【経営学科の研究紹介】意思決定、因果解析のための情報学

 進路、就職先、将来の伴侶などの選択と、人生には沢山の分岐点が存在します。その時、効果的な意思決定をしたいと思った事が皆さんあるのではないでしょうか?現代では、その意志決定は更に大変かもしれません。インターネットの発達により膨大な情報量の下、検討すべき選択肢や考慮すべき軸が増え、余計に悩む事が増えているのではないでしょうか。

 研究者は、その問題に解決できるよう意思決定の理論や手法を研究して来ました。情報科学分野では、統計確率を利用した意思決定の手法が研究されています。意思決定支援では、統計学を利用して、数学的に期待できる利益を意味する情報利得が最も高い選択肢を選べられるようにします。

 また、ベイズネットワーク、構造方程式モデリング(Structural Equation Model)やマルコフモデルといった状態遷移モデルと組み合わせた因果解析(因果推定)のための手法の研究もあります。また、別アプローチにマルチエージェントシミュレーションや強化学習などによる数理モデルを利用した因果解析に通じる研究も活発になされています。

 こういった過去の要因を明らかにする因果解析、それを元によい未来を引き寄せる意思決定支援の研究は、ウェアラブルPC内にAIとして実装され、身近に支援してくれる将来が来るかもしれません。

 筆者は、統計的手法を自然言語処理で拡張した産業安全のための可視化・意思決定手法を提案[1]しました。内容は次の通りです。

 事故の再発防止には、過失を解析し将来に活かす事が求められている。ただ、現在の解析は、専門家が事例を深く読み解く解析が主であり、複数の事例を横断した解析は共通要因の抽出迄に留まっている。そこで、本研究では従来の横断解析法を高度化した進展事象の統合解析法を提案する。本手法は、事故やヒヤリハット等事例の進展事象を主体と振舞という単位のキーワードに分離し、同一の主体と振舞に該当するキーワードを連結する統合化により、事例の横断解析を可能にした。そして、事象の進展経路とその経路を辿る頻度を基に、危険同定、頻度解析、部分的なリスク解析と、その可視化を実現した。

 

 本統合解析法をPEC 事故事例423 件へ適用した結果、タンクから再発しうる危険事象を8 種類と同定し、頻度が高い要因は破損26 %、腐食21 %、高いリスクは破損3。3 × 10-2[Risk Rank/年]、破壊 2。5 × 10-2[Risk Rank/年]である事を可視化できた。

 

 

(経営学科 箕輪)

【参考文献】
[1] 弘嗣箕輪と良臣宗澤、 「事象の主体と振舞に注目した進展事象の統合解析法」、 安全工学、 vol。 53、 no。 5、 pp。 317–324、 2014、 doi: 10。18943/safety。53。5_317。

 

【経済学科の研究紹介】言われるとかえって嫌になる「心理的リアクタンス」の経済学的分析

「開けないで」と言われるとかえって開けたくなった.

「勉強しなさい」と言われるとかえってやる気がなくなった.

みなさんはこのような経験はないでしょうか.

他の人からある行動を指示されることによって,かえって逆の行動を選びたくなることを心理学では心理的リアクタンス (psychological reactance) という現象の一種として考えます.リアクタンスというのは「抵抗」を意味する言葉です.

心理学では脅かされた自由を取り戻そうと試みた結果,心理的リアクタンスが起きると説明しています (例えばBrehm, 1966).つまり,人は自分の行動は自分で自由に選びたいと考えており,自由が制限されそうになると,それに「抵抗」し,逆の行動を選ぶのです.

 

確かにこの理屈で上手く説明できるケースもあるかもしれません.しかし指示を受けたからと言って常に抵抗するわけではありません(万引きをするなと言われたからと言って万引きしたくなるわけではないでしょう)し,誰から指示されるかによって反応が変わることもあるでしょう(先生に言われると従うけど親に言われると抵抗したくなるなど).実際にはもっと複雑な条件が絡んでくるのではないか,というのが研究の出発点でした.

心理学の弁護をしておくと,心理学でも自由が制限されるといつでも心理的リアクタンスが発生すると言っているわけでは勿論ありません.とはいえ心理学での理論は言語による記述が中心であり,数理的な分析が要求される経済学にそのまま応用することがいずれにせよ難しいのも事実です.このような理由で心理的リアクタンスを経済学の立場から捉えなおせないか,という発想に至ったのです.

私が神戸大学の宮川栄一先生と行った研究 (Kumashiro and Miyagawa, 2017) では,上記の心理学で定説とされている説明から離れ.親や先生,上司のような「アドバイザー」と,子供や学生,部下のような「選択者」の間の駆け引きをゲーム理論を使って分析しました.ゲーム理論というのは人と人との対立関係や協調関係などを数学的に分析するためのツールです.

この研究の特徴は,選択者はアドバイザーからどのように見られているかに関心があることをモデルに取り入れた点です.自分で正しい判断ができるということをアドバイザーに見せつけたいという気持ちを持っているというイメージです.

いつでもアドバイザーに言われる通りに行動しているとまだ一人前ではないと見られるかもしれないので,アドバイザーの指示に反する行動をとる動機が生まれます.一方,いつでもアドバイザーに反した行動を取っていると,大した考えもないのにただ反発しているだけだとみなされるかもしれませんし,自分にも不利益な誤った行動を取りやすくなってしまいます.

この研究では,従ったほうが良いときには従い,ここぞというときには抵抗するといった行動プランを選択者が選ぶ,すなわち心理的リアクタンスが発生する条件を調べました.

まだ改善が必要な部分もありますが,この研究が進むことによって不要な抵抗によって誤った選択をさせないような動機づけの方法にヒントが得られると考えています.なお,この研究については一般向けの雑誌に解説記事を寄稿しています(熊代, 2020).

 

経済学と言うとお金の学問という印象が強いと思いますが,実はこのような「選択」に関わることは全て経済学の対象になります.私のゼミでは,一見あいまいな人の行動や心理を数学的に表現することで,身の回りや社会の出来事を厳密に,明確に捉えることができたら面白いかも,と思える人を特に歓迎します.興味のある人はぜひ岡山商科大学経済学部へお越しください.

(経済学科 熊代)

 

参考文献

J W Brehm, A theory of psychological reactance, New York: Academic Press, 1966.

Kumashiro and Miyagawa, Economic Analysis of Psychological Reactance, Discussion Paper No. 1712, Graduate School of Economics, Kobe University, 2017.

熊代和樹,禁止されるとしたくなる「リアクタンス」の経済学,週刊東洋経済,2020年3月28日号

【経済学科の研究紹介】東南アジアの歴史と経済発展

今回は教員の研究紹介ということで、私が何を研究しているのかについて簡単に話したいと思います。岡山商科大学経済学部の池田昌弘です。

私の研究分野はアジア経済史になります。現在は20世紀前半の東南アジア米貿易やベトナムの米生産・流通を対象としております。この時代の東南アジアは、ヨーロッパやアメリカにより植民地支配を受けていました。私が高校生だった頃、世界史の教科書では支配と現地の人々への抑圧のことが中心に書かれていたと記憶しております。

しかし経済的な側面を見てみると、貿易が急速に拡大し、ヒト・モノの交流が盛んになった時期でもあり、地域によっては一人当たりの所得水準が向上した時代でもあります。当時の経済中心地の写真を見てみると、意外にも大きな建物が並んでいることに驚かれる方もいらっしゃるかと思います(もしかしたらこのあたり、現在の教科書では記述されているかもしれませんね)。

 

写真1:1880年頃サイゴン(現ホーチミン市)のコンチネンタルホテル

[出典:https://www.historichotelsthenandnow.com/continentalsaigon.html]

 

その中でも人々の生存に欠かせない米の流れを見ることで、当時の東南アジア(特にベトナム)経済がどのように発展(または停滞)したのかを明らかにすることが、私の研究テーマになります。ベトナムについて言うと、実はこのテーマは経済だけでなく反植民地運動にも密接に関わるため、当時の社会やジャーナリズム、さらには後々の独立戦争にも繋がるテーマになります。

現在の東南アジアは経済発展が著しい地域になります。経済の活発さはメディアを通じてもわかるのではないでしょうか。また、発展とともに日本との関係も非常に深くなってきています。コンビニではベトナム人の方々が対応する光景をよく見ますし、旅行ではバリ、セブ、プーケットといった有名なリゾート先を思い浮かべることができます。

ベトナムでも都市化が急速に進み、植民地時代の建物と併存して高層ビルがたくさん建設されています。

 

写真2:現在のコンチネンタルホテル(ホーチミン市中心地に立地)

[出典:写真1に同じ]

写真3:ホーチミン市の夜景

[出典:The voice of Vietnam(https://vovworld.vn/ja-JP)]

こうした人の移動や観光の賑わいは、関係性という意味において、我々と東南アジアの国々が経済的に近づいてきている様子を示しているのではないでしょうか。こうした「繋がり」を長期的な視点から見直すことで、現在の東南アジア諸国の社会経済がどのように形成されてきたのかを深く理解できればと考えています。

研究では歴史史料を読み込んだりデータを活用したりしていますが、こうした研究活動やその成果の一部は商大の講義からも垣間見ることができます。現在、私は研究と関連した下記の講義を担当しております。

「東南アジアの歴史と社会」、「アジア経済分析」、「開発政策」

 

漠然とアジアについてもっと知りたい、東南アジアってどのような地域なのだろう、と思った方がいらっしゃいましたら、ぜひ岡山商科大学へのオープンキャンパスに参加し、受験を検討していただけたらと思います。

また、今後は教員の研究紹介が定期的に更新されるかと思います。気になった分野やテーマが今後でてくるかもしれません。高校生や保護者の皆様には、今後とも長い目で我々のブログとお付き合いをしていただけますと幸いです。

(経済学部 池田)

【経営学科の研究紹介】公認会計士 vs 税理士

 「国際会計論」、「連結会計論」、「会計監査論」、「簿記論」などの科目を担当している経営学部経営学科の陶です。私の研究課題の1つである「会計基準」はやや堅苦しくて難しい感じがします。

 本日はもう1つの研究課題である「会計実務」について、皆さんには比較的馴染みのある会計系の職業について紹介します。一度は聞いたことがあると思いますが、日本における会計関連の職業には「公認会計士」と「税理士」があります。どちらも専門職で人気があります。しかし、どちらの職業も難関の試験に合格しなければその職業に就くことができません。

 以下では受験資格や試験科目、資格取得、そして仕事の内容について、両者を比較してみましょう。
(下線を引いたところは大学生の皆さんにとってはメリットがある部分)

 

公認会計士 vs 税理士

項目 公認会計士 税理士
主な受験資格の概要(高校生や大学生の皆さんに関係があるもののみ) 年齢・学歴などの制限はなし ・日商簿記検定試験1級合格者、全経簿記能力検定試験上級合格者
・大学3年生以上で一定の成績を得ていれば、上記の試験に合格していなくても税理士試験を受験することができる。
試験科目 短答式試験に合格後、論文式試験を受けられる。
・短答式試験は4科目、論文式試験の科目は必須の4科目に選択科目1科目を加えた計5科目。
*短答試験は一度に全ての科目を合格する必要がある。論文試験には科目合格の制度がある(科目合格は2年間のみ有効)
*一定の条件を満たす場合(会計専門職大学院での学位取得など)、一部の試験が免除される制度がある。
11科目から5科目を選択。科目単位で合格を認定する「科目合格制」が導入されているため、必ずしも一度に5科目を合格する必要はない。
*一定の条件を満たす場合(大学院での学位取得など)一部の試験が免除される制度がある。
資格取得 試験合格後2年以上業務補助を行い、一定期間(基本3年)の実務補習(補習期間中に計10回の考査を受かる必要がある)を受けて、修了考査(5科目計12時間)に合格する必要がある。 試験に合格する以外に、関連する分野での2年以上の実務経験が必要。実務経験は試験合格前でも認められるため、試験勉強中に実務経験を積むこともできる。
独占業務

・監査業務
企業が作成した財務諸表が適正であるかどうかを、第三者の立場から評価する業務

公認会計士は、大きく分けて、財務諸表監査・内部統制監査・コンサルティング(MAS)・IFRS(国際財務報告基準)関連業務を担っている。
*ここでは私の研究課題である「会計基準」との関係が深い。

・税務代理
納税者の代わりに税務署等への申告・申請を行い、税務調査に立ち会い、納税者の代わりに税務調査の対応を行ったりする業務
・税務書類の作成
税務署に提出する届出書を納税者に代わって作成したり、提出したりする業務
・税務相談
税金の計算や必要な手続きといった、税務の相談に応じる業務

 

 いかがでしょう。どちらの試験も大変かもしれませんが、前述のように仕事の内容は魅力的ですし、令和元年に厚生労働省が行った「賃金構造基本統計調査」をもとに計算した公認会計士及び税理士の平均年収は683万5,500円で、日本の産業全体の平均年収500万6,900円に比べると大きく上回っています。この2点を考えると頑張って受けてみる価値があると思います。

 また、たとえ将来的には公認会計士や税理士の定型業務である簡単な仕訳・入力作業、記帳代行、税金計算などの記録や計算の業務をAIが行うようになったとしても、経営コンサルタント、アドバイザリー業務、税務相談などの、専門的な知識を使ってそれぞれのケースに応じた解決策を考え、判断する必要がある業務(非定型業務)はやはり人間が行う必要があるので、すぐにAIに代替される可能性は低いと思います。

 興味のある方はぜひ「簿記論」から会計分野の勉強を始め、少しずつ会計と税務の世界に入ってみて下さい。

(経営学科 陶)

 

【経済学科の研究紹介】ビッグデータのリスク評価の研究

 1996年度に大きな研究プロジェクトがスタートしました。国が調査した官庁統計データを,生のデータに近い形式で安全に公開するためには「どのような秘匿方法が必要か」,そしてそのようなデータには「どのような新しい使い方があるか」,などを研究するために全国から著名な研究者が集められました。公開したデータの安全性を測る「リスク評価」と呼ばれる研究についてもいくつかの研究グループが組織され,そのうちの一つに私も誘っていただきました。グループの代表者は,当時,東京大学大学院におられた竹村彰通教授でした。現在は滋賀大学データサイエンス学部長をされています。

 

 研究の内容を少し紹介しましょう。次のデータをご覧ください。

氏名 年代 性別 年収
A 20代 女性 300万円
B 20代 女性 400万円
C 30代 女性 350万円
D 40代 女性 500万円
E 50代 女性 700万円
F 20代 男性 300万円
G 30代 男性 300万円
H 30代 男性 450万円
I 40代 男性 400万円
J 40代 男性 600万円

A~Jの10人について,年代,性別,年収が書かれていますが,この表から氏名を消去して公表するとします。Sさんはこの10人の年代と性別の2項目の情報を知っていますが年収は知りません。公表されたデータでは,AさんとBさんは20代女性という同じ組み合わせで見分けがつきませんが,Cさんは他に同じ組み合わせがいないため,年収350万円ということがSさんに知られてしまいます。このように組み合わせが他人と違うことをユニークと呼びますが,この場合4人がユニークとなります。

 

ただ,このデータが100人から選ばれた10人のものであれば,話が難しくなります。Sさんが100人全員について2項目の情報を持っていても,どの10人が選ばれたかが分からない場合,Cさんと同じ組み合わせが100人の中で他に何人いるかを推測しなければ,ユニークかどうかは分かりません。現実の問題では,上の例の10人,100人,2項目の代わりに,10万人,1億人,10項目以上のようなビッグデータを扱うことになり,その意味でもかなり手強い問題となります。

 

国内では数理的なモデルを使って推測する方法が主流で,世界の中でもトップクラスの研究を続けています。私もモデルの研究をしていた時期もありますが,最近はモデルを使わないノンパラメトリック法を使うことが多くなりました。世界的にもほとんど研究者がいない分野です。この方法では推測がやや不安定で,しかも計算するのに時間もかかりますが,適用範囲が広いのがメリットです。

 

研究では研究者同士の情報交換も大切です。科学研究費補助金の代表者を何度か務めたこともあり,2006年度からはこの分野の研究者や,総務省,企業などの実務者も参加する研究集会を主催しています。不開催の年もありましたが,今年度は通算14回目になる研究集会を2日間の日程でオンライン開催しました。時代とともに公開の対象となるデータも変化し,地理データ,移動履歴データ,医療情報データ,ゲノムデータなどの様々なビッグデータも扱うようになりました。研究の意義もさらに大きくなっているように思います。

 

(経済学部 佐井)

商大論叢57巻1号が岡山商科大学機関リポジトリにて公開されました

本学の紀要である商大論叢57巻1号が岡山商科大学機関リポジトリにて公開されました。

 

 

【経営学科の研究紹介】「モノづくり」の知的生産性革新とコンセプト創出

 経営学部の門脇一彦です。経営学には製造業の「モノづくり」を考える、技術経営(MOT:Management Of Technology)と呼ばれる研究領域があります。モノづくりは、「研究・製品設計・工程設計・調達・品質管理・製造」といった複数のステップが、様々な組織と構成員の協働で実践されますが、活動を如何に効率的に短期間で進め、最大の成果を生み出すかを考えるのがMOTの研究です。製造業(工場)は技術人材(理系)が頑張っている印象が強いですが、実際は多くの経営学を習得した人たちが活動の中心で活躍しています。

 私たちが普段の生活でお世話になる食品や家電といった商品は、「顧客満足を高める価値つくり」の作業によって考えられ、その考えが物質(原材料)に転写されて具現化され効果を発揮してくれます。工場のモノづくりの最上流が、「商品コンセプトつくり」という、顧客に与える価値を考える作業で、私たち経営学の力が発揮される領域です。

 1年生の教養演習活動(ゼミ)では、「商品コンセプトつくり」を体験的に実施して、次年度以降の学修活動の参考と、コミュニケーション能力の育成を図っています。

 活動はゼミ生が2チームに分かれ、6ステップで毎週少しずつコンセプトを練り上げ、そして検証活動をおこない、最後は発表会で双方の活動を評価します。彼らの活動を見ると、一番最初のコンセプト案の「小さな切っ掛け」を探すことに非常に苦労していました。ゼロの状態から何かを生み出すことの苦しさは、これまでの学生生活ではあまり経験していないことですが、大学生から以降は、自分で発想して「真っ白なキャンパスに自分で絵を描く能力」がとても重要になりますので、良い経験になったと思います。

 商品コンセプトのお題は、学生生活をアップデートする楽しい商品を考えることです。目標が非常に曖昧で手段の自由度も広いために、最初は頭を抱えて悩んでいましたが、切っ掛けを見出した後は、チーム内で「ワイワイガヤガヤ」と会話が進み、とても楽しく活動を進めています。

 チーム毎に自分たちの好きな方法で議論を進め、それを磨き挙げています。彼らにお願いしたのは「全員参加」で、誰一人黙って傍観するメンバーを作らず、全員の協働によってゴールすることをお願いしていましたが、心配を払拭し一度動き出すと全員一丸となって議論し、それぞれの個性が色々な形でにじみ出ていました。


 Googleフォームを活用した質問票も完成して、現在、家族や友人にアンケートを取る活動を実施中です。経営学では、社会調査(定量)やフィールドワーク(定性)は重要な活動で、その入門をこの活動で体験して、今後の学修の基礎固めになればとおもいます。

(経営学科 門脇)

【研究実績】
・「製品開発プロセスにおけるICTを活用した生産性向上」
・「業務改革の実践を阻害するコンフリクトの発生要因と解決」
・「技術人材の育成とナレッジマネジメント」
・「医療サービスマネジメント向上を支援するICT活用」

 

商大論叢56巻3号が岡山商科大学機関リポジトリにて公開されました

本学の紀要である商大論叢56巻3号が岡山商科大学機関リポジトリにて公開されました。

〈経済学部通信〉The Credibility Revolution(信頼性革命)

今回は三谷先生にご寄稿いただきました。


今年のノーベル経済学賞(正式にはアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞)は、デービッド・カードとヨシュア・アングリスト、グイド・インベンスの3氏に授与されることとなった。いずれもアメリカの経済学者である。経済学における「自然実験」を使った実証研究及びその分析手法の研究が評価された。

経済学では従来理論研究が高く評価され、実証研究は一段低く見られる傾向があった。しかし、1990年代頃から多くのすぐれた実証研究が発表されるようになり、状況が一変している。その背景にはIT化の進展等により質の高いデータが蓄積されて来ていることもあるが、それよりも経済社会現象の因果関係を実証的に明らかにする革新的な手法が用いられるようになったこと(信頼性革命)が大きい(Angrist and Pischke (2010))。「自然実験」もそうした手法のひとつである。

経済学では自然科学のように実験をすることができない。実験ができる場合でも政治的倫理的な問題があって実施できないことが多い。従来の実証研究では、代わりに高度な統計的手法を用いて他の要因をできるだけコントロールし、調べたい要因と結果の間の因果関係を明らかにしようとした。しかし、計量モデルが複雑化し、コントロールも十分でなく、信頼性が必ずしも高くなかった。一方、経済社会現象には歴史の偶然によって、あたかも研究者が行いたいような実験が行われるのと同じ状況が生まれることがあり、それを「自然実験」として利用できる場合がある。

「自然実験」を利用した例として最低賃金に関するカードとクルーガーの研究が興味深い(Card and Krueger (1994))。最低賃金は法的にそれを下回る賃金で労働者を働かせてはならない最低の賃金である。最低賃金をめぐる議論では、最低賃金を引き上げると若年労働者や不熟練労働者の雇用が減少するかどうかが大きな論点である。理論的にはどちらもありうる。労働市場が完全競争であれば、最低賃金の引き上げは雇用を減少させる。一方、買い手独占(労働市場に企業が一社しかない場合)であれば雇用を増加させる。かつては労働経済学者や政策担当者の大半は最低賃金引き上げが雇用に負の影響をもたらすという説を支持していた。

アメリカでは州ごとに異なる最低賃金が設定されることがある。ニュージャージー州とペンシルベニア州は隣接しており、経済構造も似通っている。1992年にニュージャージー州の最低賃金(時給)は4.25ドルから5.05ドルへと80セント引き上げられたが、ペンシルベニア州では4.25ドルのままで変わらなかった。カード達はこの出来事を「自然実験」ととらえて最低賃金引き上げが雇用に与える影響を分析した。最低賃金の引き上げ前と引き上げ後の2時点におけるファーストフード店で働く労働者の数(雇用)を調べた。そして、これらふたつの州における雇用の増減を比較した。すると、最低賃金を引き上げたニュージャージー州の雇用の変化(=2時点間の雇用の差)から最低賃金を据え置いたペンシルベニア州の雇用の変化(=同じ2時点間の雇用の差)を差し引いた「差の差」(=相対的な雇用の変化)がプラスであった(表1)。ペンシルベニア州での雇用の変化は最低賃金とは無関係な景気変動などの他の要因によるものであり、これらの要因は経済構造のよく似たニュージャージー州の雇用にもほぼ同様な影響を与えたと考えられる。したがって、上記の結果は、最低賃金引き上げ以外の要因の影響を取り除いて、純粋に最低賃金引き上げが雇用を増やしたという因果関係を示している。

表1 雇用者数(1店舗当たり平均、フルタイム換算)   (単位:人)

 

ニュージャージー州

(最低賃金引上げ)

ペンシルベニア州

(最低賃金据え置き)

事前(1992年3月)

20.4

23.3

事後(1992年12月)

21

21.2

△ (事前と事後の差)

0.6

-2.1

△△(差の差)

2.7

 
出所)Card and Krueger (1994).
 

この研究は最低賃金の引き上げが不熟練労働者の雇用に負の影響を与えるという「常識」をみごとに打ち破ったという意味で大変重要である。そして、その後の最低賃金をめぐる議論に大きな影響を与えた。

「自然実験」を用いた分析は簡明で強力な手法であるが、「自然実験」自体を見つけることはたやすいことではない。しかし、このような革新的な手法を用いた実証研究(信頼性革命)は様々な経済学の分野、とりわけ労働経済学や教育経済学、開発経済学[i]などで大きな成果を上げている。そして、経済学が単なる机上の空論ではなく、実際に人々の暮らしをよくするための実践的な学問としての役割を果たすことに寄与している。

ちなみに、岡山商科大学では経済学部の経済データサイエンスコースの科目を中心に、実証分析の方法やデータの扱い方を楽しく学ぶことができる講義や演習が多数用意されている。カム・カム・エヴリバディ!

(経済学部 三谷)

【参考文献】

Angrist, J., D. and J.-S. Pischke (2010),”The Credibility Revolution in Empirical Economics: How Better Research Design is Taking the Con out of Econometrics,” Journal of Economic Perspectives, Volume 24, Number 2, Pages 3–30.

Card, D. and A. B. Krueger (1994), Myth and measurement: the new economics of the minimum wage, Princeton University Press.

アビジット・バナジー==エステール・デュフロ (2012)『貧乏人の経済学―もういちど貧困問題を根っこから考える』山形浩生訳、みすず書房.


[i] アビジット・バナジーとエステール・デュフロは主に「実験」を用いた途上国の対貧困政策の実証研究で、2019年のノーベル経済学賞を受賞した(アビジット・バナジー==エステール・デュフロ (2012))。

【法学部の研究紹介】比較 ―日本法と韓国法を比較するとは!?―

在外研究を終えて帰国された鬼頭先生からご寄稿いただきました。

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私たちは,日々の生活の中で,様々なことを「比較」しながら,生活を送っています。

たとえば,何かを購入する際に,A社とB社の製品は,何が「同じ」で何が「違う」のかと,「比較」をしながら,商品を購入した経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

私たちは,「比較」をすることで,比較の対象となったものに対する理解を深めていると言えそうです。

このことは,日々の生活に限らず,大学で行われている研究にも当てはまります。

私は,「日本法」を「韓国法」と「比較」する研究を日本及び韓国の研究者や実務家の方々と一緒に行っています。

(一枚目の写真は,私が2020年9月から2021年8月まで滞在していた韓国ソウル大学校法学研究所で韓国の先生方の前で,韓国語で発表を行っている様子です。)

(二枚目の写真は,私と一緒に約6年間,韓国民法のことを研究して下さっている,「韓国民法研究会」のメンバーとの研究会の様子です)。

日本法と韓国法は,何が「同じ」で何が「違う」のかを「比較」することを通じて,今まで知らなかった韓国法について深く知ることができることはもちろん,それと同時に,今まで気づかなかったあるいは深く考えて来なかった日本法の新たな一面も知ることができます。

この意味で,「法の比較」は,「新たな知識」と「常識に対する疑い」を同時に与えてくれるものではないかと私は考えています。

岡山商科大学法学部で,一緒に様々なことを学んで参りましょう。

(法学部:鬼頭)