清宮幸太郎選手を1位指名した球団は、実に7球団。前評判の高さから、逆に敬遠されるのでは、との噂もありましたが、高校生としては、PL学園の福留孝介選手に並ぶ、歴代1位の指名数となりました。抽選の結果、清宮選手は、北海道日本ハムファイターズが交渉権を獲得しました。
もう一人注目の、広陵高校の中村奨成選手は、2球団が指名し、本人の希望でもあった広島東洋カープが交渉権を獲得しました。
1位再指名が順次行われ、競合する度に抽選が行われます。東北楽天ゴールデンイーグルスの1位再指名でその瞬間は訪れました。中継映像から、
「東北楽天 近藤弘樹 投手 岡山商科大学」
と、読み上げられた瞬間、
「ウォッッッ!!」
会場全体が、揺れるような、大きな歓声に続いて盛大な拍手がわき起こりました。

カメラマンのフラッシュが、絶え間なく光ります。近藤選手は、隣に座る蔵本選手に「早い」と語りかけたように見えます。顔は少し紅潮し、目には、指名がありほっとしたのか、うっすらとにじむものが見えます。記者会見席に並ぶ、学長、監督、蔵本選手と握手を交わします。
ドラフト会議は残る1位指名から2位以下への指名と続きますが、直ちに記者会見が行われます。
大学による司会が始まり、最初に近藤選手から、「ドラフト1位指名をいただいたことは、本当に光栄なことだと思います。ありがとうございました。」と挨拶がありました。
続いて、マスコミ幹事社の山陽新聞から、代表質問が行われました。

「楽天は秋季キャンプを岡山で行うなど身近な球団です。球団の印象を教えて下さい。」
「活発なチームという印象です。その中に入っていけるよう頑張りたいです。」
「改めて近藤選手のセールスポイント、強みを教えて下さい。」
「まっすぐと変化球のコンビネーションが強みです。」
「プロでの目標を教えて下さい。あと目標の選手はいますか。」
「1年目から活躍したいと思っています。黒田博樹投手を目標としています。」
・・・
新聞社、テレビ局から次々と質問が寄せられる中、落ち着いて言葉を選び、答えていきます。質疑応答はおよそ15分間、行われました。他に質問が無いことが確認されると、司会から、「続きまして、胴上げを行いたいと思います。」と案内されると、近藤選手は、「えっ」といった表情で周りを見渡します。
硬式野球部員が2階の記者会見場から屋外へ集まり、胴上げの準備を行います。インタビューボード裏で近藤選手は、「え、本当にやるんですか。」と少し困惑した様子ですが、「恒例のようですので。」と伝えると、「そうですか。」と観念し、部員達の元へ向かいます。
近藤投手が下りてくると部員達が大きな歓声で迎えます。仲間に取り囲まれ、次々に祝福の声をかけられると、これまでの緊張した面持ちから、次第に笑顔が見られるようになりました。部員達に支えられ、「せーのっ!」のかけ声で、近藤選手が大きく5度、宙に舞いました。
テレビ局から、次々とリクエストが出され、部員達と共にガッツポーズをしたり、ボールを掲げたりして、およそ10分間、仲間からの祝福を受けました。

そんな近藤選手の様子を、階段踊り場から複雑な心境で見守っていたのが、蔵本選手です。ドラフト会議前、蔵本選手に近藤選手と一緒にインタビューボードの前に並ぶことを伝えたところ、「どうしても座らないとだめですか。」ととても困った表情をしていました。蔵本選手は、近藤選手が指名された後、自分が指名されなかったら折角のめでたい雰囲気に水を差してしまうのでは無いか、そのことを非常に気にしていました。
-つづく-