【経営学科の研究紹介】意思決定、因果解析のための情報学

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 進路、就職先、将来の伴侶などの選択と、人生には沢山の分岐点が存在します。その時、効果的な意思決定をしたいと思った事が皆さんあるのではないでしょうか?現代では、その意志決定は更に大変かもしれません。インターネットの発達により膨大な情報量の下、検討すべき選択肢や考慮すべき軸が増え、余計に悩む事が増えているのではないでしょうか。

 研究者は、その問題に解決できるよう意思決定の理論や手法を研究して来ました。情報科学分野では、統計確率を利用した意思決定の手法が研究されています。意思決定支援では、統計学を利用して、数学的に期待できる利益を意味する情報利得が最も高い選択肢を選べられるようにします。

 また、ベイズネットワーク、構造方程式モデリング(Structural Equation Model)やマルコフモデルといった状態遷移モデルと組み合わせた因果解析(因果推定)のための手法の研究もあります。また、別アプローチにマルチエージェントシミュレーションや強化学習などによる数理モデルを利用した因果解析に通じる研究も活発になされています。

 こういった過去の要因を明らかにする因果解析、それを元によい未来を引き寄せる意思決定支援の研究は、ウェアラブルPC内にAIとして実装され、身近に支援してくれる将来が来るかもしれません。

 筆者は、統計的手法を自然言語処理で拡張した産業安全のための可視化・意思決定手法を提案[1]しました。内容は次の通りです。

 事故の再発防止には、過失を解析し将来に活かす事が求められている。ただ、現在の解析は、専門家が事例を深く読み解く解析が主であり、複数の事例を横断した解析は共通要因の抽出迄に留まっている。そこで、本研究では従来の横断解析法を高度化した進展事象の統合解析法を提案する。本手法は、事故やヒヤリハット等事例の進展事象を主体と振舞という単位のキーワードに分離し、同一の主体と振舞に該当するキーワードを連結する統合化により、事例の横断解析を可能にした。そして、事象の進展経路とその経路を辿る頻度を基に、危険同定、頻度解析、部分的なリスク解析と、その可視化を実現した。

 

 本統合解析法をPEC 事故事例423 件へ適用した結果、タンクから再発しうる危険事象を8 種類と同定し、頻度が高い要因は破損26 %、腐食21 %、高いリスクは破損3。3 × 10-2[Risk Rank/年]、破壊 2。5 × 10-2[Risk Rank/年]である事を可視化できた。

 

 

(経営学科 箕輪)

【参考文献】
[1] 弘嗣箕輪と良臣宗澤、 「事象の主体と振舞に注目した進展事象の統合解析法」、 安全工学、 vol。 53、 no。 5、 pp。 317–324、 2014、 doi: 10。18943/safety。53。5_317。

 

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