学内懸賞論文の入賞作が決定しました

商大では毎年学内で懸賞論文を募集しています。今年度は経済学科の下記4編が入賞しました。

1)【地域振興に関する事柄の部】

・佳作 2編

 寒川吏久⽃「アニメ聖地の成⽴とその展開~アニメ「からかい上⼿の⾼⽊さん」を利⽤した⾹川県⼩⾖郡⼟庄町の旅客誘致に関する研究~」

☆概要:本稿では、「からかい上手の高木さん」の聖地を活用した地域発展政策を行う香川県の土庄町に注目し、調査を進めた。結果、土庄町役場商工観光課が中核的な役割を担っていることが明らかになった。また、作品自体のイメージを崩さないこと、地元企業や地域住⺠などと協力することなども重要になると考えた。

☆感想:もともと私はアニメが好きで、アニメを利用した観光政策に興味がありました。そこで自分の出身地の香川県という点とこれから大きくなっていくコンテンツを利用しているという点から土庄町を調査しました。実際に現地に足を運び、商工観光課の方にインタビューをさせていただけたのが1番の思い出です。昔と違い、子供だけが楽しむものではなく、広い世代で楽しまれる日本のアニメを、今回のような観光政策などに活かしていくことに今後も注目していきたいです。

 

 海透祐也「プロスポーツチームが地域経済に与える影響~ファジアーノ岡山がJ1に昇格した際の経済効果の簡易試算~」

☆概要:ファジアーノ岡山がJ1リーグに昇格した際の岡山市に与える経済波及効果の簡易計算をすることでプロスポーツチームが地域経済に与える経済効果を調査しました。

☆感想:初めての論文作成で思い通りに進まないことが多く、テーマ変更やデータ収集など大変なことが多くありました。最終的には一つのものを完成させることができましたが、もっと計画的に進めることができたらさらに良いものが作成できると感じました。

 

2)【自由論題の部】

・佳作 1編

 横山那伊磨「ホームセンターの海外進出が株価へ与える影響に関する分析」

☆概要:私がアルバイトをしていたコーナン商事を中心としたホームセンターの株価データを扱い、イベントスタディ分析を行いました。そこから読み取れる株価の変動や他企業との比較を論じています。分析にはPythonを使用しています。

☆感想:本稿は卒業論文に提出したものになるのですが、何度もテーマ変更をしたのでとても苦労しました。論文を作成する上で、プログラムに上手く当てはまり、分析できるのかという点が1番大変でした。この論文については改善の余地が多いので今後続けてくれる人が居ればよろしくお願いします。井尻裕之先生お世話になりました。

 

・努力賞 1編

 三木康平,佐藤克己,岸良哉「全国の労働時間&賃金と労働生産性の関係性について~コロナ前とコロナ後の比較~」

☆論文の概要:都道府県別の労働時間、賃金、労働生産性の関係性をコロナ前とコロナ禍で比較して研究を行った。散布図や重回帰分析を用いることで、コロナ前とコロナ禍の社会構造の変化を読み取ることができた。

☆感想:今回は努力賞をいただきありがとうございます。この論文は卒業論文の一環として執筆しました。定期的にゼミ内で進捗を発表しながら、論文を完成させました。その中で、色んな参考になる意見をいただきながら執筆したのですが、中でも担当教員の見識の広さや自分では気付けない視点で指摘された時は「教員は伊達じゃない」と思いました。今回の卒業論文は、自分を含め三人で書き上げました。一人ではこの論文の完成度に至らなかったと思います。(佐藤)

大学の講義で学んでいたPythonを分析する際に活用できたので良かったです。しかし、何度もエラーが出てスムーズに進まなかったため大変でした。(三木)

私たちは、1人ではなく共同で取り組むことで、お互いの弱点を補いながら進めることができました。その結果、納得のいく卒業論文を完成させることができて良かったです。(岸)

 

〈経済学部通信〉第17回岡山県英語教育研究会

今回は宮島先生にご寄稿いただきました。


第17回岡山県英語教育研究会(むさしの会)が8月5日(土)に岡山商科大学の764教室で開催されました。岡山商科大学で開催されるのは2回目です。東は愛知県、西は福岡県から40名の高校や大学の先生方が集まりました。今回の研究会での発表はICTを活用した授業を実践されている、岡山県立大安寺中等教育学校のMatthew Davis教諭と愛知県立豊田南高校の中島浩平教諭の実践発表でした。高等学校は全国的に生徒が入学時に小型のノートパソコンやタブレットを購入しインターネットを利用したり、ICT機器を使った教材を作って授業を展開するようになっています。当然Wi-Fi環境は整備され、学校によっては教科書や辞書もインストールしています。紙の辞書がな  くなるのも時間の問題かもしれません。

普段私も使っているパワーポイントも知らない機能がいっぱいあり、お二人の発表で教材作りの勉強になりました。これから大学に入学してくる学生はICTを使った授業に慣れていると思うので、ICTを使った授業展開ができるように研究をしていきたいと思います。

(経済学部 宮島)

〈経済学部通信〉岡山県英語教育研究会を商大で開催

今回は今回は宮島先生にご寄稿いただきました。


令和5年3月25日(土)に岡山商科大学764講義室  にて、第16回岡山県英語教育研究会(むさしの会)が開催されました。この研究会は10年前に元立命館大学教授の山岡憲史先生と岡山商科大学専任講師の宮島が、出版社美誠社の協力のもと発足した会です。現在は井上直美留学研究所に事務局を置いています。

この研究会の目的は、最先端の英語教育の実践事例を通して授業改善を目指すことです。また北は北海道から南は九州までの、多くの英語教師を会員に年2回(3月と8月)開催されています。新型コロナの影響で3年間開催できませんでしたが、今回久々に開催することが出来ました。

今回は倉敷青陵高校の和田博文教諭と米子東高校の景山浩之教諭の実践発表がありました。ディベートの授業やICTを使った授業実践の報告に大いに学ぶことができました。特に今話題のchatGPTを使った英作文指導の実践例もありました。次回は8月に開催の予定ですから多くの高校の英語科の先生に参加して欲しいです。

(経済学部 宮島)

2021年度学術講演会

去る12月14日、岡山商科大学学会主催の学術講演会が行われました。

昨年度は新型コロナウイルス感染拡大により中止となったため、2年ぶりの開催となります。

 

本年度は神戸大学大学院経済学研究科准教授の佐野晋平先生に『子どもの貧困と人的資本政策』という論題でご講演いただきました。感染症対策のため佐野先生にはオンラインで講演していただき、学内の会場で人数制限を設けて視聴するという実施方法になりましたが、ほぼ定員いっぱいまで参加者が集まる盛会となりました。

 

講演の中では主に以下のような論点が説明されました。

  • 日本では低所得者が増加していて所得格差が拡大傾向にある。
  • 特に大人1人世帯での子どもの貧困が諸外国と比べ深刻である。
  • この状況を脱するための一つの方法は教育であり、教育は子ども本人の能力や知識、技能を高めるだけでなく、長期的には社会全体にも重要である。
  • 行政から家計への金銭的な援助は必ずしも学力を高めるのに有効ではない可能性がある。

全体を通して統計データが多く示されており、データを元に現状の分析を行い、政策を考えることの重要さを改めて感じる講演内容でした。講演に参加した学生の皆さんも、データを活用した実証分析がどのようなものなのかイメージが掴めたのではないでしょうか。データを集めて終わりではなく、一歩踏み込んでいろいろな角度から見ることで面白い発見が得られるかもしれません。今後の学習や研究の中で是非取り組んでみてください。

(講演会の様子)

【経済学科の研究紹介】言われるとかえって嫌になる「心理的リアクタンス」の経済学的分析

「開けないで」と言われるとかえって開けたくなった.

「勉強しなさい」と言われるとかえってやる気がなくなった.

みなさんはこのような経験はないでしょうか.

他の人からある行動を指示されることによって,かえって逆の行動を選びたくなることを心理学では心理的リアクタンス (psychological reactance) という現象の一種として考えます.リアクタンスというのは「抵抗」を意味する言葉です.

心理学では脅かされた自由を取り戻そうと試みた結果,心理的リアクタンスが起きると説明しています (例えばBrehm, 1966).つまり,人は自分の行動は自分で自由に選びたいと考えており,自由が制限されそうになると,それに「抵抗」し,逆の行動を選ぶのです.

 

確かにこの理屈で上手く説明できるケースもあるかもしれません.しかし指示を受けたからと言って常に抵抗するわけではありません(万引きをするなと言われたからと言って万引きしたくなるわけではないでしょう)し,誰から指示されるかによって反応が変わることもあるでしょう(先生に言われると従うけど親に言われると抵抗したくなるなど).実際にはもっと複雑な条件が絡んでくるのではないか,というのが研究の出発点でした.

心理学の弁護をしておくと,心理学でも自由が制限されるといつでも心理的リアクタンスが発生すると言っているわけでは勿論ありません.とはいえ心理学での理論は言語による記述が中心であり,数理的な分析が要求される経済学にそのまま応用することがいずれにせよ難しいのも事実です.このような理由で心理的リアクタンスを経済学の立場から捉えなおせないか,という発想に至ったのです.

私が神戸大学の宮川栄一先生と行った研究 (Kumashiro and Miyagawa, 2017) では,上記の心理学で定説とされている説明から離れ.親や先生,上司のような「アドバイザー」と,子供や学生,部下のような「選択者」の間の駆け引きをゲーム理論を使って分析しました.ゲーム理論というのは人と人との対立関係や協調関係などを数学的に分析するためのツールです.

この研究の特徴は,選択者はアドバイザーからどのように見られているかに関心があることをモデルに取り入れた点です.自分で正しい判断ができるということをアドバイザーに見せつけたいという気持ちを持っているというイメージです.

いつでもアドバイザーに言われる通りに行動しているとまだ一人前ではないと見られるかもしれないので,アドバイザーの指示に反する行動をとる動機が生まれます.一方,いつでもアドバイザーに反した行動を取っていると,大した考えもないのにただ反発しているだけだとみなされるかもしれませんし,自分にも不利益な誤った行動を取りやすくなってしまいます.

この研究では,従ったほうが良いときには従い,ここぞというときには抵抗するといった行動プランを選択者が選ぶ,すなわち心理的リアクタンスが発生する条件を調べました.

まだ改善が必要な部分もありますが,この研究が進むことによって不要な抵抗によって誤った選択をさせないような動機づけの方法にヒントが得られると考えています.なお,この研究については一般向けの雑誌に解説記事を寄稿しています(熊代, 2020).

 

経済学と言うとお金の学問という印象が強いと思いますが,実はこのような「選択」に関わることは全て経済学の対象になります.私のゼミでは,一見あいまいな人の行動や心理を数学的に表現することで,身の回りや社会の出来事を厳密に,明確に捉えることができたら面白いかも,と思える人を特に歓迎します.興味のある人はぜひ岡山商科大学経済学部へお越しください.

(経済学科 熊代)

 

参考文献

J W Brehm, A theory of psychological reactance, New York: Academic Press, 1966.

Kumashiro and Miyagawa, Economic Analysis of Psychological Reactance, Discussion Paper No. 1712, Graduate School of Economics, Kobe University, 2017.

熊代和樹,禁止されるとしたくなる「リアクタンス」の経済学,週刊東洋経済,2020年3月28日号

【経済学科の研究紹介】東南アジアの歴史と経済発展

今回は教員の研究紹介ということで、私が何を研究しているのかについて簡単に話したいと思います。岡山商科大学経済学部の池田昌弘です。

私の研究分野はアジア経済史になります。現在は20世紀前半の東南アジア米貿易やベトナムの米生産・流通を対象としております。この時代の東南アジアは、ヨーロッパやアメリカにより植民地支配を受けていました。私が高校生だった頃、世界史の教科書では支配と現地の人々への抑圧のことが中心に書かれていたと記憶しております。

しかし経済的な側面を見てみると、貿易が急速に拡大し、ヒト・モノの交流が盛んになった時期でもあり、地域によっては一人当たりの所得水準が向上した時代でもあります。当時の経済中心地の写真を見てみると、意外にも大きな建物が並んでいることに驚かれる方もいらっしゃるかと思います(もしかしたらこのあたり、現在の教科書では記述されているかもしれませんね)。

 

写真1:1880年頃サイゴン(現ホーチミン市)のコンチネンタルホテル

[出典:https://www.historichotelsthenandnow.com/continentalsaigon.html

 

その中でも人々の生存に欠かせない米の流れを見ることで、当時の東南アジア(特にベトナム)経済がどのように発展(または停滞)したのかを明らかにすることが、私の研究テーマになります。ベトナムについて言うと、実はこのテーマは経済だけでなく反植民地運動にも密接に関わるため、当時の社会やジャーナリズム、さらには後々の独立戦争にも繋がるテーマになります。

現在の東南アジアは経済発展が著しい地域になります。経済の活発さはメディアを通じてもわかるのではないでしょうか。また、発展とともに日本との関係も非常に深くなってきています。コンビニではベトナム人の方々が対応する光景をよく見ますし、旅行ではバリ、セブ、プーケットといった有名なリゾート先を思い浮かべることができます。

ベトナムでも都市化が急速に進み、植民地時代の建物と併存して高層ビルがたくさん建設されています。

 

写真2:現在のコンチネンタルホテル(ホーチミン市中心地に立地)

[出典:写真1に同じ]

写真3:ホーチミン市の夜景

[出典:The voice of Vietnam(https://vovworld.vn/ja-JP)]

こうした人の移動や観光の賑わいは、関係性という意味において、我々と東南アジアの国々が経済的に近づいてきている様子を示しているのではないでしょうか。こうした「繋がり」を長期的な視点から見直すことで、現在の東南アジア諸国の社会経済がどのように形成されてきたのかを深く理解できればと考えています。

研究では歴史史料を読み込んだりデータを活用したりしていますが、こうした研究活動やその成果の一部は商大の講義からも垣間見ることができます。現在、私は研究と関連した下記の講義を担当しております。

「東南アジアの歴史と社会」、「アジア経済分析」、「開発政策」

 

漠然とアジアについてもっと知りたい、東南アジアってどのような地域なのだろう、と思った方がいらっしゃいましたら、ぜひ岡山商科大学へのオープンキャンパスに参加し、受験を検討していただけたらと思います。

また、今後は教員の研究紹介が定期的に更新されるかと思います。気になった分野やテーマが今後でてくるかもしれません。高校生や保護者の皆様には、今後とも長い目で我々のブログとお付き合いをしていただけますと幸いです。

(経済学部 池田)

【経済学科の研究紹介】ビッグデータのリスク評価の研究

 1996年度に大きな研究プロジェクトがスタートしました。国が調査した官庁統計データを,生のデータに近い形式で安全に公開するためには「どのような秘匿方法が必要か」,そしてそのようなデータには「どのような新しい使い方があるか」,などを研究するために全国から著名な研究者が集められました。公開したデータの安全性を測る「リスク評価」と呼ばれる研究についてもいくつかの研究グループが組織され,そのうちの一つに私も誘っていただきました。グループの代表者は,当時,東京大学大学院におられた竹村彰通教授でした。現在は滋賀大学データサイエンス学部長をされています。

 

 研究の内容を少し紹介しましょう。次のデータをご覧ください。

氏名 年代 性別 年収
A 20代 女性 300万円
B 20代 女性 400万円
C 30代 女性 350万円
D 40代 女性 500万円
E 50代 女性 700万円
F 20代 男性 300万円
G 30代 男性 300万円
H 30代 男性 450万円
I 40代 男性 400万円
J 40代 男性 600万円

A~Jの10人について,年代,性別,年収が書かれていますが,この表から氏名を消去して公表するとします。Sさんはこの10人の年代と性別の2項目の情報を知っていますが年収は知りません。公表されたデータでは,AさんとBさんは20代女性という同じ組み合わせで見分けがつきませんが,Cさんは他に同じ組み合わせがいないため,年収350万円ということがSさんに知られてしまいます。このように組み合わせが他人と違うことをユニークと呼びますが,この場合4人がユニークとなります。

 

ただ,このデータが100人から選ばれた10人のものであれば,話が難しくなります。Sさんが100人全員について2項目の情報を持っていても,どの10人が選ばれたかが分からない場合,Cさんと同じ組み合わせが100人の中で他に何人いるかを推測しなければ,ユニークかどうかは分かりません。現実の問題では,上の例の10人,100人,2項目の代わりに,10万人,1億人,10項目以上のようなビッグデータを扱うことになり,その意味でもかなり手強い問題となります。

 

国内では数理的なモデルを使って推測する方法が主流で,世界の中でもトップクラスの研究を続けています。私もモデルの研究をしていた時期もありますが,最近はモデルを使わないノンパラメトリック法を使うことが多くなりました。世界的にもほとんど研究者がいない分野です。この方法では推測がやや不安定で,しかも計算するのに時間もかかりますが,適用範囲が広いのがメリットです。

 

研究では研究者同士の情報交換も大切です。科学研究費補助金の代表者を何度か務めたこともあり,2006年度からはこの分野の研究者や,総務省,企業などの実務者も参加する研究集会を主催しています。不開催の年もありましたが,今年度は通算14回目になる研究集会を2日間の日程でオンライン開催しました。時代とともに公開の対象となるデータも変化し,地理データ,移動履歴データ,医療情報データ,ゲノムデータなどの様々なビッグデータも扱うようになりました。研究の意義もさらに大きくなっているように思います。

 

(経済学部 佐井)

兼業農家の自立的経営の模索 −2020年度の取り組みの概要−

松井研究室では流通・マーケティングの視点から、若い世代の兼業農家の自立的経営を模索するための実験と実践を試みています。今回は取り組みの概要のポイントを説明させて頂きます。今後、詳細な活動を紹介させて頂きます。

一番のポイント・・・農作物の生産と販売について、効率よりも効果を高めること、分担を積極的におこなうことによって、無理なく、楽しく、農業経営をして頂けるよう試行錯誤をしています。

①農家さんとの協働事業→岡山県真庭市等の圃場では私たちが生産を、農家さんが販売を分担するようにしています。

②実験事業→岡山県赤磐市の圃場では農業に関するさまざまな実験をおこなっています。

③情報収集・発信事業→私たちの実験や実践に関する情報の整理と発信をします。また、全国の農業高校での取り組みについての情報を現在整理しています。

(経営学部商学科 松井)