【商学科の研究紹介】資産形成としての証券投資

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経営学部商学科の鳴滝善計です。ファイナンシャルプランニングコースで、証券市場論や金融資産運用などの科目を担当して、学生に資産形成としての証券投資の重要性を学んでもらえるよう授業をしています。ゼミ等で学生に「証券投資」について聞くと、“一攫千金”や“リスクが大きい”という声が多く、株式投資は当たれば大きいが外れればリスクが怖いというイメージです。こうしたイメージが先行すると、証券投資に近寄らないということになってしまいます。しかし、証券投資といえども、効率的な資産形成の方法である投資信託を利用した「長期・積立・分散投資」によれば、こうしたイメージがあてはまらないことが分かります。

まず、「長期・積立投資」について考えてみましょう。アメリカの投資の本には、よく「時間を味方にする」という言葉がでてきます。「何十年といった長期で考えれば、資産づくりは容易であるうえ、利回りの高いリスク資産にも投資できる」という意味です。

[図表1] 3,000万円つくるために毎年いくら積み立てればよいか(概算)

(単位:万円)

積立期間(年)

運用利回り

0%

1%

3%

5%

7%

5

600

588

565

543

522

10

300

287

262

239

217

20

150

136

112

91

73

30

100

86

63

45

32

40

75

61

40

25

15

 

たとえば、老後に備えて3,000万円の資産を作ろうと考えた場合、積立必要額は、積立期間と運用利回りによって、図表1のとおり差が出てきます。

この図表1は2つのことを語っています。1つは当然のことですが積立を早く始めれば(積立期間を長くできれば)年々の積立額が少なくて済むということ、2つ目は運用利回りによって必要積立額に大きな差が出るということです。

2つ目の点について補足すると、運用利回りがゼロの場合、積立額は期間に応じた額となります(たとえば期間が40年の場合の積立額は、期間10年の場合の4分の1となる)が、仮に年5%に回せれば期間40年の場合の積立額は、期間10年の積立額の4分の1ではなく、約10分の1ですむということになります。

さて65歳を目標にすると、25歳から積立てを始めて(積立期間40年)、年平均3%でふやしていけば、毎年40万円(たとえば毎月2万円、年2回のボーナスで8万円ずつ)積立てればよいことになります。

また、「積立投資」は、時間分散の効果があります。これは、一度に投資を開始するよりも、投資時期を分散すること、つまり定時定額の積立投資を行うことにより、平均買付価格を引き下げることができます。定時定額投資は、ドル・コスト平均法ともいわれます。

[図表2] 定時定額投資(ドル・コスト平均法)による買付価格の引下げ効果

たとえば、図表2の例でみてみますと、ある投資信託を毎月1万円ずつ4か月にわたって購入したとします。投資信託の時価は基準価額(1万口当たり)といいます。基準価額が図表2のように動いたとします。実際の投資信託は、このように1か月や数か月で劇的に変動することは稀ですが、ここでは分かりやすいように価格変動を想定しています。4時点の平均基準価額は、(10,000円+6,000円+12,000円+8,000円)÷4]=9,000円です。毎月1万円ずつ買った場合、買えた口数は、(10,000口+16,667口+8,333口+12,500口) =47,500口で、平均買付価格は4万円÷ 47,500口×1万口=8,421円となり、平均基準価額より579円安く買えたことになります。その理由は、「高いときには少ない数量を買い、安いときに多い数量を買っているから」です。

次に、「分散投資」についてみてみましょう。分散投資のメリットは、リスクを小さくできることです。「一つの籠にすべての卵を盛るな」という譬えがあります。言い換えると、「卵はいくつかの籠に分けて入れるとよい」ということです。すべての卵を一つの籠に入れた場合は、籠を落としてしまえば、すべての卵が割れてしまいます。しかし、いくつかの籠に分けると、どれかの籠を落として卵が割れたとしても、他の籠の卵は無事です。格言は、危険分散の重要性を説いています。分散すればリスクを軽減できるというわけです。

証券投資も同じです。分散投資をすれば、価格変動リスクが軽減されます。分散投資の代表的な方法は、投資対象の分散です。株式、債券、外国証券、リート(不動産投信)など資産の種類を分散したり、業種、銘柄、対象国を分散したりすることです。

図表3でみるように、株式など単一の資産に投資をした場合、運用成果は上下に大きくばらつきます。一方、日本株式、外国株式、日本債券、外国債券の4資産に均等に分散投資した場合は、相対的に値動きが小さくなる(価格変動リスクが小さくなる)ため、個別資産の投資タイミングに左右されにくく、長期でみれば運用成果が安定し、結果的にリターンの積み上げが期待できます(図表3のグラフは、大和証券のホームページより引用)。

[図表3] 各資産の推移と4資産分散投資(1969年~20192月末)

分散投資は、投資信託を利用すれば容易に行えます。投資信託は、専門家である投資信託会社が運用を行います。ファンドの運用方針にしたがって、たとえば日本株のファンドであれば、日本株の多数の銘柄に分散投資し、バランス型のファンドであれば、内外の株式、債券などの各資産に分散投資されます。

今、若年層を中心としたコツコツ投資を応援する、投資信託を利用した長期・積立・分散投資に対する税制優遇策である「つみたてNISA」や「iDeCo」(イデコ、個人型確定拠出年金)が注目されています。実際、「つみたてNISA」を活用して、長期・積立・分散投資を始めている20歳代、30歳代が多くなってきています。まずは若者から「資産形成としての証券投資」の重要性を学び、“証券投資といえば、長期・積立・分散投資”という新たなイメージを確りと持って、実践していってもらいたいと思っています。

(商学科 鳴滝)

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