〈経済学部通信〉2024年度 第12回経済学部3年次ゼミ対抗プレゼンテーション大会

2025年1月11日に本学アクティブラーニングルームにて3年次ゼミ対抗プレゼンテーション大会が開催されました。

本大会は研究演習3年(ゼミ)の集大成を報告するため,毎年開催されています。本年度は以下の8チームが参加しました。

  1. 國光類ゼミ「ナッジを活用した食品ロスの削減」
    近年問題となっている食品ロスについて行動科学の視点から説明するとともに,規格外品を活用した商品を大学祭や地域の祭で販売した実績を報告しました。

    國光ゼミの発表
  2. 星野聡志ゼミA「ふるさと納税〜地方創生につながっているのか」
    ふるさと納税の制度に概観し,ふるさと納税による寄付金収入がその地域の暮らしの改善につながっているかを探りました。

    星野ゼミAチームの発表
  3. 星野聡志ゼミB「2030年に向けたエネルギー政策」
    日本におけるエネルギーの自給率やエネルギー効率の改善への取り組みなどについて,過去から現在に至る推移を報告しました。

    星野ゼミBチームの発表
  4. 田中勝次ゼミ「干拓地のキャベツ栽培」
    ゼミ活動として関わっている笠岡市の干拓地における農業について,栽培の状況や直面する問題について紹介しました。

    田中ゼミの発表
  5. 佐井至道ゼミ「自転車に関する道路交通法の改正について」(ビデオ参加)
    昨年11月に行われた道路交通法の改正に注目し,日本や海外の現状について紹介しました。また,本学学生を対象として本改正の認知度に関するアンケートを行った結果を報告しました。
  6. 熊代和樹ゼミA「生成A Iの導入とゲーム」
    競争関係にある二企業がそれぞれ業務に生成AIを取り入れるかどうかの戦略的状況について,ゲーム理論を使って分析した結果を報告しました。

    熊代ゼミAチームの発表
  7. 熊代和樹ゼミB「ダムの放水量調整に関する分析」
    ダムの持つ,水不足への備えという側面と洪水を防ぐ働きという側面に注目し,最適な水量管理について理論的に分析した結果を報告しました。

    熊代ゼミBチームの発表
  8. 熊代和樹ゼミC「ゲーム理論からみるFAの選択」
    度々話題になる野球選手のFA(フリーエージェント)制度について,選手間の競争に注目してゲーム理論の観点から分析した途中経過を報告しました。
熊代ゼミCチームの発表

 

なお,今回の大会開催にあたっては,準備や司会進行を山下賢二ゼミのゼミ生が担当してくれました。

全てのチームの発表後に学生と教員で投票を行い,スライドのデザイン賞,スピーチ賞,総合順位の選定を行いました。受賞チームは以下の通りです。

1位 熊代和樹ゼミBチーム
2位 國光類ゼミ
3位 田中勝次ゼミ
デザイン賞 國光類ゼミ
スピーチ賞 熊代和樹ゼミCチーム
1位 熊代ゼミBチーム
2位 國光ゼミ
 
3位 田中ゼミ
 

スピーチ賞 熊代ゼミC

受賞チームはもちろん惜しくも受賞に至らなかったチームも,各チームが自分たちの定めたテーマについて理論,データ,フィールドスタディといった様々な切り口で深く学び,考えたことについて共有でき,非常に刺激的な大会となりました。

 

(経済学部 熊代和樹)

〈経済学部通信〉英語でレクチャー

今回は三谷直紀先生にご寄稿いただきました。


このたび、本学で初めて英語で労働経済学の講義をする機会を得た。その経験を少しお話ししたい。

実は、私はその昔フランスのオルレアン大学(ジャンヌ・ダルクで有名なオルレアンにある大学)に客員教授として招かれ、フランス語で日本の労働市場について講義をした経験がある。準備は大変であったが、現地の大学生には真剣に講義を聴いてもらった。現地の言葉で直接対話をすることによって、その当時のフランスの学生が持っていた悩みや希望なども聞くことができ、「現地語」の持つコミュニケーション力を実感した。

今回はふたを開けてみると、私の授業を受講してくれた学生は留学生9名+日本人1名の少数精鋭の諸君であった。「現地語」は日本語であり、留学生諸君も流暢に日本語で話ができる。また、学生諸君に受講動機を聞いてみると、日本の労働市場に興味をもっているからという答えが多かった。日本語でやれば日本の労働者の心情など、日本社会の機微にもふれることができよう。ならば、なぜ英語で講義をやる必要があるのであろうか?

テーマは日本の雇用システムの特徴としてよく挙げられる「三種の神器」(すなわち終身雇用、年功賃金及び企業別労働組合)を取り上げた。英米の学者による著作も参考にしたが、やはり日本に対するエキゾチシズムを強調する面がみられた。また、日本の研究者による文献も古いものほど日本特殊論的傾向が強いと感じられた。そこで、今回は、徹底して経済理論と実証データで検証された科学的手法による研究成果のみを講義の対象とすることとした。

今回講義をする上で最も役に立ったのは、アメリカの大学の労働経済学の教科書(特に、ハーバード大学のBorjas教授のLabor Economics)とOECD(経済協力開発機構)の報告書であった。というと、アメリカの労働市場は流動的であることが常識であり、終身雇用などほど遠いのではないか、そのような労働市場を分析したアメリカの教科書がなぜ役に立つのだろう?という疑問が湧くかも知れない。実際、統計データをみるとアメリカは日本に比べて転職率が高く、流動的である。しかし、年齢別にみると、転職率が高いのは主に20歳代の若い層であり、30歳代半ばに入るとアメリカでも転職率が下がり、終身雇用といわれるような状態になる。さらに、アメリカでも年齢とともに賃金が上がる年功賃金は一般的にみられる。こうした終身雇用や年功賃金という研究テーマはアメリカでも1970年代以降盛んに研究された。今日有力な理論仮説とその検証は主にアメリカの研究者によるものである。

日本では企業別労働組合という特殊な労使関係なので、組合の力が弱い、他の先進国は主に産業別労働組合であるから交渉力が強いといった言説がその昔主流であった。しかし、OECDが2010年代半ばに実施した加盟各国に対するアンケート調査によれば、労使の実質的な団体交渉は多くの国で各企業単位で実施されており、企業別労働組合こそが主流であり、産業別労働組合は少数派であることが明らかになった。昔の研究者はきちんと調査した統計を見ておらず、勝手な思い込みが強かった?!

今回私自身もいろいろな知見を得ることができ、勉強になった。それは、英語で教えるという機会があったからである。今日主要な学術的知見は英語で書かれ、世界に広がっている。英語で講義を行ったからこそ、より広い見地から「日本の雇用システム」の理論と実際にせまることができたのではないかと思われる。つまり、「国際共通語」としての英語の力によって、自分勝手な思い込みを廃し、最新の理論や実証研究の成果をより深く話すことができたのではないかと思う。

英語は単に英語圏だけの「現地語」ではなく、「国際共通語」としてこれからますます重要になると考えられる。AIの時代でもそれは変わらないのではないか。真の創造性を生む「逸脱」はまだ機械には無理であろうから。

(経済学部 三谷直紀)

日韓大学生未来フォーラム -ソウル研修-

(財)李煕健韓日交流財団が主催する、「第9回日韓学生未来フォーラム」に本学の学生2名が参加しています。日韓相互理解を目的として、両国の学生29名と関係者10名が集まり、ワークショップや交流会が行われます。2回ある研修のうち、今回は8月30日~9月2日に開催されたソウル研修の体験記を報告します。

ソウル 勤政殿にて
 

丸川真輝帆 (経営学部3年)

 私は社会・文化のワークショップに参加し、日韓ドラマ・映画における社会的メッセージと影響、社会的変化について討論しました。討論会では日本側が質問をし、韓国側が答え両国の意見交換をしました。意見の質や内容が濃く、たくさんのことを学べました。普段、経験することができないことまで経験できすべてが新しく、新鮮でした。すべての日程をみなさんと一緒に過ごし、たくさん交流することができました。

フォーラムに参加したことで留学とは違う、また新しい経験ができたくさんのことを感じました。日韓の社会問題を考えさせられるとてもいい機会になりました。言語が違う中でコミュニケーションをとろうとする皆さんの姿が印象的でした。

次は岡山です。岡山と大阪の日本研修でも頑張りたいです。

日韓の学生交流

臼杵来望(経済学部3年)

ワークショップを通じて、日韓関係の改善策を模索しました。言語を超えて相手の気持ちや意見を汲み取ることができたのは、交流会の大きな収穫でした。日本と韓国は文化的に似ている点が多いです。互いに尊重し合うことが、今後の関係改善において重要だと思いました。

私にとって初めての海外研修でしたが、韓国の学生は温かく迎えてくれました。日本語と韓国語を交えたコミュニケーションは、非常に楽しかったです。3泊4日という短い期間ではありましたが、たくさんの学びと発見がありました。11月には日本研修がありますので、日韓友好に貢献できるように頑張りたいです。

 

ワークショップの様子
 

 

〈経済学部通信〉旅に出てみませんか

 

今回は佐井先生にご寄稿いただきました。


学生の皆さんには,吸収力があり多感な若いうちに「旅に出ては」と勧めています。私自身も旅行が好きで,国内外問わず,いつも出かける機会を探しています。

ただこの夏は学内外の仕事や研究が立て込んで,お盆の期間も含めて机から離れることができず,なかなか旅行らしい旅行もできませんでした。唯一遠出できたのが,8月末の帰省です。お勧めの一つとして,その旅の目的を紹介します。

遅い時期の帰省と思われるかもしれませんが,私の故郷の秋田県大仙市では,8月の最終土曜日に「大曲の花火」と呼ばれる全国花火競技大会が開催されるため,私のような8月末の帰省は珍しくありません。ちなみに大曲というのは合併前の市の名称で,NHK BSでも毎年この地名を用いて生中継が行われています。

大曲の花火

競技大会という名の通り,全国から選抜された28の煙火店が,内閣総理大臣賞や経済産業大臣賞などを目指して競い合う,花火師の方々にとってはプライドをかけた勝負の場となっています。100年以上の歴史があり今年は第96回大会でした。

夕方17:00頃から行われる全国的にも珍しい昼花火の部の後,19:00頃から行われる夜花火の部は,直径30cmほどの10号玉を使った伝統的な芯入割物の部,新しい感覚を取り入れた自由玉の部,そして大曲が発祥の創造花火の部の3部門からなります。創造花火は音楽に合わせて様々な花火を連続して打ち上げるもので,スターマインなどとも呼ばれます。

今年の開催日は8月31日でしたが,超低速で迷走した台風10号の影響で,競技大会を開催するかどうか前日まで大会本部は検討したようです。当日も台風から北に延びる雨雲のために朝から雨が降り続きました。兄夫婦がチケットを購入してくれた雄物川河川敷の会場のテーブル席に向かう時点でも雨は止まず,昼花火を傘の下から見ながらの会場入りになりました。ただ18:00頃から空模様は劇的に回復して夕日が見えるまでになりました。

今年は夜花火の部の直前に,東京ディズニーリゾートのスペシャルドローンショーも行われました。1500機のドローンと花火とのコラボで,おそらく二度と見ることができない一期一会の体験です。実家のすぐ近くで,東京ディズニーリゾートと同じ方のアナウンスが響くその光景は,良い意味で最高の違和感でした。

ドローンショー
ドローンによる”Fantasy Springs” のロゴ

夜花火の部は22:00すぎに終了しました。最後は,たいまつを持った花火師の方々と,ライトやスマホをかざした私たち観客との,雄物川を挟んだエールの交換です。これも「大曲の花火」が発祥とされています。

エールの交換

翌日行われた表彰式では,地元大仙市の小松煙火工業が最優秀賞にあたる内閣総理大臣賞に輝きました。小さい頃であれば小躍りしたところですが,遠くから参加されている花火師の方々にも受賞してほしいと思うのは年齢を重ねたためでしょうか。

「大曲の花火」を旅行の候補として紹介しておきながら,ここで一つお断りです。一晩だけ人口が20倍近くになるイベントのため,近隣の宿泊施設を予約するのは困難です。JRの秋田新幹線のチケットを取るのもまた至難の業です。ツアーも数多くあり,こちらは比較的予約が取りやすいようですが,競技大会が終わってからバスで山形県や岩手県に移動してホテルに宿泊するものが多いようです。

国内外を問わず,小さな街,山や湖一つ一つにもそれぞれ異なる魅力があると思います。ネットで構いませんので検索してみて,インスピレーションを感じたら旅に出る計画を立ててみてはいかがでしょうか。

(経済学部 佐井至道)

〈経済学部通信〉【國光ゼミ】地域行事で食品ロス対策

今回は経済学部國光ゼミの学生さんからのご寄稿です。


8月3日に、津島小学校で開催された「第12回津島はっさく踊り」に参加しました。

 

第12回津島はっさく踊り

私たちは「持続可能な地域づくり」を考え、以下の2つを実施することにしました。

  1. 祭りの力を活用した、社会的課題の解決
  2. 規格外の材料(食べられるけど、サイズ・形などの違いにより流通されない)を使用した食品の販売

規格外の卵を使用して、明石焼きを販売しました。

食品ロスの問題をまとめたポスターへの反響もあり、子どもからお年寄りまで幅広い世代にお買い上げいただきました。津島はっさく踊りを通じて、多くの方に食品ロスを知っていただけたと思います。

屋台の様子
明石焼き
明石焼き(ネギ増し)

10月26日(土)と27日(日)に、本学で開催される「商大祭」でも私たちの特製明石焼きを販売いたします!一般の方にもご来場いただけると、幸いです。

 

(経済学部3年 永岡・浅野・植野)

【経済学部通信】美爆音

今回は芸術担当,吹奏楽部顧問の石原先生にご寄稿いただきました。


 第106回全国高校野球選手権大会は地元岡山学芸館高校や県立大社高校の活躍もありとても感動した夏の甲子園になりましたね。(個人的な感想です。)

 甲子園と言えば数年前、アルプススタンドの様子を伝えるニュースで吹奏楽有名校の音を【美爆音】という表現で伝えて以来よく聞くようになった言葉です。

 【美爆音】って『パワーフルでいい音』かな?マスコミが作り出した褒め言葉なのだとは思いますが・・・

オーケストラ、合唱、吹奏楽など響きを大切にする音楽では、【爆音】は一番出してはいけない音になります。

 私も高校時代に野球応援の経験があり広い屋外の球場で音がちゃんと届いているか?心配し無意識にパワーで音を出し音色や響きに気を配るのを忘れていたことを思い出します。

 応援団の声援や大太鼓とオペラ歌手やオーケストラの大太鼓、どちらも球場では聞こえてくると思いますが、音質において【美音】は気持ちを癒やしてくれますが戦っている選手や応援団の士気を高めることは出来ないと思います。やはり【爆音】ですよね。

 かつてオスマントルコ軍の軍楽隊の音が兵士の士気を高め、相手側を威嚇したという話がありますが、戦いの場では【爆音】が必要な音のです。

 某N高校吹奏楽部はこの【爆音】+全国トップクラスの合奏力をもって甲子園で素晴らしい音楽を響かせました。広い野外での新しいサウンドといってもいいのかな?【美爆音】ただ、屋内のコンサートホールではとても耳障りです。

吹奏楽をやっておられる方は【美音】と【爆音】使い分けられるといいですね。会場や音楽の場面にあった音色、音質を常に意識してほしいと思います。

コンサートホールでは【美爆音】NO!です。

(経済学部 石原憲)

〈経済学部通信〉すべてをよしとする

今回は韓先生にご寄稿いただきました。


これで半期が終わったぁと思ったとたん、体中から力がスウとぬけていく感が…

体温並みの日がつづくせいだけではない

 

人は誰しも自分でありながら、自分だけの存在ではない

誰かの子どもであり、誰かのきょうだいであり、誰かのだれである

 

その誰かのだれに生まれ、引き受けた以上、否応なしにそれを生きるのだ

 

ときにはおもたくて逃げたい

たまにはもう知らないと手放したい…

 

けれど、わたしはいまだにそのそれぞれの自分を頑張っている

 

今のこのわたしを創ってくれている その誰かのだれよ

しんそこの愛を!

 

(経済学部 韓 雲冬)

〈経済学部通信〉欧州の選挙

今回は吉井先生にご寄稿いただきました。


欧州議会選挙

 2024年は世界的に選挙の年だといわれています。その頂点は11月5日のアメリカの大統領選挙ですが、ここでは、フランス議会選挙(6月30日、7月7日)、イギリス議会選挙(7月4日)に先立って、6月6~9日に行われた欧州議会選挙についてお話ししたいと思います。

欧州議会とは

 欧州議会は、欧州連合(EU)の起源である欧州石炭鉄鋼共同体の共同総会として、1952年9月、初めて開かれました。当時、欧州議会の議員は加盟国議会の議員から選ばれ、共同体の諮問機関であり、立法権限は保有していませんでした。1970年、欧州共同体予算の一部の分野に関する立法権限が欧州議会に与えられ、その後権限分野が拡張されるとともに、1979年、直接選挙により議員が選出されるようになりました。このような経緯から、普通の国であれば議会(国会)が単独で立法権限を保有しているのですが、EU理事会(加盟各国の閣僚による議決機関)と立法権限を共同保有していることが欧州議会の特徴の一つです。もう一つの特徴は、ストラスブール(フランス)とブリュッセル(ベルギー)の2カ所で議会が開かれていることです。事務局がルクセンブルクにもあるため、議員や職員は3都市を行き来しなければなりません。

 

欧州議会(ブリュッセル):筆者撮影

欧州議会選挙の結果

 今年の欧州議会選挙の話に戻ると、マスコミでは、フランスやドイツなどで極右政党が伸び、フランス議会の解散総選挙につながったと報じられていました。欧州議会選挙の仕組みを説明しておきましょう。総数は720議席で、ドイツ96、フランス81からキプロス、マルタ、ルクセンブルクの6までおおむね人口比例で議席が配分され(ルクセンブルクの人口はドイツの185分の1ですから、小国が有利となるように議席配分されています)、加盟27ヵ国それぞれの方法で選挙が行われます。選出された議員は政党会派に属し、加盟国のためではなく、欧州連合のために活動します。

 政党会派別の獲得議席数は次のとおりです。

政党会派 獲得議席数 増減数
欧州人民党(EPP) 中道右派・親EU 188 +10
社会民主進歩同盟(S&D) 中道左派・親EU 136 -4
欧州保守改革(ECR) 右派(一部極右) 82 +10
欧州刷新(Renew) 中道派・親EU 80 -25
無所属   76 -16
アイデンティティ・民主党(ID) 極右・右派 64 +25
緑・欧州自由連盟 環境・左派・親EU 54 -19
左派・北欧緑左派同盟  左派・急進左派 40 +9

注:前回(2020年)の議席数は705。
出所:欧州議会HP、JETRO「欧州議会選挙から占う今後のEU政策」。

 フランスでは国民連合が30議席、ドイツではドイツのための選択肢(AfD)が15議席を獲得し、イタリアでもメローニ首相が率いるイタリアの同胞が勝利を収めるなど、極右政党が伸張したのは確かなのですが、EPP、S&Dの第1・2党も合計で6議席伸ばし、与党の一角を占める欧州刷新を加えると400を超える議席を確保できた結果、フォン・デア・ライエン委員長(EPP)の続投が決まりました。しかしながら、極右政党が議席を伸ばした一方で、親EUの欧州刷新、環境重視の緑の党が大きく議席を減らしたことは、フォン・デア・ライエン委員長がこれまで進めてきた、2050年までに温暖化ガス準排出量をゼロとすることを目標とするグリーン化政策にブレーキがかかる可能性があることが懸念されます。

欧州議会選挙は国内政治

 気をつけなければいけないのは、EU市民がEUではなく各国の政治・経済状況にもとづいて投票しているのではないかという点です。ドイツでは、欧州の病人になってしまったといわれる経済不振を背景に、ショルツ首相率いる社会民主党が2議席、緑の党が9議席と議席を減らし、AfDが議席を伸ばしました。フランスでも、労働市場・失業社会保険・年金などの改革などへの反発から、マクロン大統領率いる中道派の欧州刷新(旧・共和国前進)が8議席、緑の党が7議席を減らし、極右の国民連合が躍進しました。マクロン大統領は、国民連合の躍進をくい止めるため、急きょ議会を解散し選挙が行われました。国民連合の躍進は止めることができたものの、中道・与党連合は議席を減らし、極左・左派が躍進した結果、単独で政権を担える政党がなくなり、フランスの政治混迷が続くことになりました。

 ドイツやフランスと同様のことが、私の専門である中東欧諸国でも起きています。ハンガリーでは、オルバン長期政権への批判から政権与党フィデスが2議席減、腐敗を批判したティサ(尊重と自由)が7議席を初めて獲得しました。ポーランドでも、政権を担ってきた法と正義(右派連合)が7議席減らし、市民フォーラム(市民連立)が7議席を増やしました。ルーマニアでは、国内与党の中道右派連合は7議席減の3議席にとどまり、野党の社会民主党が19議席を維持しました。ポーランドやルーマニアでは、フランスやドイツと同じように、極右政党が議席を伸ばしています。

21世紀の政治

 EUの起源である欧州石炭鉄鋼共同体が誕生してから73年、欧州議会に直接選挙が導入されてからでも45年が経過しています。EU市民はEUパスポートやIDカードをもち、あらゆるところに国旗とEU旗が掲げられるなど、毎日EUを身近に感じているはずです。しかし、欧州議会選挙は国内選挙の延長線上で投票が行われ、しかも極右・極左へと極端に振れているようです。もし(ほぼ?)トラもその線上にあると思われます。

 EU市民がEUではなく国内情勢をもとに投票したことは、私たち日本でいえば、国会議員選挙で自分たちの町の利益にもとづいて投票することと同じでしょう。EU政治が極端に振れているのも、視野の狭いシングル・イシューだけを公約に掲げ、他者を批判し続ける政党が増えていることと同じでしょう。民主主義が機能するためには、個人や少数派の基本的な権利を擁護しながら多数派の意思が形成されなければなりません。

 21世紀の政治をより正しい方向に向けていくため、岡山商科大学の皆さんには、より広い視野をもつため、大学時代の4年間だけでなく、卒業後も学び続けていただきたいと思います。

(2024年7月13日 経済学部 吉井昌彦)

〈経済学部通信〉脚本「汽笛」を安城学園高等学校演劇部が上演決定

今回は経済学部教員で演劇部顧問の宮島先生にご寄稿いただきました。


 先日、愛知県にある安城学園高等学校の顧問からメールが来て、「汽笛」を上演したいと書かれていました。この作品は私が津山東高校で演劇部の指導をしていた時に書き下ろした脚本です。生徒と試行錯誤しながら書き上げたことが懐かしく思い出されます。

 「汽笛」はいじめにあい、親友とも連絡がとれなくなった、女子高校生が無人駅に置かれていた、「だめの子日記」という本を読み、その言葉の力に生きる勇気をもらうお話です。

「だめの子日記」は県立津山高校1年生の女子生徒が交通事故で亡くなった後、ご両親が彼女の部屋にあった日記を一冊の本にまとめられたものです。その一節を紹介しましょう。

「七月十九日。アンネの生涯についての本を読む。苦しく辛い生活に生き抜くアンネ。そうよね。幸せに暮らしていたアンネが、隠れ家に身を潜めながら、恋もするの。ピーターだっけ。日記には将来の夢も書いてたな。人を助ける仕事をしたいと。すごい。すごすぎる。私もそんな日記を書きたいな。私の夢は大自然のオーストラリアに住むことかな」

(だめの子日記p72 小学館)

 だめの子日記を読んだ女子高校生が、幽霊としてあらわれた智加枝さんに勇気をもらい、辛いことがあったら、無人駅で汽笛の音を聞いて自分が一人ではないことを思いだしてと言い残し消えて行きます。その言葉に彼女は強く生きる決意をします。後に信じていた友達は田舎のおばあちゃんが倒れて、携帯を忘れて病院に向かったことがわかり、友達を信じていなかったことを謝ります。いじめを乗り越える勇気をもらった彼女はこれから強く生きられることを予感します。

「汽笛」の一幕

 だめの子日記は中学校の教科書にも掲載されるほどで、その言葉の美しさに魅了されます。今は絶版になっていますが、智加枝さんの弟さんと交流をしていて、今はその再版をしようと計画しています。安城学園高校演劇部さんの上演が成功することを祈るばかりです。きっと智加枝さんが見守ってくれていると思います。

(経済学部 宮島宏幸)

〈経済学部通信〉週刊東洋経済(7月20日号)に記事が掲載されました

本学経済学部教員の熊代和樹准教授の研究を元に寄稿した記事が週刊東洋経済(7月20日号)に掲載されました。

記事は「経済学者が読み解く現代社会のリアル」という連載コーナーに掲載されています。このコーナーは経済学者が自身の研究が社会とどのように関わっているかを一般読者向けに解説するものです。

今回の記事は熊代准教授が龍谷大学経済学部の津川修一氏と共同で進めているプロジェクトの一部で,それぞれの専門分野である行動経済学と公共経済学を併せることで生まれた研究を元にしています。

経済学では,合理的でない人は真に望ましい選択から外れた選択をしてしまうというネガティブな結果が現れることが多いのですが,記事の中では,合理的でないことがむしろ良い結果をもたらすかも?という意外な例を紹介しています。

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https://toyokeizai.net/articles/-/775670