〈経済学部通信〉金融教育について

岡山商科大学では全学的な金融教育として「金融総合教育プログラム」が設置されております。そのプログラムの主要な科目としまして「金融リテラシー講座」があり、今年度も開講されました。この講座は金融諸団体(下記に2023年度前期開講の「金融リテラシー講座(基本編)」にてご協力いただきました団体を載せております)のご協力のもと、前期に基本編、後期に応用編の計30回が、毎年開講されております。

現状、岸田政権が進めております『人生100年時代における貯蓄から投資へ』の流れは、今後一層推進されることになるかと考えます。そのような時代におきまして、学生の皆さんは社会に出る前に最低限の金融リテラシーを備えておく必要があります。

ぜひ学生の皆さんには「知らないからわからない、そもそも選択できない」ではなく、「知っていて選択する、選択しない」ができるようになってもらいたいと思います。

 

【金融リテラシー講座(基本編)にご協力いただきました金融諸団体】

(敬称略 / 講義担当順)

全国銀行協会 / 生命保険文化センター / 岡山県金融広報委員会 /

日本損害保険協会 / 岡山県銀行協会 / 日本証券業協会 /

投資信託協会 / 信託協会

 

(井尻裕之)

〈経済学部通信〉第166回経済学研究会(テーマ:環境経済学)の開催

2023年3月1日に第166回経済学研究会を開催いたしました。

今回は環境経済学をテーマに秋田大学の熊丸先生、近畿大学の石村先生にお越しいただきました。

日 時:2023年 3月 1日(水) 16時 30分より
場 所:763教室 (7号館 6階)

第 1報告 :熊丸 博隆 先生 (秋田大学)
「プラスチック海洋汚染問題がプラスチックから紙への製品素材代替に与えた影響」

第 2報告 :石村 雄一 先生 (近畿 大学 )
“Impact of time costs on household behavior for waste separation”

(井尻裕之)

〈経済学部通信〉他大学との合同ゼミ発表会

2023年1月7日~8日にかけて、他大学との合同ゼミ発表会(@広島経済大学)を行いました。参加大学は近畿大学経済学部の石村ゼミ、広島経済大学の松榮ゼミです。岡山商科大学からは経済学部の井尻ゼミが参加しました。

1日目は各大学ともに、ゼミを通じて勉強・研究してきたことを発表しました。岡山商科大学井尻ゼミからは、3グループの発表が行われました。

☆TRANSPORTATION INFRASTRUCTURE RENEWAL ~官民一体で安全な国ニッポンを作ろう~

☆やりたいことを見つけよう! ~職場体験と今後の金融教育のあり方~

☆日本の持続可能な発展のためのごみ分別

 

2日目は3大学ゼミ合同で就職対策をグループワークで実施いたしました。

 

残念ながらコロナウイルス感染症対策のため、懇親会などといった学生間の交流機会を設けることはできませんでしたが、非常に有意義な機会になったかと思います。

☆今回参加した岡山商科大学井尻ゼミの学生のコメント

・今回、近畿大学、広島経済大学の方々と合同ゼミを行いました。普段行っている学内の学生との活動では気づかなかったことが多く学べた良い機会になりました。今後、本格的に就職活動が始まっていく中で、同学年の優れた学生の活動報告を聞き、焦りも覚えましたが、思っているよりも差は大きくないと自信を持つこともできました。コロナ禍でこうした機会を設けることは困難かもしれませんが、また機会があればぜひ参加したいと思っています。[経済学部 3年 寒川]

・今回初めて、他大学の同級生と合同で研究の発表を行ったが、同級生とは思えないほど詳しい分析・着眼点の違いから自身の未熟さ痛感した。また、今後の課題も見たかったので、自身の成長につながる良い経験だった。機会があれば、今回よりも充実した内容の研究成果を用意し、参加したい。[経済学部 3年 横山]

 

最後にゼミのみんなで写真を撮りました。来年度も引き続きこのような機会を多く企画していきたいと思います。

 

(経済学部 井尻)

〈経済学部通信〉2022年度 3-4回生プレゼンテーション大会

経済学部では、2022年1月28日に3-4回生プレゼンテーション大会を実施いたしました。

コロナ渦の中、岡山県はまん延防止等重点措置が当日とられておりました。

そのため、学生参加者は午前と午後の2組に分かれ、さらにプレゼン担当者のみが教室にて参加し、その他の学生はZoomより参加する、といった密を防ぐための対応をとりました(もちろんアルコール消毒の徹底や学生間の距離をとって座らせております)。

当日はプレゼンテーションが順次行われ、後日投票の結果、井尻ゼミの髙原・平口ペアのプレゼンテーションが総合1位となりました。

2人はともに今年度で卒業で、卒業論文のテーマである「フリマアプリと消費者教育~アンケートとその分析結果~」についてプレゼンテーションを行いました。

取得したアンケート結果から独立性の検定を行い、その実証結果を踏まえて消費者教育について提言をまとめています。

来年度から社会人となる2人ですが、次のステージでの活躍も楽しみです。

最後に、髙原君と平口さんのコメントを載せて締めたいと思います。

「まずアンケートにご協力いただいた皆さんのおかげで研究を行えたことに感謝をお伝えしたいと思います。プレゼンなどでの発信力をつけたくて井尻ゼミに入ったので、最後にいい結果が出て本当によかったです。コロナ渦の中、様々な機会を失った大学生活後半の2年間でしたが、最後にやり続けてきたことが報われてよかったです。(髙原・平口)」

(経済学部:井尻)

 

〈経済学部通信〉第6回 関西応用経済学研究会

第6回 関西応用経済学研究会が、12月11日(土)に岡山商科大学にて開催されました。

コロナ禍の中、久々の対面での研究会開催となります。当日は5本の研究報告が行われました。

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1. The impact of COVID-19 stay- at-home orders on waste management

報告者: 石村雄一(近畿大学)

 

2. Developing an Indicator of Sustainable Plastic Use in Manufacturing Sector

報告者: 熊丸博隆(神戸大学)

 

3. 特許の価値と権利の移転

報告者: 佐々木昭洋(岡山商科大学)

 

4. Labor market volatility and queueing theory

報告者: 松榮豊貴(広島経済大学)

 

5. パシネッティ・モデルを用いたリカード課税論分析

報告者: 若松直幸(中央大学)

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当日は予定時間を超え、議論が白熱し、大変有意義な研究会となりました。コロナ禍の中、感染症対策に気を使いながらお集まりいただきました報告者や出席者の先生方には大変感謝申し上げたいと思います。今後も日常的にこのような活発ある研究会が開催できればと思います。

(経済学部 井尻裕之)

〈経済学部通信〉大きな声と滑舌

今回は宮島先生にご寄稿頂きました。

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  皆さんは次の詩を聞いたことがありますか。

 

あめんぼ あかいな アイウエオ

うきもに こえびも およいでる

かきのき くりのき カキクケコ

きつつき こつこつ かれけやき

ささげに すをかけ サシスセソ。

そのうお あさせで さしました

たちましょ らっぱで タチツテト

トテトテ タッタと とびたった

なめくじ のろのろ ナニヌネノ

なんどに ぬめって なにねばる

はとぽっぽ ほろほろ ハヒフヘホ。

ひなたの おへやにゃ ふえをふく。

まいまい ねじまき マミムメモ

うめのみ おちても みもしまい。

やきぐり ゆでぐり ヤイユエヨ

やまだに ひのつく よいのいえ

らいちょうは さむかろ ラリルレロ

れんげが さいたら るりのとり

わいわい わっしょい ワイウエヲ

うえきや いどがえ おまつりだ

 

 これは北原白秋の詩です。NHKや民放のアナウンサーや舞台役者、企業の新人研修などで定番になっている発声練習の詩ですね。友達と話すときや家族と話すときは普通に会話ができるが、人前で発表などをするときは声が小さくなってしまう人がなんと多いことか。

ゼミでは大きい声をお腹から出すよう求めているが、その意味をなかなか理解できない学生がいます。プレゼンテーションの構成やストーリーの磨き方を書いた本は多いが、声の出し方山の取り方などを書いた本は意外と少ないことに驚く。私の英語の講義では、少々の文法ミスよりも声の大きい学生のスピーチには加点するが、声の小さい学生は減点するようにしている。この北原白秋の詩を使って力強く言葉を出し、滑舌よく文章を読める練習をしして、相手に確実に伝え、美しい声で話す力を持たせたい。

 どんなに素晴らしい内容のプレゼンテーションでも、それを伝える声が良くないと、相手には評価されないでしょう。上の写真は高校生がお芝居を演じているところですが演劇部員は日頃の発声練習のおかげか、お芝居以外の発表の場でも大いにその力を発揮します。カナダやオーストラリアでは高等教育に演劇が表現力やコミュニケーション能力を身に着けさせるのを目的に一つの教科として存在しているが、日本にはまだ認められて異なことが日本人のプレゼン能力が低いと言われる原因の一つかもしれません。

 

複式呼吸

 相手に届く声を出すには複式呼吸ができないとだめです。正しい姿勢で9秒ぐらい細く長くお腹がへこむように吐き出します。息が全部出たら、お腹の力を抜きます。そうすると空気がおのずと入ってくるので、お腹がふくらむように数秒息を吸います。要するにお腹から声を出す練習をするといいです。相手にはっきりとした声を届ければプレゼンは楽に進みます。この複式呼吸をしながら声を出す練習をすると言葉が力強くなり相手は気持ちよく聞き取ることが出来ます。複式呼吸のやり方はインターネットにたくさん出ているのでそれを参考に練習をしてみてください。

 

早口言葉

 早口言葉でもっとも有名なのはういろううりです。

せっしゃおやかたともうすは、 おたちあいのうちに、

ごぞんじのかたも ござりましょうが、

おえどをたって にじゅうりかみがた、

そうしゅうおだわら いっしきまちを おすぎなされて、

あおものちょうを のぼりへ おいでなさるれば、

らんかんばし とらやとうえもん

ただいまは ていはついたして、えんさいとなのりまする。

がんちょうより、おおつごもりまで、おてにいれまする このくすりは・・・・

このういろううりを毎日練習しているとかなり滑舌がよくなります。最初はなかなかうまく読めないでしょうが、何回も練習するとスラスラと声がでるようになり、他の文章を読むのも案外簡単に読めるようになってきます。是非試してみてください。このういろううりもインターネットで見ることができますから。今日から始めましょう。また、次の早口言葉を三回連続して言えるようチャレンジしてみてください。

  第五交響曲観客驚愕(3回)

  中小商工業振興会議(3回)

  隣の客はよく柿食う客だ。(3回)

  青巻紙黄巻紙赤巻紙(3回)

  バスガス爆発(3回)

 今から練習しておいて、滑舌よく就職試験の面接やプレゼンテーションに臨んでください。あなたもアナウンサーや役者のように美しい声が出てきますよ。

(経済学部 宮島)

 

〈経済学部通信〉役に立たない(多分)経済学者案内~こぼれ話~

今回は山下先生にご寄稿頂きました。

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(自然)科学者の伝記を読んだり、エピソードを聞いたりしたことはあるでしょう。たとえば、アイザック・ニュートンやアルベルト・アインシュタイン、そして、日本人なら湯川秀樹。この人たちの学問上の業績はよく知らなくても、この人たちにあこがれて科学者を目指す人がいます。また、学生や研究者ならば、こういった先達のエピソードや人となりを知り、「なぜこんな考え方がでてきたのだろう」という疑問に答えを得ることがあります。実は、経済学でも同じことがあるのです。そこで、今回は経済学にとってのニュートンと呼んでもよいアダム・スミスの人となりやエピソードを紹介していきます。学説史的なことは専門外ですのであまり述べません。もし、アダム・スミスという人に興味をもち、親しみを感じたら、彼の著書(文庫本であります)や研究書を読んでみてください。

【アダム・スミス】1723-1790、スコットランド生まれ

アダム・スミスの名前を知らない人はいないでしょう。彼は「経済学の父」と呼ばれています。代表的な著作は、「見えざる手」という言葉が有名な「国富論」(1776)、正式な名前はもうすこし長く「諸国民の富の本質と原因についての考察」と言います。現在に至るすべての経済学者と経済学部生はアダム・スミスの弟子と言ってもよいでしょう。

さて、この偉大なるアダム・スミスは、内向的で、さらに子どものころから放心癖(ぼ~っとする癖)がありました。実は、スミスは3歳か4歳のときに誘拐に遭っています。おそらく、ぼーっとしていたところをさらわれたのでしょう。さらっていったのは放浪していたスリの一味でした。早速、スリは幼いスミスを使って「仕事」を始めたのですが全然役に立ちません。何せ、スミスは人見知りです。記録ではスミスはすぐに親元に連れ戻されたとありますが、実際は送り返されたのでしょう。(多分、元いたところに戻された。)しかし、このまま、スミスが帰らなかったら現在のような経済学は存在しなかったでしょう。放心癖のほうは生涯続いたそうで、あるときは書類に署名するとき前に書いた人の名前をそのまま書き写す、役人をしていたときは目の前で守衛の兵隊が捧げ銃(ささげつつ)をしたとき、自分も持っていたステッキで反射的に同じ姿勢をとる、議論に集中していてお茶を入れるはずのポットに茶葉の代わりにバター付きのパンを入れお湯を注ぎ飲んでから気づく(まずかったそうです。)、国富論の執筆中にはガウンを羽織ったまま25km近く散歩したということが記録されています。

さて、スミスは14歳でスコットランドのグラスゴー大学に入学し、道徳哲学を学びます。卒業後、17歳で当時の出世コースの王道として英国国教会の聖職者になるべくイングランドのオックスフォード大学に進学しますが、当時のオックスフォードの教師連のやる気のなさ(岡山商大とは大違いです。)にがっかりして23歳で中退します。オックスフォードの教師の様子はスミスにとってはショックだったようで、中退から30年後に著した「国富論」に「オックスフォードの教師は教えるふりすらしない」と記しています。その後、スコットランドに戻り、エディンバラ大学を経てグラスゴー大学に戻り道徳哲学教授に就任します。退職後はフランスに渡ったりもしますが、スコットランドに戻り、エディンバラで生涯を終えます。そして、死の直前には未発表の原稿は全部燃やすように命じました。(しかし、一部は残り現在出版されています。)

スミスの代表的な著作には前述した「国富論」より前に書かれた(正確には講義録)「道徳感情論」(1759)があります。タイトルからもわかるように人の感情に注目し、利己心、共感、道徳性の形成など内面を深く掘り下げています。ここに彼の内向的な性格がよい具合に生きています。これは17年後に著された「国富論」にも生かされています。「国富論」を読んでいくと気づくのですが、まるでスケッチでもしているように当時の社会を言葉で描写しています。このまま映像化できそうなほどです。ただ、表面的な描写にとどまらず、社会組織(市場や国家)や経済活動(分業など)、経済現象(独占価格の決定など)の背後にある人の心理(特に感情)についての洞察がその都度記されています。そして、それらの記述から「各人が各様に自分の利益を追求する経済的自由をもつ社会が良い」というスミスの信念(あるいは強力な主観)が見えてきます。ただし、スミスは富裕層や権力者といった特権階級のみが好き勝手に振る舞い利益を得ることを擁護しているのではありません。あらゆる層の国民の繁栄を犠牲にして強者のみが反映することについては、重商主義批判のなかで批判しています。「重商主義の諸規制においては、・・・製造業者(注)特定の生産者といったような意味)の利益はきわめて格別の注意を払われてきた。そして、消費者の利益というよりは、・・・製造業者の利益の犠牲にされてきたのである」(「国富論」第4編第8章「重商主義についての結論」より)とあります。また、スミスは当時の英国の植民地支配にも批判的でした。「国富論」に出版年を思い出してください。1776年。奇しくも英国に対して、当時植民地であったアメリカが独立宣言を発した年でありました。

 

さて、普段私は経済理論を講義し、また、研究しています。現在の理論は、多くの場合、新古典派経済学のガチガチの仮定のもとで高度に抽象化されています。確かに議論を進めるためには仮定や抽象化は必要です。ジョーン・ロビンソン(1903-1983、英国の女性経済学者)が言ったように「縮尺1分の1の地図は役立たない」のです。(地図は高度に抽象化されていますね。)

 とは言え、そんな中にずっといると経済学が「日常生活を営んでいる人間についての研究」(アルフレッド・マーシャル(1842-1924、英国の経済学者))であることを忘れ、ただの計算屋になったような錯覚に陥ります。そのような状態から抜け出すために、(専門分野ではない)経済学説史や経済学者の伝記(に近いもの)に目を向けるようにしています。そうすることで「経済学の豊かさ」を確認できるのです。

(経済学部 山下賢二)

〈経済学部通信〉花を飾ってみませんか。

今回は渡辺先生にご寄稿頂きました。

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 コロナ渦においてはオンライン授業(受講)が推奨され、外出して人と会う機会が減り、自室で過ごす時間が長くなる傾向にあると思います。そのような生活様式の変化もあって、特に一人暮らしの学生さんの中には気が滅入ってしまう人も居るという話を聞きました。

 そのようなときはパソコンやスマートフォンを使ってオンライン上で誰かとコミュニケーションをとることにより、憂鬱な気分を変えることも大切だと思います。しかし、それでは増々パソコンやスマートフォンと過ごす時間が長くなってしまうという問題があるかもしれません。

 

 私はときどき花を買って部屋に飾ります。花は生花店だけではなく、スーパーやホームセンターでも買うことができます。花瓶に飾り易いよう、数本だけラッピングされて数百円で売っていることもあります。花からもたらされる効果は人それぞれだと思いますが、私は自分の年齢が四十歳に近づいてきて、花を飾る意味が少しずつ分かってきたような気がします。みなさんにとって花を飾る意味とはどのようなものでしょうか。

 自分の部屋に、花を飾ってみませんか。

 

 

(経済学部 渡辺)

〈経済学部通信〉情けは人のためならず:ワクチンとクジラの話

今回は三谷先生にご寄稿頂きました。

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日本には「情けは人のためならず」ということわざがある。しかし、多くの人が(A)「人に情けを掛けて助けてやることは,結局はその人のためにならない」という誤った解釈をしている。正しくは、(B)「人に情けを掛けておくと,巡り巡って結局は自分のためになる」という意味である。文化庁の2010年度の「国語に関する世論調査」によると、(A)のような誤った解釈をしている人の割合と(B)のような正しい解釈をしている人の割合がほぼ同じである。しかし、年齢別にみると高齢層では(B)のような正しい解釈をしている人の割合の方が高いのに対し、20代、30代の若年層では(A)のような誤った解釈をする人の割合が正しい解釈をする人の割合の倍近くに上っている[i]

このことわざは経済学的には利他的動機や所得再分配政策の意義などを考える上でも大変興味深いが、「情けをかけることが巡り巡って結局は自分のためになる」という投資的側面も示唆している。以下では、主に投資的側面に着目して、最近目にした2つの記事について考察してみたい。

(1)ワクチンの話

コロナ禍のG7が終わった。アメリカのトランプ前大統領が参加した昨年までとは打って変わってG7の協調姿勢が戻った感がある。中でも新型コロナ感染症対策として発展途上国に対する10億回分のワクチンの供与が発表されたことが注目される。人道的な見地からは当然のことであるが、経済学的に見ても非常に賢明な投資であるといえる。

IMFの試算によれば、来年4月までに全世界の人口の約70%にワクチン接種を行うのに500億ドルの費用がかかる。しかし、それが達成されれば多くの命が助かるということに加えて、2025年までの全世界の累積経済便益は9兆ドルに上ると予想される。投資としてみれば4年間の収益率はなんと17,900%にも上る。発展途上国へのワクチン供与が全世界の接種率を高め、新型コロナ感染症に対する集団免疫が形成され、世界経済が回復・発展し、巡り巡ってその恩恵がワクチンを供与した国々にも及んでくる。しかも信じられないほど高い収益率で。情けは人のためならず。誰がこんなうまい話(‟世紀の投資機会”)を逃すであろうか、と英『エコノミスト』誌の記事は書いている[ii]

(2)クジラの話

新聞に掲載されたある投信株式会社の広告である[iii]。少し長いがその一部を引用しよう。

「…1万ドルで売れるシロナガスクジラが世界に7万5000頭いるとして、自然の摂理を踏まえ、種が持続できる年2000頭を捕獲し続けるとする。毎年2000万ドルが手に入り、将来にわたって漁ができることになる。一方、一気に全頭捕獲し7億5000万ドルを手にし、それを年率5%で運用できれば毎年3750万ドル手に入れられる。種の保存を考えず、金融で儲けた方が得をすることになる[iv]

人類はクジラの将来について考える余裕ができた。…(中略)…

ところが人はいざ「投資、儲け、利益」となると倫理観は吹き飛んでしまう。「今だけ、金だけ、自分だけ」になってしまう。世界全体の成長率が3%程度。投資になると1、2年で倍にしなければならないと思っている。…」

今度の「情け」の対象は「人」ではなくて「クジラ」あるいは「種の保存・多様性」、「自然環境」である。シロナガスクジラのように絶滅の危機に瀕している種を保存することは、漁業資源としてだけでなく、種の多様性を維持し、自然環境の破壊を防いで、巡り巡って将来にわたって人類に恩恵を与えるはずである。その意味ではことわざがいうようにまさに人類へリターンが戻ってくる投資である。しかし、収益率が低いために種の保存という選択肢が選ばれない。どこに問題があるのであろうか。ESG投資のように自然環境保護を重視する投資機会(金融)がまだ十分に発達していないからだろうか。あるいはそもそも人間の本性として投資となると強欲で近視眼的な行動をとるからであろうか。

 

[i] 文化庁「「情けは人のためならず」の意味」『文化庁月報』2012年3月号(No.522)

[ii] The Economist, “The West is passing up the opportunity of the century,” Jun. 12 2021 edition.

[iii] さわかみ投信株式会社広告「「今だけ、金だけ、自分だけ」が本望か!」日本経済新聞2021年6月1日朝刊

[iv] 原典はColin W. Clark (2006), The Worldwide Crisis in Fisheries: Economic Models and Human Behavior, Cambridge University Press.

(経済学部 三谷)

〈経済学部通信〉絶望的「IT弱者」が2020年度をふり返る。

今回は両角先生にご寄稿頂きました。

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1年ちょっと前,2020年4月のある日,最初の「緊急事態宣言」が出され,不要不急の外出を自粛せよと呼びかけられている最中,私はとある理由で出かけておりました。お店はほとんど閉まっているし,人もクルマもごく少なく,戦争でも始まったかという異様な雰囲気は忘れがたいものです(まあ一種の「戦争」が始まったとは言えるか)。私には,あるものを急いで手に入れる必要があって,行き先は携帯電話ショップでありました(そこが営業中であることは調べておいた)。

 

絶望的な「IT弱者」である私にとって,オンラインでのリモート授業という前代未聞の事態に自力で対処せよというのは,目の前が暗くなるようなもの。何をどうしたらいいのか。とにかく自分でやれることを探すしかない。で,スライドを作って,音声を録音して,ビデオに変換して,動画投稿サイトで流す,という方法に行き着いたのでした。これなら私でも何とかやれるか,これでやるしかないだろう,と。

 

そこで実験に取りかかったところ,ただちに問題に直面したのです。動画投稿サイトでアカウントを取る必要があるのはいいとして,そのための個人認証にパソコンではダメ,ガラケーでもダメ,スマホしか受けつけてくれない,と。私,スマホは持ってません(ガラケーは契約していたが,通常,電源を切って引き出しに放り込んである。必要なときだけ使う)。この機会にガラケーからスマホに乗り換えるしかないかと,ショップに急いだのでありました。

 

そのショップで若い女性の店員さんが,

「ご希望の機種はありますか?」

と言うので,

「一番安いのにしてください」と。

そこで,1台取り出して見せてくれたのですが,いくらかと聞いてみたら,タダでくれるというのでたまげた。おい,大丈夫か。型落ち,売れ残り品で,タダでもさばければいいってか。タダほど高いものはない,とも言うしな。まあしかし,スマホでありさえすればいいので,これにしておこう,となった次第です。契約内容ももちろん一番安いものにしました。

 

カウンターで使い方の説明を聞いていたところ,私よりもう少し年上のおじいさんが入店してきたのです。自分のスマホを取り出して,別の店員さんに向かって,

「これを,前の2つ折りの携帯電話に変えてくれんじゃろうか?」と。

私とは逆の用件で来店されたのでした。ガラケーもそのうち完全廃止になるそうだし,店員さんも苦慮している模様でありました。

 

スマホを手に入れた後,近くの電化製品店が開いていたので,パソコン用の外付けマイクも買っておこうと寄ってみたのです。街はガラガラなのに店内は意外と混雑しておりました。外付けマイクはどこにあるかなと,通りがかった男性の店員さんに尋ねてみました。すると店員さんは,

「ありませんッ!」と。

その剣幕に思わずタジタジとなりましたが,さすがにちょっと悪かったと思ったのか,メーカー段階から品切れで入荷の見込みも立たないと,ややていねいに説明してくれました。それならと予約購入の手続きをして,帰宅したのでした。やれやれ。

 

何とかして「時代遅れ」の人間のまま生き抜いてやろうと日々努力している私も,とうとうスマホを持たされることとなった顛末。ちょっと笑える場面もあったという2020年度の冒頭のお話でしたが,その後は,地獄の責め苦のような日々が延々と続くこととなります。もしもこの投稿の次回があるなら,続きをまた書くかもしれません。ありがとうございました(私のスマホは,もちろん個人認証に使えたが,その後は電源を切られて引き出しで眠っている)。

(経済学部 両角)