〈経済学部通信〉三谷直紀特任教授がご退職されました

2026年3月31日をもって、長年にわたり教育・研究に尽力されてきた三谷直紀先生が退職されました。

三谷先生は労働経済学を専門とし、日本の労働市場や政策に関する研究・教育の第一線で活躍されてきました。その歩みの出発点は数学にあります。東京大学理学部・大学院で数学を学んだ後、1974年に旧労働省(現・厚生労働省)に入省され、約15年にわたり労働政策の立案や労働市場分析に携わりました。理論だけでなく、現場の課題と向き合ってきた経験は、その後の研究と教育の大きな礎となっています。

1989年に神戸大学大学院経済学研究科の助教授に着任されて以降は、大学教員として多くの学生を指導しました。2013年からは岡山商科大学経済学部に拠点を移し、2021年からは特任教授として教壇に立ち続けてこられました。

三谷先生の授業の魅力は、「現実とつながる経済学」にありました。労働省での実務経験に加え、フランスやイギリス、アメリカの大学・研究機関での在外研究や教育経験を活かして国際的な視点から日本の労働問題を捉える講義は、多くの学生にとって新鮮で刺激的なものでした。

研究面でも、長期失業のメカニズムや最低賃金制度、女性管理職比率の国際比較など現代社会の重要な課題に取り組み続け、多くの成果を発表されてきました。理論と実証、そして政策をつなぐ研究スタイルは、労働経済学の分野において確かな存在感を示しています。

また、岡山県がご出身ということもあり、県内の自治体と連携して高齢者雇用の観点から地域の活性化にも取り組まれました。

長年にわたるご尽力に、心より感謝申し上げます。三谷先生が育ててこられた学びの精神は、これからも多くの学生の中で生き続けていくことでしょう。

(経済学部 熊代和樹)

経済学部教授会での挨拶
花束の贈呈


三谷先生は商大ブログにも多くの記事をご寄稿くださいました。過去の記事も是非ご覧ください。

〈経済学部通信〉情けは人のためならず:ワクチンとクジラの話

〈経済学部通信〉The Credibility Revolution(信頼性革命)

〈経済学部通信〉思いて学ばざれば即ち殆し

〈経済学部通信〉思いて学ばざれば即ち殆し

〈経済学部通信〉仕事を学ぶこと(On-the-Job Training)

〈経済学部通信〉構造把握力

〈経済学部通信〉コートジボワール訪問記

〈経済学部通信〉英語でレクチャー

〈経済学部通信〉英語でレクチャー

 

 

 

〈経済学部通信〉岡山商科大学×近畿大学 合同ゼミを開催しました!

 

2026年3月15日・16日の2日間にわたり、岡山商科大学経済学部と近畿大学経済学部による合同ゼミが開催されました。岡山商科大学からは池田昌弘ゼミ井尻裕之ゼミミ熊代和樹ゼミ、近畿大学からは石村雄一ゼミの合計約50名の学生が参加し、学びと交流にあふれた充実した時間となりました。

■ 1日目:プレゼンテーション大会で成果を発表

初日は学内のプレゼンテーションホールにて、12チームによるプレゼンテーション大会が行われました。各チームは、この1年間かけて取り組んできたグループ研究の成果を発表しました。

テーマは、金融、ジェンダー、人間関係、環境問題など多岐にわたり、それぞれの課題を経済学の視点から分析した内容が紹介されました。どの発表も工夫と努力が感じられるもので、学生たちの成長がうかがえました。

また、発表後には活発な質疑応答が行われ、鋭い質問や多様な意見が飛び交うなど、会場は大いに盛り上がりました。他大学の学生との議論を通じて、新たな視点や気づきを得る貴重な機会となりました。

■ 2日目:岡山の魅力と交流を満喫

2日目はゼミや大学の枠を越えたグループに分かれ、岡山市内の観光を楽しみました。初対面同士でも自然と会話が生まれ、学びを共有した仲間としての距離が一気に縮まります。

観光の後は、旭川の河川敷にてバーベキューを実施。開放的な雰囲気の中で食事を囲みながら、学生同士の親睦をさらに深めました。

 

河川敷でのバーベキュー
特に優れたプレゼンには賞が贈られました

 

 

学びと出会いにあふれた2日間

今回の合同ゼミは、経済学の知識を深めるだけでなく、新しい出会いや交流の場としても非常に有意義な機会となりました。普段のゼミ活動では得られない刺激を受け、参加した学生たちにとって大きな成長のきっかけになったことと思います。

今後もこのような取り組みを通じて、学生同士の学び合いと交流を促進していきます。

(経済学部 熊代和樹)

閉会式

 

〈経済学部通信〉EIM 2025国際カンファレンス(中国・長沙)に参加して

今回は劉政達先生にご寄稿いただきました。


このたび、2025年10月25日から26日にかけて、中国・湖南省長沙市の長沙理工大学(Changsha University of Science and Technology)で開催された国際カンファレンス EIM 2025 International Conference “Innovating for a Greener Future” に参加しました。

開催校・長沙理工大学の正門にて記念撮影。緑豊かなキャンパスが印象的でした。

この学会は、「環境・イノベーション・マネジメント」を中心テーマとして、アジア・ヨーロッパ各国から研究者が集い、持続可能な社会の実現に向けた議論を行うものです。

学会のオープニングセッションの様子です。テーマは “Innovating for a Greener Future(より緑の未来への革新)”。

学会プログラムには“Discussant(討論者)”としても名前が掲載され、他大学研究者の発表にもコメントを行いました。

私は本学会で、“Doors to the City: A Heterogeneous-Agent General-Equilibrium View of China’s Urban–Rural Disparity”というタイトルで英語発表を行いました。研究では、中国の都市・農村間格差をマクロ経済モデルで分析し、教育や移動の制約が経済構造に与える影響を定量的に示しました。

研究発表の様子(右が私、左はセッションの司会者)

発表後には多くの研究者と意見交換を行い、特にヨーロッパ・アジア双方の若手研究者との学術的ネットワークを広げる貴重な機会となりました。

さらに、今回の発表は“Best Paper Award”を受賞し、大変光栄に感じております。

授与されたBest Paper Award証書

 

今回の経験を通じて、研究の国際的発信の大切さと、多様な視点からのフィードバックの重要性を改めて実感しました。今後も研究と教育の両面で、国際的な交流を深めていきたいと思います。

 

最後に少しだけ余談を―

湖南料理、本当に辛かったです!

帰り道で「やっぱり牛丼食べたいなあ」と思ったのはここだけの話です(笑)。

(経済学部 劉政達)

〈経済学部通信〉岡商大で教師を目指してみませんか

今回は教職課程担当の中條先生よりご寄稿いただきました。


学校を取り巻く最近の報道では,教員採用試験の倍率低下が顕著である,という記事が目立ちます。学校はブラック職場であり,教員という仕事はきついばかりで志望すべきではないと受け取られかねない記事です。でも,ほんとうにそうなのでしょうか。

採用試験の倍率は受験者数を募集人数で割ったもので,自治体や学校種,教科によって異なります。ちなみに,岡山県の令和8年度(令和7年実施)の採用試験では,中学校の平均倍率が4.3倍,高等学校は6.5倍となっています。また,昨年度の小学校を含めた全国平均は3.2倍で,以前に比べて確かにたいへん低くなっています。このデータだけを見れば,学校が働きがいのない職場であり,教職はきついばかりの仕事であることの証のように見えるかもしれません。

しかし,一方で,あまり人目を引くことのないデータかも知れませんが,重要なデータがあります。それは,倍率ではなく,受験者数と採用者数の実数を示したデータです。図1は,文部科学省の教育人材政策の担当者が,教員養成を行う私立大学の組織である全国私立大学教職課程協会の研究大会で文部科学省(2024)の資料に基づいて示したデータです。

後藤教至 2025 今後の教師人材の育成・確保に向けた改革について
全国私立大学教職課程協会第44回研究大会要旨集 p.11より

 

図1を見ると,10年くらい前から受験者が減少していることがわかります。しかし,その一方で,公立学校の教員採用数が,想定以上に少子化が進んでいるにもかかわらず,わずかずつではありますが毎年増加していることも示しています。このことは,採用試験倍率の低下は,受験者数の減少によるばかりでなく,採用数の増加も影響していることを示しています。

つまり,採用試験の倍率低下だけを見て,学校現場はブラックだ,教職はきついと評価しては行けない,ということです。むしろ,受験者数が減少する中で採用数が増えているという最近の採用状況は,教職の門が従来になく広き門となっていることを意味するものと言えるでしょう。

少子化が進行しているにもかかわらず採用数が増加しているのは,いわゆる団塊ジュニア世代を含む50歳〜60歳以上の教員の大量退職によるものと言われています。公立学校教員の年齢構成は,若年の教員よりも高齢の教員の多い,いわゆる逆ピラミッド型で,これから数年間ベテラン教員の大量退職が続きます。その補充のために採用数が増えているのです。このようなことは教職に限らず,大量採用された世代の退職に伴う一般的傾向と言えるかもしれません。

もちろん,採用試験の倍率が低下しているからと言って,誰でもが教師に成れるわけではありません。教師になるには,教育学部以外では,各自の専門科目に加えて教職科目と呼ばれる教師の専門性を高める科目や,担当する教科の内容や教科教授法などを余分に学ぶ必要があります。このことの負担感もまた受験者数の低下の理由の一つと考えられています。

受験者数が減少する中,幸いなことに,「高校生のなりたい職業ランキング」の調査において,「教師」はいまだになりたい職業の上位に位置しています。例えば,「子どもたちのなりたい職業 2万人の調査モニターの10年間の軌跡」(ベネッセ教育総合研究所,2025)という報告では,2024年度の調査においても,「教師」が高校生,中学生ともになりたい職業のランキングの第1位となっています。この順位は,過去10年間変わっていません。高校生にとって,教師はまだまだやりがいのある職業と評価されているようです。

本学では,法学部と経済学部で中学校社会,高等学校公民の教員免許を取得することができます。経営学部経営学科では高等学校の商業,情報,商学科では商業の免許を取得できます。

教職は次世代を育てる重要な仕事であり,学校はやりがいのある職場です。採用試験の倍率が低下する中,学校現場の職場改善が進められている今は,教職を目指す者にとってまさにチャンス到来と言えるかもしれません。教員を志望する皆さん,本学で教師を目指してみませんか。

(経済学部 中條和光)

 

文献

後藤教至 2025 今後の教師人材の育成・確保に向けた改革について 全国私立大学教職課程協会第44回研究大会要旨集 p.11 

文部科学省 2024 多様な専門性を有する質の高い教職員集団の形成を加速するための方策について(諮問)参考資料 p.40

ベネッセ教育総合研究所 2025 子どもたちのなりたい職業 2万人の調査モニターの10年間の軌跡【データ集】 https://benesse.jp/berd/special/datachild/pdf/datashu08.pdf (20250826閲覧)

 

 

 

 

〈経済学部通信〉研究発表@メルボルン

今回は商大ブログ担当・熊代の寄稿です。


9月17日,18日にオーストラリアのメルボルンで開催された11th Annual Conference Contests: Theory and Evidenceで研究報告をしてきました。

メルボルンはオーストラリア本土のほぼ南端に位置する都市で,関西国際空港からシンガポール経由で片道14時間+乗り継ぎ待ちのフライトでした(長かった…😅 )。

 

メルボルン空港からはバスで市内中心部へ向かいます。

空港から市内へ向かうSkyBus

バスに揺られること約30分,Southern Cross駅に着きました。

Southern Cross駅
Southern Cross駅前の風景

メルボルンは1901年のオーストラリア連邦建国後,キャンベラに首都が移転されるまで臨時の首都だったこともあってか,とても大きな街です。

市内にはアジア料理店の集まったエリアやギリシャ料理店などがあり,道行く人も色々な国籍や宗教などのルーツを持った人が入り乱れています。また,1800年代の移住時代の建物と近代的な高層ビルが隣接していたりと,空間的にも時間的にも色々なものが混ざった面白い街でした。

メルボルンの街並み
 

Flinders Street駅
王立展示館

さて,今回の学会が開催されるのは市内中心部,王立展示館から程近くにあるRMIT Universityです。なかなか奇抜な建物ですが,建築やデザイン,メディア関連の学部が有名であることが影響しているのかもしれません。会場は最上階の緑のモコモコがついているあたりの部屋でした。

RMIT University 前衛的な建築が面白いです

この学会は年一回開催されていて11回目の開催だそうですが,熊代は今回初参加です。知り合いどころか日本人もいない完全アウェーの学会で頑張ってきました(とは言えみんなすごくフレンドリーでした)。

名立たる名門大学の中にOkayama Shoka Universityの文字が!

学会の中心テーマはコンテスト理論です。コンテスト理論というのは人や企業などがそれぞれの資源(お金,時間,労力などなど)を投入することで勝者を決める状況を分析するための理論です。例えば,一番初めに成功した企業だけが独占的利益を得られる企業のR&Dや,選挙戦に勝利した候補者だけが議員になれる選挙活動,プロスポーツチームのトーナメント戦など,幅広い分野の分析に応用されています。

もうすぐ開会です

今回発表した研究は企業内の昇進競争のように,同じ相手同士で毎月成果を競い合う状況で,時間を通じてどのように限られた資源を分散するかを分析した研究です。興味を持ってもらえたようで色々とコメントや質問もあり,収穫の大きい学会発表になりました。

帰国は夕方の便だったのでクイーン・ビクトリア・マーケットを散策。観光客だけでなく地元民も訪れる市場で,活気に満ち溢れていました。

QUEEN VICTORIA MAKET
生鮮食品から日用品,お土産まで色々なものが並びます

 
 

追伸:帰国後,6日ぶりに息子を抱っこしたら腰を痛めたのは内緒です。

(経済学部 熊代和樹)

〈経済学部通信〉統計学 ⊂ データサイエンス

私は大学の理学部数学科で「統計学」を専攻しました。データのサンプリング方法や分析方法を,数学を土台として勉強しました。

そもそも統計学は,今から100年以上前に始まった学問で,研究者も多いですが,様々な分野を横断的に扱うこともあり,一般社会ではなかなか認知度は高まりませんでした。

ところが,2013年に「統計学が最強の学問である」という書籍がベストセラーになったことで,潮目が変わりました。
大学を退職後,自分で会社を立ち上げた西内啓さんがその著者です。
私たち研究者が数十年間アピールし続けてきたものの,なかなか社会に浸透しなかった「統計学」を,1冊の本で普及してしまったと言っても過言ではないと思います。

最近は「統計学」という言葉がRADWIMPSの曲の歌詞にも使われ,隔世の感があります。皆さんも身近なところで「統計学」を探してみてください。

 

一方,「データサイエンス」という言葉は探す必要もないほど,私たちの身近にあふれています。
この言葉自体は50年ほど前に注目を集め始めましたが,その後,コンピュータの進化とともに,「統計学」や「数学」に「パターン認識」や「機械学習」などを容易に組み込めるようになって,その内容も飛躍的な進歩を遂げました。

アメリカなどの諸外国では早くから一般社会でも認知され,データサイエンティストが,常になりたい職業の上位にランキングされていたものの,残念ながら日本国内では今一つという状況が続いていました。

それを変えたきっかけの一つは2013年の「データサイエンティスト協会」の設立ではないでしょうか。
日本アイ・ビー・エム(株),(株)電通などの名だたる企業の方々が,危機感を持って立ち上げた協会です。

その中心人物の一人で,当時ヤフー(株)CSOの安宅和人氏が,2017年の日本統計学会春季集会で行った講演を,私は今でも鮮明に覚えています。
当時の日本を,黒船が来航した幕末の日本にたとえ,このままでは日本は取り残されてしまう,と力説されていました。

彼らの活動も政治を動かす要因となり,瞬く間に「データサイエンス」は一般社会に浸透し,もちろん大学にも入ってきました。

 

本学には「データサイエンス・リテラシー教育プログラム(DSL教育プログラム)」があります。
文部科学省にも認定されているプログラムです。
私は,学外のシンポジウムで本学のプログラムを紹介する機会が何度かありましたが,他大学と比較して,このプログラムがとても充実していると驚かれることが多かったです。

岡山商科大学学内向け広報資料より

DSL教育プログラムに参加していない学生の方は,是非,エントリーを検討してみてください。

詳しくは下記のアドレスを参照してください。

https://www.osu.ac.jp/annai/dsl/

 

(経済学部 佐井至道)

 

 

〈経済学部通信〉着任のご挨拶(マクロ経済学担当 劉 政達)

今回は本年度着任の劉政達先生にご寄稿いただきました。


こんにちは。2025年4月より岡山商科大学経済学部に着任いたしました劉 政達(リュウ セイタツ)です。中国出身で、日本には三年次編入生として来日し、本学で修士課程を修了した後、神戸大学大学院経済学研究科に進学し、博士(経済学)を取得しました。そして今年、こうして母校に教員として戻ってくることができ、大変光栄に存じます。

私の専門はマクロ経済学および開発経済学で、特に中国における労働市場の構造変化や、都市と農村の所得格差の動態に関心を持って研究しています。2024年9月には、神戸大学で開催されたカンファレンスにて、博士論文の一部である「中国の労働市場におけるルイス転換点の到達に関する実証研究」について報告を行いました。図表を用いながら、中国経済の発展と都市化の進展が労働市場に与えた影響について説明し、多くの先生方から貴重なご意見をいただきました。

神戸大学でのカンファレンス

本年度は、「特別演習(大学院進学対策)」や「マクロ経済学B」などの科目を担当しております。学生の皆さんとともに、研究の面白さや経済的な視点を共有できるよう、日々努めてまいります。

(経済学部 劉政達)

〈経済学部通信〉2024年度 近畿大学との合同ゼミ

 3月13日と14日の二日間にわたり、近畿大学石村ゼミと岡山商科大学経済学部池田ゼミ、井尻ゼミ、熊代ゼミとの合同ゼミが行われました。この合同ゼミは毎年の恒例イベントとなっており、3回目の開催です。今回の幹事校は岡山商科大学で、完成したばかりの新校舎(11号館)のイベントホールを使用しました。

 1日目は各ゼミの1年間の研究内容を発表するプレゼンテーション大会を実施しました。環境や観光、農業、生成AI、野球のFA (フリーエージェント) 制度など、それぞれのチームが関心を持ったテーマについて、経済学的な観点から分析した内容を発表しました。

 2日目は近畿大学の石村先生による、グループディスカッションとディベートの実践演習を実施しました。就職活動が本格化する3年生にとって必要なスキルを学びました。

2日目の最後は学内の中庭でBBQをして、大学の垣根を越えて親交を深めました。

(経済学部 熊代和樹)

〈経済学部通信〉2024年度 第12回経済学部3年次ゼミ対抗プレゼンテーション大会

2025年1月11日に本学アクティブラーニングルームにて3年次ゼミ対抗プレゼンテーション大会が開催されました。

本大会は研究演習3年(ゼミ)の集大成を報告するため,毎年開催されています。本年度は以下の8チームが参加しました。

  1. 國光類ゼミ「ナッジを活用した食品ロスの削減」
    近年問題となっている食品ロスについて行動科学の視点から説明するとともに,規格外品を活用した商品を大学祭や地域の祭で販売した実績を報告しました。

    國光ゼミの発表
  2. 星野聡志ゼミA「ふるさと納税〜地方創生につながっているのか」
    ふるさと納税の制度に概観し,ふるさと納税による寄付金収入がその地域の暮らしの改善につながっているかを探りました。

    星野ゼミAチームの発表
  3. 星野聡志ゼミB「2030年に向けたエネルギー政策」
    日本におけるエネルギーの自給率やエネルギー効率の改善への取り組みなどについて,過去から現在に至る推移を報告しました。

    星野ゼミBチームの発表
  4. 田中勝次ゼミ「干拓地のキャベツ栽培」
    ゼミ活動として関わっている笠岡市の干拓地における農業について,栽培の状況や直面する問題について紹介しました。

    田中ゼミの発表
  5. 佐井至道ゼミ「自転車に関する道路交通法の改正について」(ビデオ参加)
    昨年11月に行われた道路交通法の改正に注目し,日本や海外の現状について紹介しました。また,本学学生を対象として本改正の認知度に関するアンケートを行った結果を報告しました。
  6. 熊代和樹ゼミA「生成A Iの導入とゲーム」
    競争関係にある二企業がそれぞれ業務に生成AIを取り入れるかどうかの戦略的状況について,ゲーム理論を使って分析した結果を報告しました。

    熊代ゼミAチームの発表
  7. 熊代和樹ゼミB「ダムの放水量調整に関する分析」
    ダムの持つ,水不足への備えという側面と洪水を防ぐ働きという側面に注目し,最適な水量管理について理論的に分析した結果を報告しました。

    熊代ゼミBチームの発表
  8. 熊代和樹ゼミC「ゲーム理論からみるFAの選択」
    度々話題になる野球選手のFA(フリーエージェント)制度について,選手間の競争に注目してゲーム理論の観点から分析した途中経過を報告しました。
熊代ゼミCチームの発表

 

なお,今回の大会開催にあたっては,準備や司会進行を山下賢二ゼミのゼミ生が担当してくれました。

全てのチームの発表後に学生と教員で投票を行い,スライドのデザイン賞,スピーチ賞,総合順位の選定を行いました。受賞チームは以下の通りです。

1位 熊代和樹ゼミBチーム
2位 國光類ゼミ
3位 田中勝次ゼミ
デザイン賞 國光類ゼミ
スピーチ賞 熊代和樹ゼミCチーム
1位 熊代ゼミBチーム
2位 國光ゼミ
 
3位 田中ゼミ
 

スピーチ賞 熊代ゼミC

受賞チームはもちろん惜しくも受賞に至らなかったチームも,各チームが自分たちの定めたテーマについて理論,データ,フィールドスタディといった様々な切り口で深く学び,考えたことについて共有でき,非常に刺激的な大会となりました。

 

(経済学部 熊代和樹)

〈経済学部通信〉英語でレクチャー

今回は三谷直紀先生にご寄稿いただきました。


このたび、本学で初めて英語で労働経済学の講義をする機会を得た。その経験を少しお話ししたい。

実は、私はその昔フランスのオルレアン大学(ジャンヌ・ダルクで有名なオルレアンにある大学)に客員教授として招かれ、フランス語で日本の労働市場について講義をした経験がある。準備は大変であったが、現地の大学生には真剣に講義を聴いてもらった。現地の言葉で直接対話をすることによって、その当時のフランスの学生が持っていた悩みや希望なども聞くことができ、「現地語」の持つコミュニケーション力を実感した。

今回はふたを開けてみると、私の授業を受講してくれた学生は留学生9名+日本人1名の少数精鋭の諸君であった。「現地語」は日本語であり、留学生諸君も流暢に日本語で話ができる。また、学生諸君に受講動機を聞いてみると、日本の労働市場に興味をもっているからという答えが多かった。日本語でやれば日本の労働者の心情など、日本社会の機微にもふれることができよう。ならば、なぜ英語で講義をやる必要があるのであろうか?

テーマは日本の雇用システムの特徴としてよく挙げられる「三種の神器」(すなわち終身雇用、年功賃金及び企業別労働組合)を取り上げた。英米の学者による著作も参考にしたが、やはり日本に対するエキゾチシズムを強調する面がみられた。また、日本の研究者による文献も古いものほど日本特殊論的傾向が強いと感じられた。そこで、今回は、徹底して経済理論と実証データで検証された科学的手法による研究成果のみを講義の対象とすることとした。

今回講義をする上で最も役に立ったのは、アメリカの大学の労働経済学の教科書(特に、ハーバード大学のBorjas教授のLabor Economics)とOECD(経済協力開発機構)の報告書であった。というと、アメリカの労働市場は流動的であることが常識であり、終身雇用などほど遠いのではないか、そのような労働市場を分析したアメリカの教科書がなぜ役に立つのだろう?という疑問が湧くかも知れない。実際、統計データをみるとアメリカは日本に比べて転職率が高く、流動的である。しかし、年齢別にみると、転職率が高いのは主に20歳代の若い層であり、30歳代半ばに入るとアメリカでも転職率が下がり、終身雇用といわれるような状態になる。さらに、アメリカでも年齢とともに賃金が上がる年功賃金は一般的にみられる。こうした終身雇用や年功賃金という研究テーマはアメリカでも1970年代以降盛んに研究された。今日有力な理論仮説とその検証は主にアメリカの研究者によるものである。

日本では企業別労働組合という特殊な労使関係なので、組合の力が弱い、他の先進国は主に産業別労働組合であるから交渉力が強いといった言説がその昔主流であった。しかし、OECDが2010年代半ばに実施した加盟各国に対するアンケート調査によれば、労使の実質的な団体交渉は多くの国で各企業単位で実施されており、企業別労働組合こそが主流であり、産業別労働組合は少数派であることが明らかになった。昔の研究者はきちんと調査した統計を見ておらず、勝手な思い込みが強かった?!

今回私自身もいろいろな知見を得ることができ、勉強になった。それは、英語で教えるという機会があったからである。今日主要な学術的知見は英語で書かれ、世界に広がっている。英語で講義を行ったからこそ、より広い見地から「日本の雇用システム」の理論と実際にせまることができたのではないかと思われる。つまり、「国際共通語」としての英語の力によって、自分勝手な思い込みを廃し、最新の理論や実証研究の成果をより深く話すことができたのではないかと思う。

英語は単に英語圏だけの「現地語」ではなく、「国際共通語」としてこれからますます重要になると考えられる。AIの時代でもそれは変わらないのではないか。真の創造性を生む「逸脱」はまだ機械には無理であろうから。

(経済学部 三谷直紀)