〈経済学部通信〉商大を起点に吉備路をサイクリング

今回は3月に本学をご退職された有利先生にご寄稿いただきました。

(2022年6月9日、一部の文章と写真を改訂しました。)


岡山商大から少し離れると、自然も、古代からの文化も豊かであり、それらに触れることが可能である。商大の北側にある山が烏山、その右側が半田山。インターネットで探してみると、古代の山陽道はその間を通り、津高の津波井に出ていたらしい(別説もある)。その後、西坂が開拓され烏山の南麓を通ったとのこと。

商大の近くに住んでいたころ、散歩は、まず商大から笹が瀬川に出て、自動車の来ない堤防の上を西に向かい一宮高校まで歩き(ここまではサイクリングと同じ道)、その先を右折して楢津の集落内に出る。そこで見上げるとお城(久世建設)があるが、そこへ登る手前の十字路を右折して集落の中の道を商大の方に歩くと左手に若宮八幡宮がある。神社まで、横の車道を駆け上がると、最後は息が上がり、ちょうど手頃な運動になる。さらに、商大に向けて「首部(こうべ)」の集落の中を戻ってくると、 左手奥に白山神社があり、そこには「首塚」がある(写真1、木の葉の間に商大の建物も)。ただし、以前は横に立て札があり、次のように記されていた。

「首塚の伝承は
一 日本武尊が穴の海(過去の瀬戸内海)の悪神を征伐した首
二 木曽義仲が笹ケ瀬合戦で滅ぼした妹尾兼康の首
三 建武三年福山合戦での足利直義軍による大江田(オイダ)氏経軍の首
四 天正七年毛利宇喜多の戦いでの、辛川合戦の首
五 「備中国吉備津宮勧進帳」の文中の吉備津彦命が退治した鬼の首(温羅)
等諸説があり、村名もこれらの事にちなんで首部(こうべ)と成った。
一宮地域活性化推進委員会  」

このあたりが古代から戦場であったという歴史を感じることができたが、残念ながら、現在は撤去され、上記の説「五」だけになっている(温羅はこの地を豊かな米どころにしたということで「米神」)。まさか、掘り起こして鬼の首を確認できたわけでもないだろう。商大まで戻ると、所要時間30分位でちょうどよい散歩コースである。ゼミ生とも、年1回くらい訪れた。それにしても、このおどろおどろしい地名がよく残ってきたものである。

写真1 白山神社の首塚

次に、サイクリングコース。変速機付きの「軽快車」は、私の若いころは憧れであっても手にすることはできなかった。例えていえば、ママチャリを小型の乗用車とすると、レーシングカーに乗るに近い感覚であった。しかし、約10年余り前、憧れの24段サイクリング用自転車を購入した。さすがにドロップハンドルは無理なので、クロスハンドルにした。私の身長でも可能で、値段が手ごろかつ重量が9キログラム程度の軽い、1年落ちのジャイアント製(有名な台湾メーカー)があり、即購入した。

 

写真2 商大正門前

岡山には、整備された専用のサイクリングロードが何本かある(https://www.okayama-kanko.jp/hareiro-cycling/)。そのうち、運動公園から総社・国分寺に向かう道が商大の近くを通っている。4月初旬の晴れた日、14時20分に商大を出発。野球部の練習場の横を抜け、51号線の下をくぐって笹が瀬川の北側の堤防を進むと、約5分で「東楢津自転車歩道橋」に出る。ここで運動公園からの吉備路サイクリング道路に入る。あとは路上に描かれた青い矢印に従って行けば良いだけである。かなり前の出来事だが、土曜日昼にサイクリングに出かけたところ、この橋の手前の用水に男性高齢者がたった今落ちたと、犬の散歩中の女性から話しかけられた。用水は、幸い水量は少ないものの溝自体は結構深い。ちょうど一宮高校の部活帰りの諸君が大勢通りかかったので、引き上げを頼むとともに救急車に来てもらった。彼らはてきぱきと行動し、助け上げてくれた。おかげで、落ちた男性は病院に運ばれたが無事だったと聞いた。私は何をしたか?!。堤防の上で無能な指揮官よろしく口だけでただ眺めていた。また、後日、山陽新聞に匿名投書して高校生の活躍を記事にしてもらった(実はメールアドレスでバレてしまった)。

 

写真3 サイクリング道路へ 

写真4 吉備路自転車道全体

一宮高校の横を通って、国道180号を跨ぐ歩道橋を渡り、ゴルフ練習場のところで笹が瀬川と別れる。以前は、ゴルフクラブのドライバーだと正面のネットの上の方に当たったが、今はそもそもネットまで届くかどうかだろう。その先の、市の一宮浄化センターをだいたい14時40分ころに通過。小さい橋を渡って右折。ここでは、ヌートリアをよく見かけた。最初は、絶滅した日本カワウソがいるのか?と驚いたが違った。今もたくさんいるのだろう。用水に沿って5分くらい進むと左折の標識。堤防からの急な坂を下りるとすぐにJR吉備線の踏切。これを越えて吉備線に沿った道へ右折して入るとすぐに吉備津彦神社の鳥居。ここまでの所要時間は35分間程度。

 

写真5、6 吉備津彦神社

 

今回は、備前一宮駅前にある古民家カフェ「はこきび」によらず、神社を参拝し(神社の紹介は省略)5分程度で出発。田んぼの中の用水に沿って進み、いったん一般車道に出て鼻ぐり塚の前を通過し、吉備津神社へ。15時20分頃に到着。ここに来ると、必ず門前の食堂兼みやげ物屋の店頭で、夏は冷たい・冬は暖かい甘酒(ビン詰め)を飲む。今回は石段下の鳥居の前で参拝して出発。なお、吉備津神社が風格を見せる写真スポットは、広い駐車場にある犬養毅の銅像あたり。ただ、以前より木々が成長して建物が隠れかげんになってきた。吉備津神社出発が15時30分。

 

写真7、8 吉備津神社

 

自転車道に従ってゆくと、天皇休憩地で足守川に出る。実は、途中で矢印を見失い、少し遠回りしてしまった。、ここへの到着は15時45分。次いで鯉喰神社へ15時50分着。さらに、造山古墳を左手に見ながら進み、16時15分、国分寺へ到着。五重塔と周囲の景観は見事という他はない(国分寺の紹介は省略)。今回はここを終着点にした。片道20㎞程度、途中で寄り道をしたため商大を出発してから2時間弱だった。この道程の近傍には、数多くの古代の遺跡がある。前述の神社の他に、楯築遺跡(弥生後期)、鯉喰墳丘墓(温羅伝説:鵜の吉備津彦が鯉の温羅を捕捉)、造山古墳(県下最大、全国で4番目の大きさの前方後円墳)、こうもり塚古墳(県下最大の横穴式石室)、これらの周囲にある数多くの古墳群。

 

写真9 造山古墳

写真10 国分寺

岡山商大を起点に、さらに、足守川を遡って秀吉の水攻めで有名な備中高松城跡、健脚なら鬼ノ城方面、一方、足守川と笹が瀬川の合流地点からさらに南下して岡南飛行場方面へも行くことができる。延々とアパートや住宅が続く大都会地と違って、岡山は、商大の西側の笹が瀬川を渡れば田園風景であり、その中に多くの歴史遺跡がある。梅雨時と真夏日は控えた方が良いが、たまには、エアコンの車中だけでなく、外の空気を吸うのも良いだろう。自動車との接触や用水への転落に気をつけながら、少しばかりの遠出をお勧めしたい。

なお、すでに絶版になっていて残念だが、『自転車古墳散歩』(吉備人出版2012)という本がある。図書館で見ることができれば、参考にしてほしい。

(岡山商科大学名誉教授 有利隆一)

〈経済学部通信〉対面とオンラインの選択について

今回は星野先生にご寄稿いただきました。


新型コロナウイルスの蔓延により、生活様式は大きく変わったことかと思います。私のまわりでは講義はもちろん、研究活動についても変化がありました。

 

履修者の多い講義では、教室の収容人数の関係上、実際に教室に集まって受講する対面講義と、Zoomを使用したオンラインとを併用したハイブリッド形式の講義を行なっております。これまで履修者の多い科目では対面で参加する履修者数は少なくなる傾向にありましたが、今年度に入り、対面で参加する学生の数は多くなっております。そのためか、最近はまるで教壇に初めて立った時のような緊張感を感じており、何か新鮮な気持ちになります。また、教室での学生の反応を見ながら講義を進めていくことができる点は、やはり対面での講義の重要性を感じております。

 

また、先日の土曜日(5月14日)にオンラインでの学会に参加しました。(私が報告するのではなく、一方的に他の研究者の報告を聞くだけですが。)感染対策の観点からオンライン形式での学会が多いのが現状です。オンラインでの開催の方が参加の障壁はかなり低くなり、参加はしやすいと個人的には感じておりますが、コミュニケーションのとりやすさについては対面の方がより円滑に行うことができるようにも思えます。先日参加した学会は、2日間の開催でしたが、2日目の日曜には対面とオンラインの併用となっており、それぞれのメリットを活かすような工夫がなされておりました。

 

これ以外にも、共同研究などの打ち合わせについては、Zoomを使用したりと情報共有や議論などは格段としやすくなったように思えます。

 

アフターコロナでは、こうした対面とオンラインのメリットとデメリットに対する考え方は、より重要視されるように思えます。

 

いずれにしても、1日も早くコロナウイルス感染症が収束し、対面やオンラインのどちらか一方しか選択できないという状況ではなく、それぞれのメリットデメリットを考慮した上で、最適な選択できるような環境になることを願っています。

(経済学部 星野)

〈経済学部通信〉思いて学ばざれば即ち殆し

今回は三谷先生にご寄稿いただきました。


思いて学ばざれば即(すなわ)ち殆(あやう)し

「(自分ひとりで)考えるだけで(他の人から)学ばなければ危ない。」『論語』

 

コロナ禍も3年目に入っている。この間大学での「学び」にも大きな制約がかかった。オンライン授業を余儀なくされ、部活動にも厳しい制限があった。とりわけ、留学生の中には日本に来たくても来れない状態が長く続いている。感染症対策としてやむなくとられた措置だが、大変残念なことである。

実は半世紀前にも同様なことが起こった。大学紛争である。私は当時学部の2年生であった。「学生ストライキ」で約8カ月もの間授業はなかった。それでも何故か留年もせず、無事進級できた。(中には紛争前に留年覚悟で出国し、シベリア鉄道でスウェーデンに行って皿洗いをして金を貯めてヨーロッパ・中近東・インドを旅行し、帰国してみるとちょうど運よく授業再開に間に合い、留年を免れたという強運の者もいた。)しかし、今から思えば失ったものも多かった気がする。そこで、私の学生時代の経験も踏まえて「学ぶ」ということを考えてみたい。

当時大学は就職のためというよりは学問をするために行くところという意識が強かったように思われる。授業の有無にかかわらずよく勉強した。

私は大学の学生寮に住んでいた。旧制高校の木造教室を改造した寮で9人部屋であった。勉強する部屋は真ん中に石炭の達磨ストーブがひとつあって冬場に暖がとれたが、別室の蚕棚のような寝室には暖房はなく、冬の寒い朝には布団の上にうっすら霜が降りるようなところだった。部屋替えまで1年間一切掃除はしないので汚いこと限りないところであった。部屋替え前には「ストーム」と称して部屋対抗の水かけ合戦があった。酔っぱらった勢いでバケツに水を汲んでかけあうのだが、ある時消防ホースで消火栓の水を使った寮生がいて当然ながら大目玉をくらった。

朝晩の食事が付いていた。週に一度「わらじ」のように大きなトンカツが出るので皆楽しみにしていた。食事は夜10時までに食べないと「残食」となり、他の寮生が食べてよいことになっていた。ストで授業がなくなってから、私は日が傾く頃に起きて夕食をとり、10時過ぎに「残食」を食べて、徹夜で勉強して朝食を食べてから就寝するという夜昼逆の「グリニッジ標準時」で生活をしていた。寮にいると先輩・同輩から色々な話を聞くことができて面白かった。勧められた本をたくさん読んだ。中でも、旧ソ連の盲目の数学者ポントリャーギンの本が面白かった。ドストエフスキーの長編小説も理解度はともかくすべて読んだ。たまに大学へ行ってバリケードの中で行われていた自主ゼミでマルクスやエンゲルスの本も輪読した。都会に出て間もないこともあって「疎外」という言葉に共感した。

「ストライキ」期間中は思うがままに時間をたっぷり使って大著・名著に挑むことができた。しかし、今になって思えばやはり授業がなかったことでややバランスを欠いた勉強の仕方ではなかったかと思う。たとえば、統計学はその後の私の仕事で重要な役割を果たしたのにも拘わらず、若い頃まじめに勉強しなかったことを悔いている。政治学でトクヴィルを勉強したはずだが記憶がない。量子化学も単位はとっているが中身は覚えがない…。要するにスト終了後単位をとるためだけに「一夜漬け」で凌いだに過ぎない。

「学ぶ」ということは動機付けと教える人への敬意を必要とする。また、とりわけ教養課程の授業は多くの未知の学問との出会いの場である。その中で先輩・友人との交流や「〇〇先生の謦咳(けいがい)に触れる」という言葉が象徴するような人と人の直接的な交わりが果たす役割は大きい。オンライン授業ではまだまだ置き換えられないように思われる。

(経済学部 三谷)

〈経済学部通信〉商大ワールドカフェ

4 月 10 日,経済学部では新入生対象のイベントとして商大ワールドカフェを開催しました。従来,新入生は市内の合宿所で 1 泊 2 日の合宿を通じて大学生としての心得やスタディスキルを学んだり,友達を増やしたりする機会がありました。しかし新型コロナウイルスの感染拡大によって合宿を行うことができず,友達作りのきっかけがなく悩んでいる学生が多いという状況が続いていました。そこで今年度初の試みとして開催されたのが商大ワールドカフェです。

このイベントは 2 部構成となっており,前半では好みや趣味などの共通点を探しながらお互いを知る,自己紹介ゲームを行いました。

後半が本イベントのメイン,ワールドカフェです。ワールドカフェでは少人数のグループに分かれてテーブルに着き,与えられたテーマについて自分の意見やアイデアを自由に模造紙に書き出します。制限時間が来ると,各テーブルの伝達役を残して違うテーブルへ移動し,前のテーマで何が話し合われたか情報共有をした後新しいテーマについて話し合います。カフェのようなゆったりした雰囲気で自由に話せるのがワールドカフェの醍醐味です。

今回のワールドカフェのテーマは「大学でやりたいこと」「大学でやるべきこと」といった,これから始まる大学生活を有意義にしていくための目標や課題を出し合うものでした。各テーブルを見ていると,出てくる意見はもちろん人それぞれ違いますが,「それがあるならこんなのはどうか」と,他の意見を否定するのではなく深め合うような議論ができているところも多くありました。

出揃ったアイデアから気になるものを付箋に書いて教室の前に貼ってもらうと,勉強や将来の進路に関することや友達とやりたいことなど色々なものが出てきました。今回のイベントを通じて,新入生の皆さんは大学には本当に色々な人が集まっていると感じたのではないでしょうか。それぞれの個性と新しい友人を大切に,充実した 4 年間を送ってくれることを期待しています。

 

このイベントでは受付や司会進行,テーブルの補助などで以下の上級生が活躍してくれました。彼ら,彼女らのサポートのおかげでイベントを円滑に進行することができました。ご協力いただいたみなさん,ありがとうございました。

 

左から,
木村 太陽君
堀田 玲君
寒川 吏久斗君
堀越 未来さん
横山 那伊磨君
山本達也君

(経済学部 熊代和樹)

〈経済学部通信〉「高校生のための心理学講座」を知っていますか?

今回は前田先生にご寄稿いただきました。


 一般教育科目の「こころの科学」を担当している経済学部の前田健一です。こころの科学の授業では、心理学のいろいろな分野を取り上げて解説しています。しかしそれでも、前期15回の授業回数では、カバーしきれないほど、心理学の分野や話題は広範囲にわたっています。そこで、今回は高校では教えない広範囲な心理学の分野や話題を知ってもらうために、「公益社団法人の日本心理学会」が提供している「高校生のための心理学講座YouTube版」をご紹介します。

 「高校生のための心理学講座」は、「心理学は実証に基づく科学的な学問である」ということを専門家がわかりやすく伝えるために、2012年度から始まりました。それ以後、毎年全国各地域の大学で夏休み等に対面方式で開催されてきました。2020年度も全国14大学で開催される予定でしたが、新型コロナウィルス感染症の影響によって延期されました。それ以後現在まで、自宅からでも心理学を楽しんでいただけるようにと、YouTube上で「高校生のための心理学講座」が公開されています(随時追加予定です)。興味のある人は、インターネットの検索欄に「高校生のための心理学講座」と入力した後、「高校生のための心理学講座YouTube版|日本心理学会」を選んでください。

 以下に、日本心理学会からの「高校生のための心理学講座」の案内文と案内資料を示しますので、参照してください。以下のコンテンツ表では15分野ですが、現在の「高校生のための心理学講座YouTube版-YouTube」を見ると、25分野に増加しています。

(経済学部 前田)

詳しい案内は以下のリンクにアクセスしてください

高校生のための心理学講座 案内資料

高校生のための心理学講座 YouTube再生リスト

 皆さんは「心理学」にどのようなイメージをお持ちでしょうか?「こころ」の中で考えていることがわかってしまうちょっと怖いもの、あるいは神秘的で怪しげなもの、と考えている人が多いのではないでしょうか。「高校生のための心理学講座」では、このような「心理学」への誤解を解き、「心理学は実証に基づく科学的な学問である」ということを、専門家がわかりやすくお伝えしています。

 まずは概論の「心理学ってどんな学問?」をご覧ください。心理学がとても広い領域をもっていること、どのような分野があるのかをご説明しています。コンテンツは一応目安となる分野に分類していますので、興味のあるコンテンツを開いてみてください。またコンテンツによっては他の分野の内容も含まれていますので、興味のある分野だけでなく、いろいろ覗いてみてください。

〈経済学部通信〉最近の円安現象について

今回は田中康秀先生にご寄稿いただきました。


皆さんもご承知のように、最近、日本円は米国の通貨に対して減価し続けています。東京外国為替市場では20年ぶりとなる1ドル=126円台のレートをつけたとの報道もありました(2022年4月13日)。もし私がドル資金を持っていたら儲かったなあと思ったりもしたのですが、あいにくドル預金を持っていないので私にはこの点での恩恵は何もありません。しかし、これから米国に行こうとしている年配の夫婦が報道記者に(最近の円安現象について)聞かれて、「困りましたねえ!もっと(ドルに)交換しておいた方がよいですかね!」と言っていたのが印象的でした。

現在の円安現象が生じているのにはいくつかの要因が考えられますが、重要な1つの要因は日米間の金利差が影響しているといわれます。ウクライナ情勢などを受けてアメリカの消費者物価は上昇し、最近8.5%を記録したとの報道がありました(2022年4月12日)。そのため、FRB(アメリカの中央銀行)はそれに対抗するため金利の引き上げを模索していますが、一方、日本は目標インフレ率2%を達成するために金融緩和政策を続けるとの日銀総裁の発言をニュースは伝えています。結果として、ゼロ金利政策を堅持している日本との金利差はさらに拡大することが予想され、それが円安現象に拍車をかける可能性があります。もっとも、日本においても、ウクライナ情勢による世界の動きや円安による輸入価格の上昇などにより、最近ではガソリン価格をはじめとして、生活用品全般の値段が上がりつつあります。こんな中で、日本の金融政策は今後どうあるべきと皆さんは考えるでしょうか。円高・円安のメリット・デメリットを含めて経済の仕組みを考える具体的機会の一つといえるでしょう。

(経済は生きているので、この拙文が掲載されたときには状況が変わっている場合があることをお断りしておきます。)

 

(経済学部 田中康秀)

〈経済学部通信〉大学と楷の木

今回は佐藤先生にご寄稿いただきました。


 岡山商科大学の「井尻記念館」の正面玄関前に赤く紅葉した【楷(かい)の木】」が植樹されています。「井尻記念館」は、その名の通り、「初代・井尻学長のご功績を記念して建設された」建物です。

 では、この建物の正面玄関前に、なぜ「楷の木」が植樹されているのでしょう か?

 今から2500年前、儒学の祖、孔子(紀元前552~479)が亡くなりました。孔子の墓所のまわりに、弟子達が中国全土から集めた美しい木々を植樹したそうです。これら木々の中で、「楷の木」が世代を超えて受け継がれ、強く美しい大樹に育ちました。

 その後、「楷の木」は科挙(中国の隋の時代から清の時代までの官僚登用試験)の合格祈願木となり、歴代の文人が自宅に「楷の木」を植えたことから『学問の木』とも言われるようになったそうです。

 また、寛文10(1670) 岡山藩主池田光政が津田永忠に命じ閑谷学校を創立しています(現存する世界最古の庶民のための公立学校です)。現在の「岡山県立和気閑谷高等学校」です。

 

 このような歴史を踏まえ、学生の皆さんには、一生懸命「学問に励んで欲しい」という大学からの願いを込めて、「楷の木」がキャンパス内に植樹されているのです。皆さんも、ぜひ、他大学を訪問したときには、キャンパス内に「楷の木」が植樹されているかどうかを探してみてください。

閑谷学校の楷の木(下記アドレスより参照ください)

https://www.nihon-kankou.or.jp/okayama/332119/detail/33211ac2102045086

  秋には美しく紅葉する「楷の木」(筆者撮影)

(経済学部 佐藤豊信)

〈経済学部通信〉日日是好日

今回は韓先生にご寄稿いただきました。


なんと、目覚まし時計のアラームを4段階全部聞き逃して、ようやく目が覚めた朝だった。

カーテンを開けたら、重そうに暗く垂れている空。いよいよ雪かと思ったら、雨!…

もうじき春節なのだ。極寒中の実家を大掃除やらごちそうやらの準備で忙しく駆け回っている母の姿が脳裏に思い浮かびつつ、熱いお茶を手にボウッと放心していた。

「ふるさとは遠きにありて思ふもの…」って、こういうことかぁ!

 

おっ!目に留まった。今日のカレンダーは何もない日!

やった、のんびりしていられるんだ!

小さな幸せを覚えた自分と、そんな自分がなぜか愛おしくて愛おしくて…

 

実は、この冬、一つ実践していることがあるのだ。

「家の中をつとめてハダシで動く」こと。

冷たい床から伝わってくる、その冴え冴えとした感触が、じょじょにじょじょにこの自分を芯から起こしてくれる。足のつま先から復活していく何とも言えない躍動と活力が身体の隅々まで行き渡り、今を確かに歩いている、その一瞬一瞬の実感というようなもの。ハマっている。

 

お茶の次は、太極拳だ。24式はワンセットで5分49秒―半熟卵がちょうどいい具合にゆで上がる時間―齧りたてだったけれども、日を追うごとにそれらしくなってきた。曲が終わったら、私は今日もまた新しい自分を手に入れた。

 

ふと、テレビから恵方巻のコマーシャルが流れてきた。世の中はいつも先を急いでいるのだ。

この記事が載った頃には五月人形の出番にでもなったのだろう。ついていけない魂がおいてきぼりにされそうで寂しくてならない。

 

とはいえ、人のこと、世のことはともあれ、せめて自分のことくらいは自分で決めて動きたいものだ。ゴールを目指すことだけに気を取られ、足元をおろそかにしてしまいたくはないのだ。

 

「歳月は人を待たず。」

明日の為に今日があるのではなく、今日はただ今日という唯一無二の存在としてそのひと呼吸ひと呼吸を意識しながら迎えたい。良かれ悪しかれ、二度とない一日だもん。

 

どうか、皆様にも「日日是好日」でありますよう。

(経済学部 韓)

 

寒さに咲く蠟梅―大学中庭

2021年度学術講演会

去る12月14日、岡山商科大学学会主催の学術講演会が行われました。

昨年度は新型コロナウイルス感染拡大により中止となったため、2年ぶりの開催となります。

 

本年度は神戸大学大学院経済学研究科准教授の佐野晋平先生に『子どもの貧困と人的資本政策』という論題でご講演いただきました。感染症対策のため佐野先生にはオンラインで講演していただき、学内の会場で人数制限を設けて視聴するという実施方法になりましたが、ほぼ定員いっぱいまで参加者が集まる盛会となりました。

 

講演の中では主に以下のような論点が説明されました。

  • 日本では低所得者が増加していて所得格差が拡大傾向にある。
  • 特に大人1人世帯での子どもの貧困が諸外国と比べ深刻である。
  • この状況を脱するための一つの方法は教育であり、教育は子ども本人の能力や知識、技能を高めるだけでなく、長期的には社会全体にも重要である。
  • 行政から家計への金銭的な援助は必ずしも学力を高めるのに有効ではない可能性がある。

全体を通して統計データが多く示されており、データを元に現状の分析を行い、政策を考えることの重要さを改めて感じる講演内容でした。講演に参加した学生の皆さんも、データを活用した実証分析がどのようなものなのかイメージが掴めたのではないでしょうか。データを集めて終わりではなく、一歩踏み込んでいろいろな角度から見ることで面白い発見が得られるかもしれません。今後の学習や研究の中で是非取り組んでみてください。

(講演会の様子)

【経済学科の研究紹介】言われるとかえって嫌になる「心理的リアクタンス」の経済学的分析

「開けないで」と言われるとかえって開けたくなった.

「勉強しなさい」と言われるとかえってやる気がなくなった.

みなさんはこのような経験はないでしょうか.

他の人からある行動を指示されることによって,かえって逆の行動を選びたくなることを心理学では心理的リアクタンス (psychological reactance) という現象の一種として考えます.リアクタンスというのは「抵抗」を意味する言葉です.

心理学では脅かされた自由を取り戻そうと試みた結果,心理的リアクタンスが起きると説明しています (例えばBrehm, 1966).つまり,人は自分の行動は自分で自由に選びたいと考えており,自由が制限されそうになると,それに「抵抗」し,逆の行動を選ぶのです.

 

確かにこの理屈で上手く説明できるケースもあるかもしれません.しかし指示を受けたからと言って常に抵抗するわけではありません(万引きをするなと言われたからと言って万引きしたくなるわけではないでしょう)し,誰から指示されるかによって反応が変わることもあるでしょう(先生に言われると従うけど親に言われると抵抗したくなるなど).実際にはもっと複雑な条件が絡んでくるのではないか,というのが研究の出発点でした.

心理学の弁護をしておくと,心理学でも自由が制限されるといつでも心理的リアクタンスが発生すると言っているわけでは勿論ありません.とはいえ心理学での理論は言語による記述が中心であり,数理的な分析が要求される経済学にそのまま応用することがいずれにせよ難しいのも事実です.このような理由で心理的リアクタンスを経済学の立場から捉えなおせないか,という発想に至ったのです.

私が神戸大学の宮川栄一先生と行った研究 (Kumashiro and Miyagawa, 2017) では,上記の心理学で定説とされている説明から離れ.親や先生,上司のような「アドバイザー」と,子供や学生,部下のような「選択者」の間の駆け引きをゲーム理論を使って分析しました.ゲーム理論というのは人と人との対立関係や協調関係などを数学的に分析するためのツールです.

この研究の特徴は,選択者はアドバイザーからどのように見られているかに関心があることをモデルに取り入れた点です.自分で正しい判断ができるということをアドバイザーに見せつけたいという気持ちを持っているというイメージです.

いつでもアドバイザーに言われる通りに行動しているとまだ一人前ではないと見られるかもしれないので,アドバイザーの指示に反する行動をとる動機が生まれます.一方,いつでもアドバイザーに反した行動を取っていると,大した考えもないのにただ反発しているだけだとみなされるかもしれませんし,自分にも不利益な誤った行動を取りやすくなってしまいます.

この研究では,従ったほうが良いときには従い,ここぞというときには抵抗するといった行動プランを選択者が選ぶ,すなわち心理的リアクタンスが発生する条件を調べました.

まだ改善が必要な部分もありますが,この研究が進むことによって不要な抵抗によって誤った選択をさせないような動機づけの方法にヒントが得られると考えています.なお,この研究については一般向けの雑誌に解説記事を寄稿しています(熊代, 2020).

 

経済学と言うとお金の学問という印象が強いと思いますが,実はこのような「選択」に関わることは全て経済学の対象になります.私のゼミでは,一見あいまいな人の行動や心理を数学的に表現することで,身の回りや社会の出来事を厳密に,明確に捉えることができたら面白いかも,と思える人を特に歓迎します.興味のある人はぜひ岡山商科大学経済学部へお越しください.

(経済学科 熊代)

 

参考文献

J W Brehm, A theory of psychological reactance, New York: Academic Press, 1966.

Kumashiro and Miyagawa, Economic Analysis of Psychological Reactance, Discussion Paper No. 1712, Graduate School of Economics, Kobe University, 2017.

熊代和樹,禁止されるとしたくなる「リアクタンス」の経済学,週刊東洋経済,2020年3月28日号