私は大学の理学部数学科で「統計学」を専攻しました。データのサンプリング方法や分析方法を,数学を土台として勉強しました。
そもそも統計学は,今から100年以上前に始まった学問で,研究者も多いですが,様々な分野を横断的に扱うこともあり,一般社会ではなかなか認知度は高まりませんでした。
ところが,2013年に「統計学が最強の学問である」という書籍がベストセラーになったことで,潮目が変わりました。
大学を退職後,自分で会社を立ち上げた西内啓さんがその著者です。
私たち研究者が数十年間アピールし続けてきたものの,なかなか社会に浸透しなかった「統計学」を,1冊の本で普及してしまったと言っても過言ではないと思います。
最近は「統計学」という言葉がRADWIMPSの曲の歌詞にも使われ,隔世の感があります。皆さんも身近なところで「統計学」を探してみてください。
一方,「データサイエンス」という言葉は探す必要もないほど,私たちの身近にあふれています。
この言葉自体は50年ほど前に注目を集め始めましたが,その後,コンピュータの進化とともに,「統計学」や「数学」に「パターン認識」や「機械学習」などを容易に組み込めるようになって,その内容も飛躍的な進歩を遂げました。
アメリカなどの諸外国では早くから一般社会でも認知され,データサイエンティストが,常になりたい職業の上位にランキングされていたものの,残念ながら日本国内では今一つという状況が続いていました。
それを変えたきっかけの一つは2013年の「データサイエンティスト協会」の設立ではないでしょうか。
日本アイ・ビー・エム(株),(株)電通などの名だたる企業の方々が,危機感を持って立ち上げた協会です。
その中心人物の一人で,当時ヤフー(株)CSOの安宅和人氏が,2017年の日本統計学会春季集会で行った講演を,私は今でも鮮明に覚えています。
当時の日本を,黒船が来航した幕末の日本にたとえ,このままでは日本は取り残されてしまう,と力説されていました。
彼らの活動も政治を動かす要因となり,瞬く間に「データサイエンス」は一般社会に浸透し,もちろん大学にも入ってきました。
本学には「データサイエンス・リテラシー教育プログラム(DSL教育プログラム)」があります。
文部科学省にも認定されているプログラムです。
私は,学外のシンポジウムで本学のプログラムを紹介する機会が何度かありましたが,他大学と比較して,このプログラムがとても充実していると驚かれることが多かったです。

DSL教育プログラムに参加していない学生の方は,是非,エントリーを検討してみてください。
詳しくは下記のアドレスを参照してください。
https://www.osu.ac.jp/annai/dsl/
(経済学部 佐井至道)