおかげで研究を行えたことに感謝をお伝えしたいと思います。プレゼンなどでの発信力をつけたくて井尻ゼミに入ったので、最後にいい結果が出て本当によかったです。コロナ渦の中、様々な機会を失った大学生活後半の2年間でしたが、最後にやり続けてきたことが報われてよかったです。(髙原・平口)」

(経済学部:井尻)

 

2021年度学術講演会

去る12月14日、岡山商科大学学会主催の学術講演会が行われました。

昨年度は新型コロナウイルス感染拡大により中止となったため、2年ぶりの開催となります。

 

本年度は神戸大学大学院経済学研究科准教授の佐野晋平先生に『子どもの貧困と人的資本政策』という論題でご講演いただきました。感染症対策のため佐野先生にはオンラインで講演していただき、学内の会場で人数制限を設けて視聴するという実施方法になりましたが、ほぼ定員いっぱいまで参加者が集まる盛会となりました。

 

講演の中では主に以下のような論点が説明されました。

  • 日本では低所得者が増加していて所得格差が拡大傾向にある。
  • 特に大人1人世帯での子どもの貧困が諸外国と比べ深刻である。
  • この状況を脱するための一つの方法は教育であり、教育は子ども本人の能力や知識、技能を高めるだけでなく、長期的には社会全体にも重要である。
  • 行政から家計への金銭的な援助は必ずしも学力を高めるのに有効ではない可能性がある。

全体を通して統計データが多く示されており、データを元に現状の分析を行い、政策を考えることの重要さを改めて感じる講演内容でした。講演に参加した学生の皆さんも、データを活用した実証分析がどのようなものなのかイメージが掴めたのではないでしょうか。データを集めて終わりではなく、一歩踏み込んでいろいろな角度から見ることで面白い発見が得られるかもしれません。今後の学習や研究の中で是非取り組んでみてください。

(講演会の様子)

【商学科の研究紹介】マーケティング分野:プライベート・ブランドにまつわる「なぜ」

コンビニやスーパーに並んでいる商品は,大きく2つの種類に分けることができます。一つは「ナショナル・ブランド」(National Brand),もう一つは「プライベート・ブランド」(Private Label Brand,またはStore Brandや自主企画商品)と呼ばれる商品ブランドです。

表1に示した通り,ナショナル・ブランドは【製造業者】が企画・開発し,日本各地にある様々な【小売業者】の店舗で販売される商品です。例えば,日清食品の「どん兵衛」や江崎グリコの「ポッキー」はナショナル・ブランドで,私たち消費者はセブンイレブンやハローズの店舗でこれらのブランドを手にすることができます。

一方,プライベート・ブランドとは,【小売業者】が独自に企画・開発し,【自社】の店舗で独占的に販売する商品ブランドです。セブンイレブンの「セブンプレミアム」やイオングループの「トップバリュ」等があります。

表1 プライベート・ブランドとナショナル・ブランド出所:西春奈(2021)マーケティング論Ⅱ,第1部リテール・マーケティング講義資料。

さて,このプライベート・ブランドとナショナル・ブランドにまつわる「なぜ」をみてみましょう。(▼ここから,マーケティング分野の研究のお話です。)

Q.そもそもなぜ,小売業者はナショナル・ブランドを仕入れるのではなく,プライベート・ブランドをつくるのか?

→小売業者が自ら「つくる」という選択をする背景には,より多くの利益を確保するため,安定的に商品を調達するため,ナショナル・ブランド商品の価格競争を回避するため等の理由があります。

他にも,この対象に関する「なぜ」には,小売業者,製造業者,消費者の視点から研究が蓄積されています。

Q.なぜ,大手のナショナル・ブランド製造業者はプライベート・ブランドの製造を受託するのか?

Q.どのような消費者がどのような条件でプライベート・ブランドを購入するのか?

なかでも筆者は,両ブランドを扱う小売業者が直面するプライベート・ブランド管理の問題について,商品仕入れ担当者(バイヤー)管理の視点から研究しています [1]。具体的には,商品仕入れ担当者に与える①プライベート・ブランド商品の生産量決定権,②プライベート・ブランド商品開発プロセスへの参加権,そして③商品仕入れ担当者の管理様式(成果ベース管理か行動ベース管理か)の3つの要因が,プライベート・ブランド戦略に影響を及ぼすことを明らかにしました。

以上の研究の一部は,筆者が担当する「マーケティング論Ⅱ」という授業で学びます。ちなみにこの授業では,毎回学生が見つけたマーケティング事象の「なぜ」を取り上げ,議論する時間を設けています。上の研究紹介のせいで難しく聞こえるかもしれませんが,「スーパーの広告の品はどのように決まっているの?」や「マーケティングを学んでからドラマ『この恋あたためますか』がより面白い」等々,マーケティング的疑問・気づきなら何でも歓迎しています◎

それでは最後に,今年度の受講生が見つけたプライベート・ブランドの「なぜ」を一つ紹介させてください。

 

~学生が見つけたプライベート・ブランドの「なぜ」~

  • “ファミリーマートの「お母さん食堂」が廃止になり、3つのブランドをまとめて「ファミマル」という名前になるというニュースを見ました(※詳細は補足説明を参照してください)。確かに「お母さん食堂」はファミマと結びついていないようにも思えますが、私個人としてはなんだか温かく感じるその名前に愛着があり、ファミマのブランドという認識があったために少し残念だなと思いました。”(商学科1年生Aさん,一部抜粋)

 

Aさんの疑問にある「プライベート・ブランドの名前」と「ブランド認知」,「愛着」に注目してみましょう。実は,プライベート・ブランドの名前は,独立したものよりも,小売企業(または店舗)の名前と同じ方が,消費者のブランド認知,店舗への愛着,さらにはプライベート・ブランドのシェアを高めることが研究で明らかになっています。これに基づくと,ファミリーマートの新ブランドは,同社が抱えるプライベート・ブランド管理の課題解決を目指したものであると考えられます。

■補足説明

ファミリーマートは2021年10月19日に新ブランド「ファミマル」を立ち上げた。既存のプライベート・ブランドは商品のすみ分けが不明確で,商品の特長を消費者に十分訴求できていなかった。ブランドを統一してファミマのブランドカラーを使い,消費者への認知を高める。また,売上高に占めるプライベート・ブランド商品比率を約30%(2021年)から35%以上(2024年度末)へ引き上げたい(日本経済新聞2021年10月18日付)。

■参考文献

[1] Nishi Haruna (2015) “How Do Retailers Manage Own Private Labels from the Perspective of Retail Buyer Management? The Case of an Apparel Retailer in Japan”, Proceedings of the 2015 International Conference of Asian Marketing Associations, Emerging Trends in Asian Markets, pp. 136-146.

(商学科 西春奈)

【商学科の研究紹介】資産形成としての証券投資

経営学部商学科の鳴滝善計です。ファイナンシャルプランニングコースで、証券市場論や金融資産運用などの科目を担当して、学生に資産形成としての証券投資の重要性を学んでもらえるよう授業をしています。ゼミ等で学生に「証券投資」について聞くと、“一攫千金”や“リスクが大きい”という声が多く、株式投資は当たれば大きいが外れればリスクが怖いというイメージです。こうしたイメージが先行すると、証券投資に近寄らないということになってしまいます。しかし、証券投資といえども、効率的な資産形成の方法である投資信託を利用した「長期・積立・分散投資」によれば、こうしたイメージがあてはまらないことが分かります。

まず、「長期・積立投資」について考えてみましょう。アメリカの投資の本には、よく「時間を味方にする」という言葉がでてきます。「何十年といった長期で考えれば、資産づくりは容易であるうえ、利回りの高いリスク資産にも投資できる」という意味です。

[図表1] 3,000万円つくるために毎年いくら積み立てればよいか(概算)

(単位:万円)

積立期間(年)

運用利回り

0%

1%

3%

5%

7%

5

600

588

565

543

522

10

300

287

262

239

217

20

150

136

112

91

73

30

100

86

63

45

32

40

75

61

40

25

15

 

たとえば、老後に備えて3,000万円の資産を作ろうと考えた場合、積立必要額は、積立期間と運用利回りによって、図表1のとおり差が出てきます。

この図表1は2つのことを語っています。1つは当然のことですが積立を早く始めれば(積立期間を長くできれば)年々の積立額が少なくて済むということ、2つ目は運用利回りによって必要積立額に大きな差が出るということです。

2つ目の点について補足すると、運用利回りがゼロの場合、積立額は期間に応じた額となります(たとえば期間が40年の場合の積立額は、期間10年の場合の4分の1となる)が、仮に年5%に回せれば期間40年の場合の積立額は、期間10年の積立額の4分の1ではなく、約10分の1ですむということになります。

さて65歳を目標にすると、25歳から積立てを始めて(積立期間40年)、年平均3%でふやしていけば、毎年40万円(たとえば毎月2万円、年2回のボーナスで8万円ずつ)積立てればよいことになります。

また、「積立投資」は、時間分散の効果があります。これは、一度に投資を開始するよりも、投資時期を分散すること、つまり定時定額の積立投資を行うことにより、平均買付価格を引き下げることができます。定時定額投資は、ドル・コスト平均法ともいわれます。

[図表2] 定時定額投資(ドル・コスト平均法)による買付価格の引下げ効果

たとえば、図表2の例でみてみますと、ある投資信託を毎月1万円ずつ4か月にわたって購入したとします。投資信託の時価は基準価額(1万口当たり)といいます。基準価額が図表2のように動いたとします。実際の投資信託は、このように1か月や数か月で劇的に変動することは稀ですが、ここでは分かりやすいように価格変動を想定しています。4時点の平均基準価額は、(10,000円+6,000円+12,000円+8,000円)÷4]=9,000円です。毎月1万円ずつ買った場合、買えた口数は、(10,000口+16,667口+8,333口+12,500口) =47,500口で、平均買付価格は4万円÷ 47,500口×1万口=8,421円となり、平均基準価額より579円安く買えたことになります。その理由は、「高いときには少ない数量を買い、安いときに多い数量を買っているから」です。

次に、「分散投資」についてみてみましょう。分散投資のメリットは、リスクを小さくできることです。「一つの籠にすべての卵を盛るな」という譬えがあります。言い換えると、「卵はいくつかの籠に分けて入れるとよい」ということです。すべての卵を一つの籠に入れた場合は、籠を落としてしまえば、すべての卵が割れてしまいます。しかし、いくつかの籠に分けると、どれかの籠を落として卵が割れたとしても、他の籠の卵は無事です。格言は、危険分散の重要性を説いています。分散すればリスクを軽減できるというわけです。

証券投資も同じです。分散投資をすれば、価格変動リスクが軽減されます。分散投資の代表的な方法は、投資対象の分散です。株式、債券、外国証券、リート(不動産投信)など資産の種類を分散したり、業種、銘柄、対象国を分散したりすることです。

図表3でみるように、株式など単一の資産に投資をした場合、運用成果は上下に大きくばらつきます。一方、日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4資産に均等に分散投資した場合は、相対的に値動きが小さくなる(価格変動リスクが小さくなる)ため、個別資産の投資タイミングに左右されにくく、長期でみれば運用成果が安定し、結果的にリターンの積み上げが期待できます(図表3のグラフは、大和証券のホームページより引用)。

[図表3] 各資産の推移と4資産分散投資(1969年~20192月末)

分散投資は、投資信託を利用すれば容易に行えます。投資信託は、専門家である投資信託会社が運用を行います。ファンドの運用方針にしたがって、たとえば日本株のファンドであれば、日本株の多数の銘柄に分散投資し、バランス型のファンドであれば、内外の株式、債券などの各資産に分散投資されます。

今、若年層を中心としたコツコツ投資を応援する、投資信託を利用した長期・積立・分散投資に対する税制優遇策である「つみたてNISA」や「iDeCo」(イデコ、個人型確定拠出年金)が注目されています。実際、「つみたてNISA」を活用して、長期・積立・分散投資を始めている20歳代、30歳代が多くなってきています。まずは若者から「資産形成としての証券投資」の重要性を学び、“証券投資といえば、長期・積立・分散投資”という新たなイメージを確りと持って、実践していってもらいたいと思っています。

(商学科 鳴滝)

【商学科の研究紹介】「ひるぜん焼そば」と観光資源について考える

私が専門としている「観光地理学」は,地域における様々なモノやコトが,どのような要因で観光資源として成立し,変化しているのかについて,多面的に検討する学問分野です。

例えば,食を活用した観光資源として「B級グルメ」と呼ばれるものがあります。岡山県では,「津山ホルモンうどん」や「日生カキオコ」などが有名ですね。

私が研究対象としているのは,岡山県の北部,蒜山高原を代表するB級グルメの「ひるぜん焼きそば」です(写真1)。「ひるぜん焼そば」は,どのような要因で観光資源となったのでしょうか。

写真1 ひるぜん焼そば

まず「ひるぜん焼そば」という食が成立した背景について考えてみましょう。ひるぜん焼そばの特徴に「タレ」があります。一般的な焼きそばはソースを使いますが,ひるぜん焼そばはジンギスカンのタレを使って作られるのです。では,なぜジンギスカンなのでしょうか。

蒜山高原は,1970年代に避暑地として有名になった場所で,特に関西方面からの観光客の多い場所でした。こうした状況を後押ししたのは,当時の行政による政策で,蒜山高原を北海道のような観光地にしようと様々なものが導入されました。

そのひとつはジャージー牛で,蒜山高原は今でもジャージー牛乳の一大産地となっています。蒜山高原に限らず,ジャージー牛乳やこれを使った製品は岡山県全域で目にすることがあります。そしてもうひとつはジンギスカンで,多くの飲食店でジンギスカンを提供するようになりました(写真2)。みなさんも「北海道の食べ物」と聞いて「ジンギスカン」を想像する人が多いのではないでしょうか。

写真2 ジンギスカン

こうして蒜山高原に持ち込まれたジンギスカンですが,羊の肉を焼くときだけではなく,様々な料理に使われることになりました。そのひとつが「焼きそば」で,それぞれの飲食店でオリジナルのタレを使った焼きそばがお客さんに提供されるようになったのです。

でも,これだけでは,ひるぜん焼そばは観光には利用されません。観光に活用されるためには時代背景も大きく関係することになります。B級グルメが人々に知られるようになったきっかけとして,「B-1グランプリ」があります。これは全国にあるB級グルメを集めて競い合い,グランプリを決めようというイベントです。その中で,ひるぜん焼そばも2011年にグランプリを受賞することになります。これをきっかけとして蒜山高原には,ひるぜん焼そばを食べに訪れる観光客が増加しました。

さらに,観光として発展させるためには,地域の人々の活動も重要です。ひるぜん焼そばにかかわる人々は「ひるぜん好いとん会」という組織を作り,ひるぜん焼そばをPRするための活動や,ひるぜん焼そばに関連する商品の開発など様々な取り組みを進めています(写真3)。

  写真3 ひるぜん焼そばに関連する商品

このように,ひるぜん焼そばは,その食が成立することになった地域的背景に加え,B級グルメが流行した時代的背景,さらに地域の人々の活動によって観光資源になったと整理することができます。

みなさんも,様々な観光資源が成立した理由や背景について考えてみましょう。

(商学科・大石貴之)

 

【関連する研究業績】

大石貴之(2018):B級グルメにみる食と観光の地域性.井尻昭夫・江藤茂博・大崎紘一・松本健太郎編著「フードビジネスと地域 食をめぐる文化・地域・情報・流通」ナカニシヤ出版,83-94.

大石貴之(2019):岡山県の中山間地域における農業の存続可能性―真庭市川上地区における農産物直売所を事例として―.地学雑誌,128,323-335.

【経営学科の研究紹介】意思決定、因果解析のための情報学

 進路、就職先、将来の伴侶などの選択と、人生には沢山の分岐点が存在します。その時、効果的な意思決定をしたいと思った事が皆さんあるのではないでしょうか?現代では、その意志決定は更に大変かもしれません。インターネットの発達により膨大な情報量の下、検討すべき選択肢や考慮すべき軸が増え、余計に悩む事が増えているのではないでしょうか。

 研究者は、その問題に解決できるよう意思決定の理論や手法を研究して来ました。情報科学分野では、統計確率を利用した意思決定の手法が研究されています。意思決定支援では、統計学を利用して、数学的に期待できる利益を意味する情報利得が最も高い選択肢を選べられるようにします。

 また、ベイズネットワーク、構造方程式モデリング(Structural Equation Model)やマルコフモデルといった状態遷移モデルと組み合わせた因果解析(因果推定)のための手法の研究もあります。また、別アプローチにマルチエージェントシミュレーションや強化学習などによる数理モデルを利用した因果解析に通じる研究も活発になされています。

 こういった過去の要因を明らかにする因果解析、それを元によい未来を引き寄せる意思決定支援の研究は、ウェアラブルPC内にAIとして実装され、身近に支援してくれる将来が来るかもしれません。

 筆者は、統計的手法を自然言語処理で拡張した産業安全のための可視化・意思決定手法を提案[1]しました。内容は次の通りです。

 事故の再発防止には、過失を解析し将来に活かす事が求められている。ただ、現在の解析は、専門家が事例を深く読み解く解析が主であり、複数の事例を横断した解析は共通要因の抽出迄に留まっている。そこで、本研究では従来の横断解析法を高度化した進展事象の統合解析法を提案する。本手法は、事故やヒヤリハット等事例の進展事象を主体と振舞という単位のキーワードに分離し、同一の主体と振舞に該当するキーワードを連結する統合化により、事例の横断解析を可能にした。そして、事象の進展経路とその経路を辿る頻度を基に、危険同定、頻度解析、部分的なリスク解析と、その可視化を実現した。

 

 本統合解析法をPEC 事故事例423 件へ適用した結果、タンクから再発しうる危険事象を8 種類と同定し、頻度が高い要因は破損26 %、腐食21 %、高いリスクは破損3。3 × 10-2[Risk Rank/年]、破壊 2。5 × 10-2[Risk Rank/年]である事を可視化できた。

 

 

(経営学科 箕輪)

【参考文献】
[1] 弘嗣箕輪と良臣宗澤、 「事象の主体と振舞に注目した進展事象の統合解析法」、 安全工学、 vol。 53、 no。 5、 pp。 317–324、 2014、 doi: 10。18943/safety。53。5_317。

 

【経済学科の研究紹介】言われるとかえって嫌になる「心理的リアクタンス」の経済学的分析

「開けないで」と言われるとかえって開けたくなった.

「勉強しなさい」と言われるとかえってやる気がなくなった.

みなさんはこのような経験はないでしょうか.

他の人からある行動を指示されることによって,かえって逆の行動を選びたくなることを心理学では心理的リアクタンス (psychological reactance) という現象の一種として考えます.リアクタンスというのは「抵抗」を意味する言葉です.

心理学では脅かされた自由を取り戻そうと試みた結果,心理的リアクタンスが起きると説明しています (例えばBrehm, 1966).つまり,人は自分の行動は自分で自由に選びたいと考えており,自由が制限されそうになると,それに「抵抗」し,逆の行動を選ぶのです.

 

確かにこの理屈で上手く説明できるケースもあるかもしれません.しかし指示を受けたからと言って常に抵抗するわけではありません(万引きをするなと言われたからと言って万引きしたくなるわけではないでしょう)し,誰から指示されるかによって反応が変わることもあるでしょう(先生に言われると従うけど親に言われると抵抗したくなるなど).実際にはもっと複雑な条件が絡んでくるのではないか,というのが研究の出発点でした.

心理学の弁護をしておくと,心理学でも自由が制限されるといつでも心理的リアクタンスが発生すると言っているわけでは勿論ありません.とはいえ心理学での理論は言語による記述が中心であり,数理的な分析が要求される経済学にそのまま応用することがいずれにせよ難しいのも事実です.このような理由で心理的リアクタンスを経済学の立場から捉えなおせないか,という発想に至ったのです.

私が神戸大学の宮川栄一先生と行った研究 (Kumashiro and Miyagawa, 2017) では,上記の心理学で定説とされている説明から離れ.親や先生,上司のような「アドバイザー」と,子供や学生,部下のような「選択者」の間の駆け引きをゲーム理論を使って分析しました.ゲーム理論というのは人と人との対立関係や協調関係などを数学的に分析するためのツールです.

この研究の特徴は,選択者はアドバイザーからどのように見られているかに関心があることをモデルに取り入れた点です.自分で正しい判断ができるということをアドバイザーに見せつけたいという気持ちを持っているというイメージです.

いつでもアドバイザーに言われる通りに行動しているとまだ一人前ではないと見られるかもしれないので,アドバイザーの指示に反する行動をとる動機が生まれます.一方,いつでもアドバイザーに反した行動を取っていると,大した考えもないのにただ反発しているだけだとみなされるかもしれませんし,自分にも不利益な誤った行動を取りやすくなってしまいます.

この研究では,従ったほうが良いときには従い,ここぞというときには抵抗するといった行動プランを選択者が選ぶ,すなわち心理的リアクタンスが発生する条件を調べました.

まだ改善が必要な部分もありますが,この研究が進むことによって不要な抵抗によって誤った選択をさせないような動機づけの方法にヒントが得られると考えています.なお,この研究については一般向けの雑誌に解説記事を寄稿しています(熊代, 2020).

 

経済学と言うとお金の学問という印象が強いと思いますが,実はこのような「選択」に関わることは全て経済学の対象になります.私のゼミでは,一見あいまいな人の行動や心理を数学的に表現することで,身の回りや社会の出来事を厳密に,明確に捉えることができたら面白いかも,と思える人を特に歓迎します.興味のある人はぜひ岡山商科大学経済学部へお越しください.

(経済学科 熊代)

 

参考文献

J W Brehm, A theory of psychological reactance, New York: Academic Press, 1966.

Kumashiro and Miyagawa, Economic Analysis of Psychological Reactance, Discussion Paper No. 1712, Graduate School of Economics, Kobe University, 2017.

熊代和樹,禁止されるとしたくなる「リアクタンス」の経済学,週刊東洋経済,2020年3月28日号

【経済学科の研究紹介】東南アジアの歴史と経済発展

今回は教員の研究紹介ということで、私が何を研究しているのかについて簡単に話したいと思います。岡山商科大学経済学部の池田昌弘です。

私の研究分野はアジア経済史になります。現在は20世紀前半の東南アジア米貿易やベトナムの米生産・流通を対象としております。この時代の東南アジアは、ヨーロッパやアメリカにより植民地支配を受けていました。私が高校生だった頃、世界史の教科書では支配と現地の人々への抑圧のことが中心に書かれていたと記憶しております。

しかし経済的な側面を見てみると、貿易が急速に拡大し、ヒト・モノの交流が盛んになった時期でもあり、地域によっては一人当たりの所得水準が向上した時代でもあります。当時の経済中心地の写真を見てみると、意外にも大きな建物が並んでいることに驚かれる方もいらっしゃるかと思います(もしかしたらこのあたり、現在の教科書では記述されているかもしれませんね)。

 

写真1:1880年頃サイゴン(現ホーチミン市)のコンチネンタルホテル

[出典:https://www.historichotelsthenandnow.com/continentalsaigon.html

 

その中でも人々の生存に欠かせない米の流れを見ることで、当時の東南アジア(特にベトナム)経済がどのように発展(または停滞)したのかを明らかにすることが、私の研究テーマになります。ベトナムについて言うと、実はこのテーマは経済だけでなく反植民地運動にも密接に関わるため、当時の社会やジャーナリズム、さらには後々の独立戦争にも繋がるテーマになります。

現在の東南アジアは経済発展が著しい地域になります。経済の活発さはメディアを通じてもわかるのではないでしょうか。また、発展とともに日本との関係も非常に深くなってきています。コンビニではベトナム人の方々が対応する光景をよく見ますし、旅行ではバリ、セブ、プーケットといった有名なリゾート先を思い浮かべることができます。

ベトナムでも都市化が急速に進み、植民地時代の建物と併存して高層ビルがたくさん建設されています。

 

写真2:現在のコンチネンタルホテル(ホーチミン市中心地に立地)

[出典:写真1に同じ]

写真3:ホーチミン市の夜景

[出典:The voice of Vietnam(https://vovworld.vn/ja-JP)]

こうした人の移動や観光の賑わいは、関係性という意味において、我々と東南アジアの国々が経済的に近づいてきている様子を示しているのではないでしょうか。こうした「繋がり」を長期的な視点から見直すことで、現在の東南アジア諸国の社会経済がどのように形成されてきたのかを深く理解できればと考えています。

研究では歴史史料を読み込んだりデータを活用したりしていますが、こうした研究活動やその成果の一部は商大の講義からも垣間見ることができます。現在、私は研究と関連した下記の講義を担当しております。

「東南アジアの歴史と社会」、「アジア経済分析」、「開発政策」

 

漠然とアジアについてもっと知りたい、東南アジアってどのような地域なのだろう、と思った方がいらっしゃいましたら、ぜひ岡山商科大学へのオープンキャンパスに参加し、受験を検討していただけたらと思います。

また、今後は教員の研究紹介が定期的に更新されるかと思います。気になった分野やテーマが今後でてくるかもしれません。高校生や保護者の皆様には、今後とも長い目で我々のブログとお付き合いをしていただけますと幸いです。

(経済学部 池田)

【経営学科の研究紹介】公認会計士 vs 税理士

 「国際会計論」、「連結会計論」、「会計監査論」、「簿記論」などの科目を担当している経営学部経営学科の陶です。私の研究課題の1つである「会計基準」はやや堅苦しくて難しい感じがします。

 本日はもう1つの研究課題である「会計実務」について、皆さんには比較的馴染みのある会計系の職業について紹介します。一度は聞いたことがあると思いますが、日本における会計関連の職業には「公認会計士」と「税理士」があります。どちらも専門職で人気があります。しかし、どちらの職業も難関の試験に合格しなければその職業に就くことができません。

 以下では受験資格や試験科目、資格取得、そして仕事の内容について、両者を比較してみましょう。
(下線を引いたところは大学生の皆さんにとってはメリットがある部分)

 

公認会計士 vs 税理士

項目 公認会計士 税理士
主な受験資格の概要(高校生や大学生の皆さんに関係があるもののみ) 年齢・学歴などの制限はなし ・日商簿記検定試験1級合格者、全経簿記能力検定試験上級合格者
・大学3年生以上で一定の成績を得ていれば、上記の試験に合格していなくても税理士試験を受験することができる。
試験科目 短答式試験に合格後、論文式試験を受けられる。
・短答式試験は4科目、論文式試験の科目は必須の4科目に選択科目1科目を加えた計5科目。
*短答試験は一度に全ての科目を合格する必要がある。論文試験には科目合格の制度がある(科目合格は2年間のみ有効)
一定の条件を満たす場合(会計専門職大学院での学位取得など)、一部の試験が免除される制度がある。
11科目から5科目を選択。科目単位で合格を認定する「科目合格制」が導入されているため、必ずしも一度に5科目を合格する必要はない。
一定の条件を満たす場合(大学院での学位取得など)一部の試験が免除される制度がある。
資格取得 試験合格後2年以上業務補助を行い、一定期間(基本3年)の実務補習(補習期間中に計10回の考査を受かる必要がある)を受けて、修了考査(5科目計12時間)に合格する必要がある。 試験に合格する以外に、関連する分野での2年以上の実務経験が必要。実務経験は試験合格前でも認められるため、試験勉強中に実務経験を積むこともできる。
独占業務

・監査業務
企業が作成した財務諸表が適正であるかどうかを、第三者の立場から評価する業務

公認会計士は、大きく分けて、財務諸表監査・内部統制監査・コンサルティング(MAS)・IFRS(国際財務報告基準)関連業務を担っている。
*ここでは私の研究課題である「会計基準」との関係が深い。

・税務代理
納税者の代わりに税務署等への申告・申請を行い、税務調査に立ち会い、納税者の代わりに税務調査の対応を行ったりする業務
・税務書類の作成
税務署に提出する届出書を納税者に代わって作成したり、提出したりする業務
・税務相談
税金の計算や必要な手続きといった、税務の相談に応じる業務

 

 いかがでしょう。どちらの試験も大変かもしれませんが、前述のように仕事の内容は魅力的ですし、令和元年に厚生労働省が行った「賃金構造基本統計調査」をもとに計算した公認会計士及び税理士の平均年収は683万5,500円で、日本の産業全体の平均年収500万6,900円に比べると大きく上回っています。この2点を考えると頑張って受けてみる価値があると思います。

 また、たとえ将来的には公認会計士や税理士の定型業務である簡単な仕訳・入力作業、記帳代行、税金計算などの記録や計算の業務をAIが行うようになったとしても、経営コンサルタント、アドバイザリー業務、税務相談などの、専門的な知識を使ってそれぞれのケースに応じた解決策を考え、判断する必要がある業務(非定型業務)はやはり人間が行う必要があるので、すぐにAIに代替される可能性は低いと思います。

 興味のある方はぜひ「簿記論」から会計分野の勉強を始め、少しずつ会計と税務の世界に入ってみて下さい。

(経営学科 陶)