〈経済学部通信〉コートジボワール訪問記

今回は三谷直紀先生にご寄稿いただきました。


2024年2月末一週間ほどの日程で西アフリカのコートジボワール(Côte d’Ivoire)共和国に出張した。主な目的は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が行っている「JICAチェア」の一環として開催された国際コンファレンスで、日本の人的資源開発の経験(歴史)に関する基調講演を行うことであった。合わせて官庁訪問や現地の大学での講義なども行った。以下、コートジボアールという国の概要と訪問した際の見聞記である。

I.コートジボアールという国の概要

コートジボアール共和国は、西アフリカの赤道のすぐ北に位置する国である。1960年にフランスの植民地から独立した。人口は約2800万人で、国土は日本の0.9倍の広さがある。首都は中心部に位置するヤムスクロであるが、南部の都市アビジャンにも主な省庁があり、実質的な首都機能はこちらにある。アビジャンは人口約470万人の国際都市で西アフリカ地域の重要なハブとしての役割を果たしている。

民族的には60以上の部族から成り、各部族では固有の部族語が用いられている。公用語はフランス語である。また、宗教別人口分布はイスラム教42.5%、キリスト教39.8%、伝統宗教2.2%、その他の宗教0.7%、無宗教12.6%である(2021年国勢調査)。社会的文化的多様性に富む国であるが、反面国民的な統合意識をいかに高めるかが課題である。

人口増加率は対前年比2.5% (2022年) と高い。人口の年齢構成は30歳未満が70%以上を占めており、若年人口の割合が非常に高い。少子高齢化が進んだ日本とは対照的である(図1、図2)。乳幼児死亡率も高く、若者の就学率の向上や雇用機会の確保など課題も多いが、人的資源開発による将来の経済発展の可能性も秘めている。

気候は、気温の変動が小さく、南部では湿度が高く、南から北に向かって降水量が減少するのが特徴である。月ごとの平均気温の変動は小さく、日中の気温は摂氏 20 度前半から摂氏 30 度半ばの範囲である。乾季は11月から3月まで続く。12 月から2 月の時期に北東から「ハルマッタン」という乾いた風が吹き、サハラ砂漠の砂が飛んでくる。 4 月から 10 月までの雨季には、年間降水量の合計が北東部と中部で約 1,100 mm、北西部で約1,500 mmの雨が降る。

コートジボワールの1人当たり国民所得GNIは2,620米ドル(2022年、世銀、196カ国中145位)である。西アフリカは世界で最も所得の低い地域のひとつであるが、その中では地中海側のアルジェリア(3,900米ドル)やモロッコ(3,710米ドル)に次いで所得の高い国である。ちなみに日本は42,440米ドル、インドは2,380米ドルである。

同国の基幹産業は農業で、農業に従事する人口は全体の約50%を占め、GDPの約30%、輸出の大部分を占める。カカオやコーヒーなどの商品作物が多い。カカオの生産量は世界一で、2位の隣国ガーナを大幅に上回っている。しかし、付加価値生産性はかなり低い。その背景には輸出されるカカオの国内加工率が20%程度とかなり低いことがある。最近カカオを自国で加工し、上質なチョコレートを作って輸出を図る企業も現れてきているものの品質面での欧米との差は依然大きいようである。

コートジボワール産のチョコレートの新製品

1993年より産油が開始され、近年、石油・石油製品は、カカオ・コーヒーの輸出と並び主要貿易品目となっており、2023年からは、バレーヌ石油・天然ガス田で生産を開始している。

政府は、国内インフラ整備等による開発計画に取り組み、2012年以降、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた2020年を除き、毎年約7~9%の高い経済成長を維持している。現在、2030年までの上位中所得国移行を目指し、更なる経済社会開発に取り組んでおり、貧困対策と若年層の雇用確保、民間投資の誘致、産業の多角化にも取り組んでいる。

コートジボワールはサッカーが盛んな国である。アビジャン中心部にも立派なサッカー場があった。2024年2月の私の訪問直前にアフリカンカップで3度目の優勝を果たし、街には祝賀ムードが満ち溢れていた。国民の統合意識高揚に大いに寄与したに違いない。

コートジボアールは食べ物がおいしいところである。しっかり下ごしらえをするなど料理の味を大切にする国民であることがうかがえる。実際、今回訪問して魚や肉、食用バナナ、果物など大変おいしかった。

II.コートジボワール訪問

出発前に黄熱など8種類の感染症予防のワクチンを接種した。日本からパリ経由で空路片道約33時間かかった。しかし、冬の日本から常夏の国に来て体調はがぜん良くなった。

1. 官庁訪問(アビジャン、2月20日)

到着の翌日に経済企画開発省と労働省を訪問した。次官クラスも参加するというハイレベルの会議であった。初等中等教育やインフォーマルセクターの問題、労働基準監督行政の諸問題などについて議論した。

経済企画開発省での会議

2. アウレ教授宅での夕食会(アビジャン、2月20日)

その夜、国際会議の主催者であるJapan Corner所長で国立高等統計応用経済学大学校(ENSEA)教授のアウレ(AHOURE)先生の自宅での夕食会にJICAの職員二人とともに招待された。当地の興味深いお話を伺いながら、料理をいただいた。大変おいしかった。1日がかりで準備された由、心のこもったおもてなしに感激した。

余談だが、アビジャンの中心部のホテルから郊外のアウレ教授宅まで行くのが大変だった。通常は車で40分で行けるところが交通渋滞で2時間もかかってしまった。渋滞で止まっている間もたくさんのバナナなどの物売りが車の周りにたくさん寄ってきて商売をしていた。聞けば、地下鉄などが未整備のため交通渋滞は毎日のことで、その解消が重要な政策的課題になっており、日本企業もそのための道路整備等で活躍している由。

アウレ教授宅での夕食

3.大学訪問I(アビジャン、2月21日)

アウレ教授が教鞭をとっている国立高等統計応用経済学大学校(ENSEA)を訪れ、英語で労働経済学の講義を行った。日本の大学と違って、学生諸君からたくさんの質問が出て活発な議論ができた。その後、大学構内にJICAの協力で開設されたJapan Cornerを視察した。まだ、日本関係の書籍は少ないもののスペースが広く、立派なセンターであった。今後日本語教育も積極的に行っていく由。

ENSEAでの講義風景

4 .国際コンファレンス(アビジャン、2月22日)

2月22日に開催された国際コンファレンスは、経済企画開発大臣や駐コートジボアール日本国大使なども参加する盛大なものであった。開催場所は前日と同じ大学ENSEAの構内であった。会場の装飾が色鮮やかなことと紅白の風船がここかしこに上がっていることが印象的であった。まず、会議を盛り上げるために、民族音楽に合わせて舞踊が披露された。

経済企画開発大臣のあいさつ

経済企画開発大臣や日本国大使などのあいさつに続いて、コートジボアールにおける人的資源開発や若年の雇用機会の現状に関する報告等があった。そして、私から日本の人的資源開発の経験に関する基調講演をフランス語で行った。主に、江戸時代からの学校教育と企業内訓練の歴史について説明した。岡山県の閑谷(しずたに)学校講堂(国宝)や遷(せん)喬(きょう)尋常(じんじょう)小学校(1907年竣工、重要文化財)などの写真も使って、いかに日本が昔から教育や訓練に力を入れてきたかを説明した。日本の人材形成システムの特徴は、誰もが参加できるという意味で民主的でかつ競争が激しいという点にあることを強調した。フロアからもたくさんの意見が出て会議は盛会であった。

基調講演

5.日本国大使公邸での天皇誕生日祝賀会(アビジャン、2月22日)

その夜は、日本国大使公邸での天皇誕生日祝賀会に招かれた。公邸は高級住宅街にある瀟洒な建物で、その広い中庭で行われた。コートジボワールの各界の要人に加えて、フランス人などの外国人や日本企業や日本政府関係者など多くの人が招かれていた。日本車の展示とともに、日本企業やJICAなどの展示ブースも設けられ、日本料理や日本酒などもふるまわれていた。魚の養殖事業に携わっている専門家などにも会った。この地にこれだけ多くの企業や政府機関が進出し、日本人が活発に働いていることに感銘を受けた。

朧月夜の天皇誕生日祝賀会

6.大学訪問II(ヤムスクロ、2月23日)

滞在最終日は首都ヤムスクロまで出向いて、もうひとつの訪問先大学:国立フェリックス・ウフェ・ボワニ理工科学院(INP HB)を訪れた。アビジャンから車で片道約3時間、立派な高速道路が通っていた。道路の周辺はサバンナ特有の乾燥した畑地帯であった。ときおり通りかかる村の市場の風景は、この国の農村部の貧しさを感じさせるものであった。

INP HBの校舎

今度の大学でも英語で講義を行った。INP HBは理工系のエリート校で、広大な敷地に立派な校舎が立っていた。コートジボワールのみならず近隣の国からも厳しい選抜試験をして受け入れており、全寮制で授業料等全額免除される由。いかに先端技術分野のエリート教育に力を入れているかがわかる。私の講義でも如何にも優秀そうな学生からたくさん質問を受けた。INP HPで学んだ後、さらに留学したいという学生もいた。目を輝かせて学んでいる様子が印象的だった。

INP HBでの講義後の集合写真

大学訪問のあと、ヤムスクロにあるカトリックの大聖堂を見学した。広大な敷地に建つ壮大な大聖堂とステンドグラスの美しさに感動した。

大聖堂のステンドグラス

今回の出張ではJICAの人達に大変お世話になった。感謝!

(経済学部 三谷直紀)

≪参考資料≫

外務省『コートジボワール共和国 基礎データ』

https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/cote_d/data.html

(独)国際協力機構(2023)『JICA国別分析ペーパー・コートジボワール共和国』 https://www.jica.go.jp/cotedivoire/ku57pq0000046fwq-att/jcap.pdf

 

〈経済学部通信〉経済効果 テイラー・スウィフトと大谷翔平

今回は萩原先生にご寄稿いただきました。


 私は産業連関分析を専門にしています。産業連関分析は、いわゆる「経済効果」を計算する手法として知られています。今回は、産業連関分析の紹介を行い、その応用例として、テイラー・スウィフトの東京公演、ドジャースに移籍した大谷翔平の経済効果を取り上げます。経済効果とは何かについては、ここでは触れません。興味を持った学生さんは、私の授業を履修してみてください。

テイラー・スウィフトの東京公演の経済効果

アメリカの歌手のテイラー・スウィフトが2024年2月に来日し、東京ドームで4日間講演を行いました。その「経済効果」を全国で341億円とした推計を、江頭満正氏が経済効果.netというwebサイトで発表しました。この推計は、毎日新聞(2024年2月6日)や経済情報サイトのBloomberg(2024年2月7日)でも紹介されています

この推計について、どの程度妥当か考えてみましょう。

まず、最終需要の増加として、来場者消費として、チケット(54億円)、グッズ(34億円)、宿泊(10億円)、主催者側消費として、事業費(40億円)、その他も含めて合計162億円とこの推計では想定します。このような最終需要の増加によって、生産が拡大し、一次波及効果が265億円、さらに生産拡大が付加価値額の拡大をもたらし、消費の拡大をもたらすというケインズの乗数効果(二次波及効果)が76億円で、合わせて341億円の経済効果、188億円の付加価値額の増加があるとされています。

 この推計は適切でしょうか?まず、「来場者消費」と「主催者側消費」を並列しているところに問題があります。事業費(40億円)などはチケット販売などの収入をもとにした支出なので、二重計算になっています。

次に、チケット販売(54億円)から事業費(40億円)を差し引いた14億円は利益となりますが、主催者とテイラー・スウィフトに分配されるでしょう。主催者はTaylor Swift TouringとAEGX (アメリカのAEG Presentsと日本のエイベックスの子会社) なので、利益の大半は海外の所得になります。国際収支の観点からは、サービスの輸入ということになります。国内への需要の波及はあまりないと考えられます。グッズ販売(34億円)についても、販売されるグッズは、アメリカから持ち込んだもの(輸入)だろうと考えられます。

チケット販売(54億円)のうち事業費(40億円)は二重計算、残り(14億円)のほとんどは海外への支払い、グッズ販売(34億円)も海外からの輸入なので、88億円が過剰です。国内に向けられる最終需要は、国内での旅行費、事業費などの74億円(162億円-88億円)となり、半分以下になります。したがって、341億円の経済効果、188億円の付加価値額の増加という推計は半分以下になります。

大谷翔平の経済効果

次に、最近発表された「宮本勝浩 関西大学名誉教授が推定 – 2024年ドジャースにおける大谷翔平選手の経済効果は約865億1,999万円」(関西大学のプレスリリース2024年5月21日)という経済効果の推計を取り上げてみましょう。「阪神優勝の経済効果は阪神の約70数名の選手全員で創り出したものであったが、大谷選手はたった一人でその額に匹敵する約865億1,999万円の経済効果を創り出すと想定される。」とコメントしています。

 どのようにして推計したかについては、「推計方法および分析結果の無断転載・無断転用の防止のため、ウェブサイトには詳細資料を掲載しておりません。」「本発表は報道資料として発表しております。資料提供元との取り決め等により、報道機関以外の方への資料提供は行っておりません」とプレスリリースに記載されていて、私たちには詳細は分かりません。

 この推計は、朝日新聞、山陽新聞などで報道されていますが、関西大学のプレスリリースとほぼ同じ内容になっています。この中で、日刊ゲンダイは「大谷経済効果は865億円! NHKが約1割「放映権料87億円」をMLBに支払い大貢献の仰天」(5/23)とする記事の中で、「莫大な金額の内訳を見ると、『ドジャースタジアムでの観客増加による消費増加額』(約22億円)、『スポンサー収入』(約101億円)などに加え、宮本氏は『放映権収入』として日本のNHKとMLBの契約に着目した。」として、NHKへの支払額が約87億円としています(これもNHKの海外からのサービス輸入であり、日本国内に対する波及効果は生じない。)。依然として、推計の詳細は明確ではありませんが、大谷の経済効果865億円を生み出した最終需要はアメリカで生じたものであり、アメリカにおける経済効果を述べていることになります。経済的影響の大きさという意味では、日本における経済効果(阪神の優勝)とアメリカにおける経済効果(大谷翔平の活躍)の大きさを比較しているのであって、どの国で起きたことかはどうでもいいのかもしれません。分析者本人にとっては自明のことかもしれませんが、どこの国における経済効果化を明記しなければ、日本の経済が大谷選手によって経済効果を受けると誤解されることになるでしょう。分析の内容は、公開するべきだったと思います。

終わりに

産業連関分析による経済効果の推計は、しばしば社会的、あるいは政治的な影響力を持ちます。その公表には責任が伴います。一度発表された数字は独り歩きします。

マスコミは、発表された経済効果をそのまま報道しています。報道を受ける私たちは、報道の背後にある理屈を自分の力で考えてみることも大事です。

(経済学部 萩原泰治)

〈経済学部通信〉「学ぶことの意義」について考えよう

今回は今年度より着任された中條和光先生にご寄稿いただきました。
中條先生は,教育心理学を専門とし,本学では教職課程の担当として「教育心理学」や「生徒・進路指導の理論と方法」などの講義を担当されています。


 新型コロナウイルス感染症も落ち着きを見せ,大学のキャンパスに平常が戻ってきました。

 教室で学生と対面し講義をする。学生の質問に答える。こんな当たり前が改めて新鮮に思え,実はたいへん貴重なものであったことを再確認しています。背筋を伸ばし,真剣な眼差しで講義を受けてくれる学生に接し,講義で取り上げているテーマではありますが,学習意欲について少し書いてみたいと思いました。

図1 勉強の意欲(藤沢市教育文化センター,2022,p.11より作成)

注)「もっと,たくさん勉強したいと思いますか?どれか一つに◯をつけてください。」という問いへ回答の割合

 

 図1は,神奈川県藤沢市が行っている「学習意識調査」から抜き出したものです。藤沢市の調査は,昭和の高度経済成長期に始まり56年間に渡ってほぼ5年おきに行われてきました。調査では,中学3年生を対象に,同じ質問項目を用いて学習意欲などの学びの意識の経年変化が調べられました。調査の行われた56年の間に,子どもたちの学習意欲はどのように変化してきたのでしょうか。

 図から明らかなように,調査開始の1965年以降,「もっと勉強したい」と答える生徒の割合は減少を続けてきました。しかし,2010年を境に増加に転じています。2022年の藤沢市の報告書では,増加の要因としてコロナ禍の影響を指摘しています。コロナ禍で,学校に通えなくなったこと,社会的距離の確保を求められ,マスク着用やグループ活動が制限された「学校の勉強」を経験したことなどが,生徒たち自身に勉強について改めてその意味を考える機会となったと考察されています。また,2017年に告示された新学習指導要領によって,学校現場で「主体的・対話的で深い学び」,いわゆるアクティブ・ラーニングの視点による授業改善の取り組みが進められていることも生徒の「勉強したい」という思いを高めている要因として挙げられています。

 しかし,2015年の調査で「もっと勉強したい」という回答が増加したことについては,どのように考えればよいのでしょうか。実は, 2008年に告示された学習指導要領の改訂の際に,学力の3つの要素の1つとして学習意欲が示され,子どもたちの学習意欲を高めることが学校現場に求められていたことがその理由の1つと考えられます。その際,意欲の指導のために,体験的な学習やキャリア教育などを通じ,学ぶ意義を認識させることが必要と示されました。高校受験を控えた中学3年生を対象とする藤沢市の調査では,このことが功を奏して,2015年の調査で「もっと勉強したい」という回答の割合が増加した可能性があります。

 現行の2017年告示の学習指導要領では,さらに踏み込んで,子どもたちの「主体的・対話的で深い学び」を実現するために,「生徒が,学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていくことができるよう」,キャリア教育の充実を図ることが明記されています。授業において学ぶことと自分の社会的・職業的自立との関係を理解することを通して学びの意義を理解させ,学びに取り組む姿勢を育てることに力を注ぐことが求められているのです。このことが,生徒の学習意欲の向上につながった理由の1つと考えられます。

 さて,ここまでは藤沢市の調査報告を拠り所に学習意欲について見てきましたが,高校受験を前にした中学3年生を対象とする調査において,学ぶことの意義を理解させることが意欲の増加につながるという知見は,大学教育に対してもたいへん重要な示唆を与えていると思われます。

 大学では,学問の先端や深みに触れることができます。それらを通して学問それ自体の魅力に気づき,意欲的に講義に参加し目を輝かせて学ぶ学生の姿は,教育や学究に勤しむ教員にとっても励みとなります。しかし,社会人への移行を控えた大学生にとって,社会に目を向けること,アルバイトやボランティア活動,旅行などの体験を通して実社会に触れること,インターンシップや大学が提供するキャリア教育などにより「学ぶことの意義」について考えてみることは,自らの学習意欲を高めるうえでたいへん重要なことだと思います。「学ぶことと自己の将来とのつながりを見通しながら,社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる資質・能力を身に付けていく」という学習指導要領の文言は,決して小中高等学校段階にとどまるものではなく,むしろ大学生にこそ必要な学びの態度ではないでしょうか。

 私の関わる教職課程でも,教員免許の取得を目指して学生が日々研鑽に励んでいます。現在の小中高等学校の教育においては,変化の激しい現代社会において,児童生徒の生きる力を育むことが教育目標に掲げられています。教員の仕事は,社会の構成員の育成であり,まさにエッセンシャルワーカーです。私も,学生の皆さんとともに,教職課程を学ぶ意義やこれからの社会における教員のあり方を考えていきたいと思います。

(経済学部 中條)

引用文献

藤沢市教育文化センター 2022 第12回「学習意識調査」報告書 ―藤沢市立中学校3年生・56 年間の比較研究―

〈経済学部通信〉2024年度 新入生合宿

4月5日,6日の二日間,岡山市立少年自然の家にて新入生合宿が行われました。

合宿では,これから大学生活を送るにあたっての心構えや今後の進路に向けての準備について学ぶとともに,ゲームや野外炊事を通じてこれから4年間一緒に勉強する仲間との連帯感を強めました。

(経済学部 熊代和樹)

 

入所式

自己紹介ゲーム

野外炊事

研修の様子

)

 

〈経済学部通信〉2023年度 近畿大学との合同ゼミ

1月6日,7日の二日間にわたり近畿大学にて,岡山商科大学井尻裕之ゼミ,熊代和樹ゼミ,近畿大学石村雄一ゼミの3ゼミでの合同ゼミを開催しました。この企画は昨年度に続き二度目の開催で,今年度は井尻ゼミから3チーム,熊代ゼミから2チーム,石村ゼミから4チームの計9チームが参加するイベントとなりました。

一日目は日ごろのゼミで行ってきた活動を元にプレゼンテーションを行いました。各ゼミ共に創意工夫に溢れた発表内容で,学生同士の質疑応答も大変盛り上がりました。

二日目はゼミや大学の枠を越えてグループを作り,就職活動支援の一環としてグループディスカッションやディベートのノウハウを学びました。石村先生のご経験を交えた講義内容に,真剣に聞き入る様子が見られました。

閉会式では初日のプレゼンテーションの内容が特に優れていたゼミに賞が贈られ,商大熊代ゼミの1チームが奨励賞を受賞しました。

(経済学部 熊代)        

〈経済学部通信〉教養演習の時間、切磋琢磨の刻刻

 

今回は韓先生にご寄稿いただきました。


ゆく年くる年を迎えたら、後期もいよいよ終わりを告げる。

 

月曜日開講の教養演習だが、12月25日は第14回でディベート本選の時間だった。前期のプレゼンテーションでの失敗から得た教訓を生かして、韓ゼミの移民チームは本選まで頑張ったものの、優勝はできなかった。負けて惜しかった気持ちより、自分たちがとことんまで頑張り切れなかったことへの悔しさのほうがずっと大きかったように思えた。私は、むしろそれでよかった。結果そのものより結果への道中、つまずきながら進んでいくことのほうが肉体的にも精神的にも絶対プラスになると信じているからだし、現に一人ひとりが確実に成長してきたのだ。

みんなを褒めてあげたい。そして、感謝もしたい。

 

経済学部1年次開講の教養演習はいわば道場。実践を通して「かた」を実力へと習得していく。前期はプレゼンテーションを、後期はディベートを中心に、要約力、表現力をはじめ、読解力、資料収集力、ないし批判的思考力といった学修力及び社会人基礎力の育成を目標に演習内容が組まれている。各回課題が課され大変なものもあるようだったが、課題作成に要約力がついた、人前での発表が普通にできた、相手の話を真剣に聴き的確に反論することが大事だと分かった、その一方、立論の主張は自分たちより説得力があった、相手からの反論は的確だったなど、様々な反応があった。この上なくうれしく感じたのは、相手チームの仲間の成長を真摯に受け止めたことだ。一人は楽だが、一人より大勢のほうが励まし合いながらより遠くへ進めるのだ。

 

最終回の教養演習は総括として、一人3分の発表を予定している。学業はもとより、この1年の成長及び今後の抱負について、語り合いながら喜び合える時間になれたらなあと、楽しみにしている。

(経済学部 韓)

〈経済学部通信〉おじさんのひとりごと

今回は本学で「芸術」の授業をご担当で,吹奏楽部の顧問をされている石原先生よりご寄稿いただきました。


 9月1日岡山芸術創造劇場ハレノワがオープンしました。これに伴い長年慣れ親しんできた岡山市民会館と岡山市民文化ホールが閉館することになりいろいろな団体が「さよならコンサート」を企画し開催しています。

 来年度からは演劇やオペラ関係はハレノワで、演奏関係はシンフォニーホールでという棲み分けが・・・と思いきや~

 シンフォニーホールは2001席と大きなホールです。これまで市民文化ホール800席でちょうど良かった利用団体には広すぎるのです。ハレノワには中劇場(807席)があり音響反射版も備えてあるので音楽関係にも使えるとのことでしたが(大劇場1753席には音響反射版の設置なし)、演奏関係者から「全然使えない」など酷評が多く聞こえてきています。

 理由のひとつにホールの残響時間があります。残響時間とは演奏音が止まってホール空間に響いている音の音圧が60㏈まで減衰する時間をいいます。音楽演奏(管弦楽関係)で音が豊かに響くには2.0秒前後、オペラでは言葉もはっきり聞こえかつ演奏の響きもある程度残る1.4~1.6秒前後、演劇では台詞がかぶっても聞き取れる0.8~1.1秒前後が最も適しているとされています。

 残響時間は空席時と満席時は違います。人が客席に座ると着ている服の布が音を吸収し響きを止めてしまうので空席時より0.2~0.5秒くらい短くなるのです。(会場の広さや形状によって違いがある)

 シンフォニーホールは空席時2.5秒、満席時2.0秒。客席によって聴きづらい場所はありますが、音楽関係(管弦楽)には最適な残響時間です。ハレノワ大劇場は空席時1.3~1.7秒(満席時は未測定)なので0.2秒~0.5秒くらい少なくなるとして0.8秒~1.5秒くらいになると思われます。オペラや演劇にはいいですよね。中劇場は音響反射版を設置したとき空席時1.5~1.9秒(満席時は未測定)なので満席時には1.0~1.7になると予想されますが、ここでもう1つ問題なのが音響反射版です。他のコンサートホールより薄く十分に音を反射させないことから実際に聴いた方は「残響時間はかなり少なくなる。」「ほとんど響かない。」と言っていました。音楽関係者で「予約しようと思ったが会場を変更した。」という声も耳にします。

 さらに2025年度には岡山シンフォニーホールが改修工事に入りしばらく使えないとのこと、「岡山市内で演奏会場が無くなる!」「これからは倉敷市民会館で!」といった声が聞こえてくるようになりました。

(経済学部 石原憲)

〈経済学部通信〉構造把握力

今回は三谷先生にご寄稿いただきました。


生成AIなどの技術革新が進む中で働く人に必要とされるスキルが大きく変化している。そして、大学教育でもSTEM(Science, Technology, Engineering and Mathematics)という分野の知識・技能が益々重要になっており、文系の学部でもこうした分野の基礎的な知識・技能を身につけることが求められている。しかし、単にPCなどのプログラムを組んだり、アルゴリズムを理解することができるようになることが、こうした要請に応えることになるのだろうか?チャットGPTを使えば、かなり複雑なプログラムも日常用語で問いかけるだけで瞬時にコードを作成してくれる。では、どんなスキルを磨くことが文系のとりわけ経済学を学んでいる学生に求められているのだろうか?

このことを考える糸口としてSTEMのひとつである数学を学生時代に専攻して現在経済界で活躍している人の話に注目したい。三菱UFJフィナンシャルグループ社長の亀澤宏規氏は東京大学理学部数学科・大学院で数学(整数論)を修めた後銀行に就職したという異色の経歴の持ち主である。母校のある記念日でのあいさつで、「自分は大学で数学を学んだが、数学そのものが役に立つと思ったことは一度もない。むしろ、役に立たないからこそ数学をやる意味があると思っていた。」、「しかし、数学を学んだことで鍛えられたスキルがある。「構造把握力」とでもいった能力である。すなわち、物事を抽象化し、理論化し、そして一般化する能力である。」IT化が進む中で国際金融の激烈な競争社会を生き抜いてきた氏のいう「構造把握力」こそがSTEMで鍛えられ、これからのAI社会で働く人に求められるスキルではないだろうか。

「構造把握力」について、もっと詳しくみてみよう。まず、「物事を抽象化する」とは、複雑な現実の問題から本質的なものだけを抽出し、単純化した関係として問題を設定し直すことである。(実は、私が数学演習などで教えた経験からこの抽象化するということができない人が多い。)つぎに、「理論化する」とはこの抽象化された問題の背後にある理論的な構造を明らかにして問題を解いていくということである。そして、得た結果を具体的な問題の解決に応用し、「一般化」する。このように考えていくと、「あれ?どっかで聞いたことがある。」と思われた人もいるかと思う。そう、『マンキュー入門経済学』の第2章「経済学者らしく考える」に書いてある「科学としての経済学」の説明と酷似しているのである。それもそのはず、経済学という学問はもともとニュートン力学の体系に触発されて発展してきたという側面がある。つまり、STEMのひとつである!

経済学をしっかり勉強して「構造把握力」を身につけることがこれからのAI社会を生き抜くために大切なことではないだろうか。

(経済学部 三谷直紀)

〈経済学部通信〉夢見てきた韓国留学

今回は本学経済学部3年生で、現在韓国へ留学中の柳原鈴香さん(佐井ゼミ)から寄稿していただきました。


 私は9月から12月までの一学期間、韓国の祥明大学という所に留学に来ています。

韓国への留学は高校生の頃からの目標であり夢でした。そして昨年「日韓大学生未来フォーラム」に参加した事をきっかけに更に韓国に興味が湧き、留学を決意しました。

(祥明大学の様子)

 

 履修している講義については、ほとんどが留学生向けのもので韓国語や韓国社会についての勉強に特に注力しています。留学生向けの授業では、多様な国から来ている多くの留学生が韓国語を上達させるために、積極的に韓国語で話したり、時には出身国の紹介を韓国語で発表したりしています。留学生向け以外の授業については、「文化トレンド日本語」という日本の流行語を学ぶ講義を履修しています。日本語の授業ではありますが、日本人留学生はもちろん韓国語で話さなくてはならず、最初はかなり苦戦していました。しかし、この講義の受講者は上級レベルの日本語が話せる方ばかりなので、サポートしてもらいながら韓国語で会話する練習ができており、日々少しずつ上達していると実感しています。

韓国語での授業は想像以上に難しく、毎日予習・復習に追われています。

日頃から勉強する習慣があまり付いていなかった私には少々大変ですが、毎日少しずつ新しい単語やフレーズを覚えていき、実際に聞き取れたり応用して使えるようになったりすると、しっかり身に付いているのだと実感できて嬉しいです。

 

(講義の様子)

(学食)

 一学期間生活する寮についてですが、私の寮は日本人4人、中国人2人、ブルネイ人2人の合計8人で毎日楽しく生活しています。日々、日本語・中国語・マレー語・韓国語・英語が飛び交い、とても賑やかです。国籍や使用する言語は違ってもみんな本当に仲が良く、時には大量にチキンやピザを買ってきて全員で輪になって食べたこともありました。

また、韓国は日本より物価が高いと感じるのですが、そういった各国の物価の違いについても寮の皆で話し合ったりします。このように寮での生活は賑やかで楽しいだけではなく、日本ではなかなか知ることができないリアルな海外事情も知ることができるため、非常に勉強になります。

 

(世界遺産を観光)

韓国の生活では文化や習慣の違いに困惑することもありますが、それが刺激になって自分自身の成長に繋がっていると思います。

4か月間とそれほど長い期間の留学ではありませんが、留学を応援してくれている両親や友人、高校や大学の先生方に感謝して、充実した意味のある留学生活を送りたいです。

(経済学部3年 柳原鈴香)


ブログ担当者より追記:

柳原さん、韓国からのレポートをありがとうございました。学業だけでなく文化交流という面でも充実した日々を送られているようですね。

岡山商科大学では韓国の祥明大学だけでなく、中国、オーストラリア、カナダ、マルタ共和国など様々な国への留学をサポートしています。在学生の皆さん、高校生の皆さん、岡山商科大学から世界へチャレンジしてみませんか?

 

〈経済学部通信〉西大寺高校出前授業

今回は宮島先生にご寄稿いただきました。


令和5年8月18日(金)に岡山県立西大寺高校商業科2年生80名を対象に出前授業をしてきました。キャリア教育講演会として「異文化理解とコミュニケーション能力」をテーマに話をしました。

 

最初にジョンレノンのImagineを聞いて、ジョンレノンが訴えた平和について生徒と一緒に考えました。国境なんてない世界や財産なんてなくて、人は皆兄弟なんだと彼は言います。ラオスやオーストラリア、ニュージーランド、カナダ、ラトビアなどの歴史や文化など、国旗を掲示して話しました。ラオスは発展途上国で、市場にはいろんな種類の昆虫が売られていて、試食をしたことを話すと、生徒は顔をしかめていました。日本人もイナゴを食べる習慣があるし、生魚の刺身も日本固有の文化ですね。国や民族によって食習慣や生活習慣は違っていて、それを理解することが大切だということを伝えました。若い内に外国に行って、異文化を知り理解することで、君たちの人生は大きく開けていくことを話しました。また、コミュニケーション能力を身につけて、社会に出るべきで、商業科はその勉強をするには最適な場所だという思いを伝えました。

 

西大寺高校商業科を卒業し現在本学3回生の学生に来てもらい、大学の面白いこと、大学でできることなどを話してもらいました。生徒は皆、真剣に聞いてくれて素敵な時間を過ごすことが出来ました。

(経済学部 宮島)