〈経済学部通信〉「生涯現役」で地域貢献

今回は國光先生にご寄稿いただきました。


 経済学部の國光ゼミ(3年)では、「自ら考え、適切に行動する能力」を養成することを目的に、課題解決型学習(Project-Based Learning)を実施しています。学生が自ら課題を設定し、教室外でのフィールドワークを通じた資料の収集と、調査対象への提言を目指しています。2018年度は少子化対策に取り組む津山市(岡山県)を、2019・2020年度は高齢者の社会参加を調べるため瀬戸内市(岡山県)で調査しました。

津山市のイベント「雛めぐり」(2019)

津山市のイベント「雛めぐり」(2019

 2021年度は「高齢者の雇用機会の確保と生涯現役の啓発」をテーマに、岡山市が主催する【学生イノベーションチャレンジ推進プロジェクト】に参加します。本プロジェクトは、大学生が企業や地域・NPO等と協働して、若者ならではの柔軟なアイデアの提案・実践によって地域課題の解決や地域活性化を図る事業です。國光ゼミは、西大寺公共職業安定所等と連携し、高齢者が働きやすい企業の「見える化」に挑戦します。

 コロナ禍においては活動に制約こそありますが、地域づくりの次代を担う人材の育成に向けて、今後も地域の課題に取り組んでいきたいと思います。

教室での活動風景(2021)

教室での活動風景(2021

(経済学部 國光)

〈経済学部通信〉お金の話: 「知っている・知らない」で大きく変わる?

今回は井尻先生にご寄稿いただきました。


現在(2021年8月30日時点)、大手銀行の定期預金の金利は0.002%程度、金利の高いネット銀行についても0.02%程度となります。もう少しわかりやすく述べますと、100万円を1年間預けますと大手銀行の場合は20円の利息、ネット銀行の場合は200円の利息となるわけです(厳密にはここから更に税金等が差し引かれます)。一方でコンビニのATMで1度、お金を引き下ろした場合、手数料として100~200円程度かかります。

このような低金利下において、銀行に預けているだけではなかなかお金は増えません(安全資産として預金保険制度の範囲内で銀行に預けることは重要です)。そのため、岡山商科大学では学生皆さんが将来にわたって今後の資産をどのように形成していくか、それを考える一助となるために金融諸団体より外部講師をお招きして、「金融リテラシー講座(基礎編)」と「金融リテラシー講座(応用編)」を開講しております。詳細については下記URLより、ぜひシラバス(講義内容を記したもの)をご確認いただけたらと思います。

 

〈金融リテラシー講座(基礎編)〉

https://syllabus.osu.ac.jp/perl/web/syllabus.pl?&mode=detail&Lecture_id=58835&gakka=

 

〈金融リテラシー講座(応用編)〉

https://syllabus.osu.ac.jp/perl/web/syllabus.pl?&mode=detail&Lecture_id=58952&gakka=

2020年度「金融リテラシー講座(応用編)」の講義風景」  2020年度「金融リテラシー講座(応用編)」の講義風景」

(2020年度「金融リテラシー講座(応用編)」の講義風景」)

 

資産形成を考える上で、「知らなくて選択肢に入らない」よりは、「知っていた上で選択する・しない」という判断を自身の責任の下で、行うことができるということが重要であるかと思います。

(経済学部 井尻)

〈経済学部通信〉ある教員の夏季休業期間の生活

今回は池田先生にご寄稿いただきました。


 皆さん,特に学生の中には,前期と後期の間(夏季休業期間)に教員は何をしているのか疑問に思ったことがある方がいらっしゃるかもしれません。大学生の休み期間は実習やインターン,集中講義などを除けば年間で3か月程度あるのが一般的かと思います。ではこの期間,教員も学生の休みに合わせて同程度の休日を過ごしているのでしょうか?

 

 

私も学生の時ふと疑問に思ったことがありましたが,もちろん答えはNoです。

学内の仕事(学務と呼んでおきます)と個人の研究で,多くの教員は割と忙しい生活を送っています。以下では私の夏季休業期間を簡単に振り返ることで,教員の生活の一端を皆さんに知っていただけたらと思います。なお,学務につきましては最小限の記述に留めておりますので,実際には色んな細かい仕事もしております。

 

 

今年の私の夏季休業中の研究は,“The Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History (EAEH 2021)”という学会の発表準備に多くの時間が費やされました(URLはhttp://www.aeaeh.org/eaeh2021.htm)。

 

 

7月上旬に学会から発表の草稿を提出するようにとの通知を受けると,前期の試験や成績との仕事を行う傍らで原稿を作成しなければならなくなりました。締め切りは8月上旬。日本の大学の多くでは教員が一番忙しい時です。(なお,アメリカでは9月に新学期スタートが多く比較的時間に余裕があるため,この時期が締め切りに設定されやすいという事情もあります。)

なんとか期日までに原稿をし終えると,ここから学会発表への準備に入ります。今回の発表は他の先生との共同研究でしたので,発表用のパワーポイント(PPT)作成をしつつ発表へのミーティングも適宜行いました。

 

 

また,この時期から後期の講義資料作成を開始します。1科目につき15講分がありますので,意外と地道に長い時間をかけなければならないのです。

 

 

このようにしばらくは研究と学務を並行していましたが,8月下旬にコロナウィルスのワクチン接種(2回目)がやってきました。ここで副反応があったため,数日の静養をとることになります。

 

 

PPT作成がある程度仕上がったのは,8月末です。「めっちゃかかるやん!」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが,学会発表には厳格な時間制限があり,原稿と同じくこちらも何度も推敲を重ねなければなりません。また,その他の仕事もあるなかではこれだけに集中する訳にもいかず,気づいたら日数が経ってしまいました。

 

多くの場合,研究者は制限時間内にどうやって発表を収めようかに四苦八苦します(大体時間が少ない)。今回の私の発表も,一度できたPPTでは発表に20分かかってしまい,持ち時間8分内にどのように圧縮しようか頭を悩ませました。特に日本語以外の発表の場合,自分の言いたいことが正確に伝わるのか,という問題もでてきます(単純に語学力の欠如かも!?)。

 

 

これとは別に,8月から統計データをExcelに打ち込むという作業も進めていました。私が研究で利用するデータはほとんどが第二次世界大戦以前のもので,統計の記述のされ方も多様なためひとつひとつ念入りにExcel入力しなくてはいけません。意外と時間がかかるため,講義の無い休業期間にしておく必要があります。

 

 

さて,9月に入るといよいよ発表本番に向けた練習です。内容が上手く整理されているか,相手に伝わるような説明ができているか,など確認事項をひとさらいします。また,オンラインでの発表が標準となっている昨今では,アニメーションの使い方も対面とは違った工夫が必要になります。何度か変更を加え,前日まで入念に確認作業を行いました。

 

 

さて,本番ですが,残念ながら学会の規則上Zoomの録画撮影などは禁止されており,どのような様子だったのか視覚を通じてお伝えすることはできません。

感想だけを記しておきますが,オンライン学会での発表は対面とは異なり,多くの先生がいるプレッシャーを感じることはさほどありませんでした。一方で機材のトラブルや画面共有,音声確認など別の心配が本番までつきまといます。改めて,オンラインの可能性を感じつつもパソコンに弱い人には大変な社会が到来したことを実感しました。

 

 

発表自体は無事(?)に終わったわけですが,9月に入り講義資料の作成が滞っていました。そのため,翌日から慌てて作成を再開することとなります。といってもこの時点で9月10日前後。後期開始の5日前です。結局,後期の講義資料は後半一部を学期内に仕上げることとなり,夏季休業期間を終えることとなりました。

 

 

以上,簡単に私の夏季休業期間の生活を振り返ってみました。書くと非常にあっさりとした内容ですが,1日1日時間が足りないのを実感したのはかなり久しぶりでした。それだけに,充実していたといえばそうなのかもしれません。

 

 

後期が始まった今,上記のような生活は当然しばらくおあずけになります。

後期は初回から対面授業を行うことができております。この環境をありがたく思いながら,また日々の生活を大事に過ごしていけたらと思っています。

(経済学部 池田)

〈経済学部通信〉現在の音階へと受け継がれたピュタゴラス音律

今回は石原先生にご寄稿いただきました.


紀元前500年頃に活躍したピュタゴラスは数学者・哲学者ですが、音楽の世界でも有名人なのです。

ある日、鍛冶屋の前を通りかかった彼は「キンコンカンコン」心地よい響きを聞いて、ふたつの音の振動数に注目します。
心地よい響き(協和音程)はふたつの音の振動数が、単純な整数比である事を発見したのです。

Pythagoras

弦の長さでみると、8度(オクターブ)は2:1となり5度(ド・ソ)は3:2そして4度(ド・ファ)は4:3です。
この3つの音程は心地よく響く音程です。この心地よい響きから完全5度を繰り返してみます。
ド5度⇒ソ、ソ5度⇒レ、レ5度⇒ラ、ラ5度⇒ミ、のように繰り返していくと音階に含まれるすべての音が作られます。

Scale
 (○注:レ♭=ド♯)

このようにしてできた音階を「ピュタゴラス音律」と呼んでいます。このようにして音階は紀元前500年頃に誕生したのです。

しかし、音楽の進化とともに音階は少しずつ変化していきます。
11世紀頃までの音楽はモノフォニー(1つの旋律)でしたが、しだいにポリフォニー(多声音楽)になっていきます。
ポリフォニーの音楽になってくるとピュタゴラス音律では3度(ド・ミ)や6度(ド・ラ)の音程が美しく響きません。そこで、15世紀後半ピュタゴラス音律を基に3度、6度も美しく響く音律『純正調』が完成します。(4度、5度はピュタゴラス音律のままです。)
美しい和音を生み出した純正調ですが、すべての和音が美しく響くわけではありません。
音楽が複雑になり転調が多用され1曲の中で何度も転調が繰り返されるような楽曲が増えてくると新しい音階が必要になってきます。
ピュタゴラス以来理想であった単純な整数比の理想を捨てた究極の音律が17世紀に登場するのです。
1オクターブを12等分しすべて均一の周波数比で構成された『平均律』です。
平均律は、ピュタゴラスの音律以来約2000年後に確立され、どのような転調にも対応でき作曲家の多様な要求に応えうる音律ですが、ピアノが一般家庭に普及し始めた19世紀になって広く使われるようになります。
現在では平均律が一般的ですが、オーケストラや吹奏樂で使われる弦楽器や管楽器は音程の微調整ができるので3度、4度、5度、6度などのハーモニーでは美しく響く純正調で演奏し、平均律で調律されたピアノと一緒に演奏するときなどは平均律に合わせるなど微妙に音を調整しているのです。
(経済学部 石原)

イラスト出典:

  • 「西洋音楽史」100エピソード 久保田慶一著 
  • 「音楽の科学」岩宮眞一郎著

〈経済学部通信〉岡山市道伊島町二丁目吉宗線沿線の風景~「ルーアン」から「レッキー」まで~

今回は有利先生にご寄稿頂きました。


 商大の正門から取付道路を北へ約100メートル行ったところに「商大前」という三叉路の交差点がある。それを渡ったところに洋食のレストラン「ルーアン」がある。土日には、店の外に行列ができるほどの人気店で「海老カツレツ」がおすすめ。大学の同僚と一緒の時や栄養補給が必要な時には利用させてもらった。今でもそうである。いろんな点で商大とつながりの深い、有名店である。なお、私が商大に着任した頃は300メートルくらい東側にあった。来年は開店30周年らしい。

2000年から約15年余り、商大近くに住んだ。商大の正門を出て右折したところに「ジャクソン」という喫茶店があり、Ⅰ限目の授業が無い日は、そこで420円の「モーニング」を食べるのが一日の始まりだった。ジャクソンは廃業され、併設の学生アパート(その後建て直し)とともに商大の施設になっている。私の昼食は、学生食堂が多かったように思う。

ルーアン

 「商大前」交差点を通る片側2車線の道路は旧国道53号線、新しいバイパスが国道になっているので正式名称は「岡山市道伊島町二丁目吉宗線」、つまり伊島町二丁目から吉宗までの市道である。この道自体が、北の烏山の根際(ねき)を通る道の新道であったのだろう。道を作ったときに、もともと東西南北に区切られていた田畑を斜めに北西から南東へと乱暴に一直線に分断したとみられる。沿道の各店舗は土地区画に従って建てられているので、道に対し正対していない。そのため、車線からでは、上りにせよ下りにせよ、店を斜め左後ろから見ることになり、店の状況が分かりにくい。

 めん類を食べたい時はルーアンの東側の「ラーメンさくら」に入る。私は、夏は「つけ麺」、冬は「坦々麺」を頼む。2000年頃は、そこに「養老の滝」があり、たまに飲みに行った。道に沿って東南に進むと、道と区画の関係で奥行きのない三角形の建物がある。そこに「レッツ悟飯」という小規模な食堂がある。以前は「アルペジオ」と言い、急な階段を登った2階で商大生が大学祭の打ち合わせをしていた。さらに、美容店(一時洋服屋だった?)の前をすぎると、喫茶店「ユートピア」や小さな和食店、さらにカレー専門店「サフラン」/「ガラムマサラ」があったがいずれも無くなり、惣菜屋が新たに開店した。宅急便の発送でお世話になったセブンイレブンを過ぎると、2000年以前から続いている「かつ亭」がある。その先、歩行者用の陸橋の手前に、私が苦手としていた喫茶店「楽庵」があったが廃業し、最近「ホトトギスファームカフェ」が開店した。なかなか洒落た店で、所有している農場で栽培した野菜や畜産物で料理を出してくれる。クッキー類もおいしいお薦めの店である。

ホトトギスファームカフェ

 その先に、パチンコ店があり商大生の出入りを心配していたが、今は大きなアパートに変わっている。東横の食堂「松屋」と模型販売店「模型工場」をすぎると、スパゲッチの「ジョリーパスタ」がある。さらに2軒過ぎ、小道を渡ったところに食堂「レッキー」がある。用水と市道に挟まれた、斧の頭を立てたような尖った打ち抜きの3階建ての建物である。高齢?の御夫婦に安くてボリュームのある定食を作っていただける。ネットでみても評判が良い。人恋しくなると雑談にお伺いした。柔道部の現役、OBも世話になっていたらしい。いつまでも、お元気に!と思わずにはおられない。

レッキー

 * * * * * * *

 ここまでが大体500メートル。反対側にわたって道を戻ると、医院、自動車関係、ローソン、中国労金、美容、理容、不動産、技術コンサルタント会社などが並んでいる。もちろん、飲食店もあるが、道の北側と産業分野が違う。その中で忘れられないのは、やや高齢のお母さんがやっていた「食べ吾呂」という和食屋である。学生に和食を安く提供したい(確か定食が学生500円、一般は600円)ということで、始められた。親元を離れあるいは留学して来ている商大生の人生相談にも乗っていただいていたらしい。学生の親がお礼に来られたり、定食内容をみて安心して帰られたりしたという話も聞いた。ただ、残念なことに、ある時、癌で急に亡くなられた。建具師をしておられたご主人はどうしておられるだろうか。

 商大前交差点に戻る直前の場所に、2000年当時は「つる幸」という日本酒が飲める料理屋があった。当時、遠隔から来て泊まっていた先生方の歓談の場だった。その後、惣菜屋や飲み屋に変わったが、今は商売はされていない。その横に、一時期、野球部の食堂になっていた「きさらぎ」がある。散策路の終点は、コンビニ「ら・む~マート」である。

 では、産業構造はどうなっているか。ゼンリンの住宅地図をもとに分類してみると、別表のようになる。

産業別事業所数
資料出所)各年のゼンリン住宅地図を基に有利作成
注)ビル内の店舗、事務所については、完全には把握できていない。また、産業分類も厳密ではない。
  合計 金融・不動産 卸売小売 飲食店等 自動車関連 理美容 医院 教育学習支援 専門技術サービス
コンビニ 食堂 飲み屋 喫茶店 持ち帰り・配達
2000  35 4 4 1 14 9 2 2 1 5 4 2 1 1
2010  36  4  5  2  14  10  1  1  2  4 3  3  2  1
2021  34  3  6  3  12  8  0  1  3  2  3  2  2

道に面している建物にある店舗だけに限定したが、ビルの1階に入居している店は完全には把握しきれていない。たとえば、昔、サンライト津島の1階にパソコン工房、その奥に棒球場があったが、抜けている。道向かいにもう一軒飲み屋があったかもしれない。そういう前提で見ていただきたい。店舗総数(事業所数)は、この20年間、35程度と殆ど変わっていない。構成としては、全てが広い意味でのサービス業で、中でも飲食店等が4割と多い。しかし、店でも食事よりも、コンビニも含め持ち帰りや配達が増加する変化が見受けられる。意外なのは、美容室は多いが、衣料店がないことである。品揃えが必要であるから、小規模店舗しか立地できない地域では無理なのかもしれない。

 いずれの店でも、商大生、商大関係者を大切に家族のように扱ってくれる。大変ありがたい。このストリートが、もう少し活気を帯びたものとなるよう願っている。

(経済学部 有利)